第35話 ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける

『先生、こんにちは。』

『あぁ…こんにちは。』

『はい、ルイボスティーとソフトチキンとパクチー大量のサラダとハムとチーズのサンドイッチですよぉ。』

『あぁ…ありがとう。へぇ、そっかなるほどなぁ…。うんうん、解るなぁ…。頭が良いなぁ…。』

『先生、何を読んでいるのですか?』

『あぁ…これだよぉ。』

『えぇ…『習慣にする本』だよぉ。』

『どんな内容何ですか?』

『まぁ、簡単に言うと、机に座るのがしんどくなっても習慣にするって内容だなぁ…。まぁ、それが出来るなら誰しもがやっているけどなぁ。』

『ですよねぇ?先生は『習慣にする方法はありますか?』』

『そうだなぁ…やっぱり、誰かに興味を持ってもらう事だと思うなぁ。』

『えぇ?誰かに興味を持ってもらう事が習慣になるってどうも違うような気がするなぁ…』

『確かに、そう考えるけど…歯磨きは何故、習慣になっている?それに、何故、寝るのぉ?不思議じゃない?』

『確かに、不思議だなぁ…。いつの間にかに習慣になっているかも…。』

『でしょ?だからねぇ…歯磨きの習慣について話すけど…最初は父親や母親に口の中に異物を入れられて、まぁ、ゴシゴシされるわけさぁ。途中で、嫌だぁ、嫌だぁって涙を流さなかったかい?』

『そうねぇ…たぶん、泣いたと思うなぁ。』

『でしょ?たぶん、私もそうだったと思うんだぁ。でも、その後、歯磨きの味を甘くした子供用のキャラクター歯磨き粉や、歯ブラシを買ってもらったりしたよなぁ。家はそんなにお金持ちじゃなかったから、歯ブラシに『ウルトラマン』『仮面ライダー』とかをマジックで書いてヒーローになった気分で歯磨きをしたなぁ。』

『へぇ、色々と考えていたんだぁ。』

『そりゃ、そうさぁ。まぁ、単純だったからなぁ。でも、熱しやすく冷めやすい性格で歯磨きが嫌いになったなぁ…。』

『口臭は気にならなかったのぉ?』

『最初はならなかったけど…やはり、周囲には同じように歯磨きをしない人もいたのさぁ。だから、口臭がひどい人は『ゴミ収集車』や虫歯が多い人は『お歯黒女』といじめの対象になったさぁ…。それから、歯を磨くようになったなぁ…。気付いたら、歯磨きに夢中になっていたなぁ。』

『そうなんだぁ…でも、虫歯になった違う?』

『そうさぁ。虫歯になったなぁ…。あちゃ、歯磨きをしても磨き方が悪かったと気付いて、リステリンをしたりして、口臭予防にフリスクは愛用して常にストックするようになったなぁ…。』

『なるほどねぇ?でも、無駄な努力だと実は気付いているでしょ?』

『そりゃそうさぁ。無駄な努力だからこそ習慣にしているのさぁ!だって、人間って、無駄な努力が好きなのさぁ!』

『確かになぁ…無駄な努力ねぇ?あるなぁ、女性なら化粧も無駄な努力かもねぇ?すっぴんには自信がないからなぁ。そう言えば、先生も化粧をしていますねぇ?』

『あぁ…もちろん、しているよぉ。目の下のくまが出来やすいからなおさらだなぁ…。寝すぎると目の下が赤くなるし、寝不足だと紫になるからわかりやすいけど…』

『確かになぁ…でも、時々、『シザーハンズ』のエドワードになりますよぉ。切ない話ですけど…雪が降るのは、手のハサミで好きだった彼女を思って氷の彫刻を作っているんですよねぇ。涙なしでは見れない名作ですよねぇ?』

『おいおい、それを言うかなぁ…でも、ジョニーデップは好きなハリウッド俳優だから、好きだけどなぁ…。自分でも解っているさぁ…あぁ…シザーハンズのエドワードになっているって…まぁ、美白が好きだし、血色が悪いとそれなりに得しているなぁ…。』

