第36話 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬると

『先生、先生…どうしたのぉ?』

『まだ、待ち合わせの時間よりも早いですけど…』

『はぁ、はぁ…ごめんねぇ?突然、電話して…とにかく、逢いたかった。伝えたいって、本気で思ったから、駅から走ってきた。

実はねぇ?思い出したんだぁ。』

『えぇ…何を思い出したんですか?』

『過去に戻る方法…』

『はぁ?過去に戻る方法って…』

『あぁ…ごめんなぁ…。逢えて良かったよぉ…ありがとう。仕事に戻って…』

『後で話すから…俺は1度帰る。じゃ、19時に桜木町駅で…。』

『はぁ、はい。』


『えぇ…突然、急に連絡して、逢いたいって…ビックリしたけど…。それにしても、最後の別れにならないかなぁ?ありがとうって…少し、不安だなぁ…。でも突然、過去に戻る方法って!言われても…今の生活は楽しいから複雑だなぁ…。でも、過去に戻る方法って気になるなぁ。今の記憶があればお金持ちになれるかもなぁ…。』


『はぁ、突然、久美ちゃんに電話をするとはなぁ…自分でも、何をやっているんだぁ。考えるよりも行動していたなぁ…。でも、伝えたいからなのだろうなぁ…。人は時として、思ってもいない行動を取るけどあるんだなぁ。そう言えば、台風や地震があるときに、船を見に行ったり、人を助けたくなって、死ぬ人がいるけど…同じような事が起きて、アドレナリンが爆発するのかもなぁ…特に大好きな人にはアドレナリンや火事場のくそ力が出るんだろうなぁ!今なら、間違いなく火事の中、お姫様抱っこで救出出来るなぁ…。映画のワーンシーンみたいになぁ…。あぁ…まだ、時間があるなぁ。よし、仕事、仕事だぁ!』

今日の百人一首は…

『清原 深養父〜夏の夜は まだ宵ながら

明けぬるを 雲のいづこに 月宿るらむ』


20××年

『それにしても、久しぶりにみんなでバーベキューしたり、花火をして、懐かしい話で盛り上がったねぇ?』

『本当だねぇ?夏にキャンプは最高だったねぇ?』

『それにしても、今日の日を過去に戻ったら、忘れてしまうかなぁ?』

『そうかもねぇ…過去に戻ったら、今の記憶が消滅するからなぁ。』

『それって、寂しいなぁ…。』

『そうだねぇ…寂しくなるけど過去に戻るとは限らないじゃないかぁ?』

『わからないから、不安だなぁ…。』

『今日は一緒にもう少し、話をしたいなぁ…。』

『もちろんさぁ…』

『あぁ…そうだぁ。もしも、このまま現代に残れたら何がしたい?』

『そうだなぁ…。色々なところに行って、たくさんの久美ちゃんの写真を撮りたいなぁ…。』

『そうなんだぁ…。私は先生と家庭を持ちたいなぁ…。』

『それはうれしいけど…こだわりが強い性格だけど大丈夫なのかい?』

『もう、先生ったら…それぐらい解ってますよぉ。知らないとでも…それに、付き合えるのは私だけでは?違う?』

『そうだけど…朝は歯磨きから始まって、シャワーを浴びて、髭剃りして、眉毛を整えて、化粧水を付けてファンデーションをするし、朝食はルイボスティーとソフトチキンとパクチー大量のサラダ、ハムとチーズのサンドイッチだよぉ。飽きないかい?』

『でも、私が好きなら変える事が出来るわぁ…。なら、一緒に変えようよぉ。』

『大丈夫かなぁ…』

『大丈夫よぉ。瞬ちゃんは一途でしょ?計画を立ててから、行動するタイプだけど、熱しすく冷めやすいでしょ?喜怒哀楽が激しいけど…お肌に悪いから怒らないけどその発散をカラオケでシャウトしたり、素敵なカフェでランチしてウィンドショッピングするでしょ?それに、公園でぶらりとするのも好きだからねぇ?こっちは楽だし、それに、私は嫌いじゃないよぉ…。』

『えぇ…そうなんだぁ…。知らなかったなぁ…。男っぽい性格だから、スポーツ観戦や格闘技観戦などなどアクティブする事が好きかなぁ…っと思ったなぁ。』

『そりゃ、大好きだけどねぇ?私と一緒なら好きになるでしょ?それに、はまると思うなぁ…。』

『そりゃ、久美ちゃんと一緒なら、山登りでもマラソンでもやりたいさぁ!』

『でも、私はわがままで計画をたてる事も勉強は苦手よぉ…特に、歴史や地理は苦手だし、旅行に行ってもわからない事が多いよぉ…。つまらない女だと思わない。』

『いやぁ、寧ろうれしいけどなぁ…。色々と面白く教えてあげたいなぃ。常に笑わせてあげたらうれしいでしょ?』

『まぁ、笑っていられる関係は素敵だけど…空気はよんで欲しいよぉ。大丈夫?』

『どうかなぁ…こんな性格だからなぁ…』

『だと思った。なら、遠慮はしないからねぇ?ビシビシいくけど大丈夫?』

『いやぁ、大丈夫じゃないなぁ…。怒ったら、キスするかも…』

『それはうれしいかもねぇ。良かった。それを聞けたら、住む世界が現代でも過去でも良いねぇ?』

『そうだねぇ。でも、一緒ならねぇ?』

『そりゃ、私だって同じよぉ。』

『えぇ…本当に?』

『そりゃ、私だって私を好きで一途な瞬ちゃんは大好きだよぉ。でもねぇ?夢を少年のように追いかけていると、現実を直視しない姿に呆れる事はあるわぁ。』

『そうだよねぇ?私も実は気付いているんだぁ。小説家として、生活は出来ない事…でも、諦める事が出来ない自分もいるし…その一方で、福祉の分野でもしっかりと食べていかないといけないって感じているよぉ。だから、勉強しているよぉ…。』

『解っているわぁ。私の為だけじゃなく、自分自身に自信を持たなきゃっと、がむしゃらに苦しいって思いながら涙を流して、時には笑顔で乗り越えようとしてるでしょ?私は尊敬するわぁ。』

『ありがとう。あれぇ、見上げてごらん、月が出てるよぉ。』

『あぁ…本当だねぇ?綺麗ねぇ?』

『夏の夜は短いから、夏の月は貴重だねぇ?』

『そうねぇ…あれぇ、雲の彼方に姿を隠れているなぁ…。私達も月と同じようにこの時間を惜しむなぁ…。』

『本当だねぇ?寂しくなるなぁ…』

『私を抱いて…この時間を忘れないで…』

『夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを…』


『えぇ…みんなでバーベキュー、キャンプだって…。そう言えば行った事なかったなぁ…。昔、台風で行けなかったんだよなぁ。青梅の河川敷にあるキャンプ場を予約したんだよなぁ…やむを得ず、雪の家でみんなで飲んだなぁ…。そうそう、雪と大和がいちゃつきはじめて、久美ちゃんと夜中のハンバーガーショップで朝まで話したなぁ。懐かしいなぁ。あれ、昔の記憶が戻ってきてるぞぉ。』



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