『そりゃそうですって、大丈夫かなぁ?って気になりますよぉ。』

『だろう?文学を愛する人は美白に限るって…次は栄養不足で倒れようかなぁ…』

『先生!怒りますよぉ!』

『怒った顔は可愛いなぁ…。カシャッ。』

『もう、先生たらぁ…(うれしいなぁ…)』

『あぁ…そうそう、雪さんには大和の話をしたかい?』

『それが、最近はお互いに忙しくなって、連絡を取っていなかったみたいだけど…私が大和さんの話をしたら、3年振りにあったみたい。桜木町駅で路上ライブをしているみたいだって…』

『へぇ、そうなんだぁ。』

『もし良かったら、会社が横浜だから、19時に待ち合わせして、行ってみません?』

『えぇ…大丈夫かなぁ?』

『大丈夫ですよぉ。5年も経過していれば、こちらに気付いても受け入れてくれますよぉ。』

『そうかなぁ…殴られたりしないかなぁ。』

『あるかもねぇ…。』

『おい、おい、冗談でもきついなぁ。』

『あぁ…そうそう、原稿忘れているぞぉ。』

『あぁ…いけないなぁ…。つい、先生に見とれちゃった。』

『見とれるなら、こうやって、見てごらん?』

『ちょっと、近い、近いなぁ…って。好きだよぉ。チュウ。』

『えぇ…。マジかぁ。』

『では、先生、19時に桜木町で待ち合わせですよぉ。遅れないでねぇ?』

『あぁ…』


『それにしても、久しぶりにキスしたなぁ。でも、好きだなぁ…。お互いにもともと、付き合っていた仲なんだから、普通だよねぇ?でも、記憶にはないけど…。あれぇ、おかしいなぁ。江ノ島の水族館でキスした風景を思い出したなぁ…。何でだろう?江ノ島の水族館何て、先生と行った事がないのになぁ…。何でだろう?』


『まさかなぁ…。桜木町で稲村さんと逢う約束になるとはなぁ。楽しみだなぁ…。久しぶりにデート出来るなぁ…。それにしても、大和に逢えるのかなぁ。本当に路上ライブしているのかなぁ。外見はカッコいいし、女の子からはもてるけど…常に俺様キャラだし、自己中心的で最低な性格だなぁ…。でも、本当は一途で泣き虫で優しい性格で優柔不断な性格なんだよなぁ。ギターリストは黒を着なければならないって言っていたなぁ。変わったかなぁ?でも、意外と頑固だから、黒のスーツかなぁ…どうなったかなぁ。それにしても、稲村さんにキスされた時に江ノ島の水族館の風景が浮かんでキスしたような気がしたけど…何でかなぁ?あぁ…それよりも、仕事、仕事しなきゃなぁ。』


今日の百人一首は…

『紀 貫之〜人はいさ 心も知らず ふるさとは

花ぞ昔の 香に匂ひける』


20××年

『先生、先生!もう、知らない。』

『おい、おい、突然、怒るなって、久美ちゃん。』

『だってさぁ…府中市郷土の森博物館に来てプラネタリウムを見ても喜ばないし、梅園の梅を見てもぽわんとしていているけど…』

『違うんだぁ。違うんだぁ。ここではないと思うだぁ…。洋館がないんだよぉ。』

『えぇ…ここじゃないのぉ?洋館がある梅園ってもしかしたら、大倉山公園梅林じゃない?この本に載っていたかなぁ?あぁ…あった、あった。ここかなぁ?』

『これだよぉ。ここだぁ。この洋館が過去の入り口だよぉ。』

『まさかぁ…ここは横浜市大倉山記念館よぉ。』

『いやぁ…間違いないよぉ。4人でたまたま、菊名駅で降りて、横浜線に乗って町田駅で乗り換えて、相模大野駅の雪ちゃんに逢いに行こうと思ったら一つ前の大倉山駅で降りてしまって、大倉山公園の梅林を見ていたら、トイレを探して吸い込まれるように横浜市大倉山記念館に入って出たら、ここにいたんだぁ。』

『まさかぁ…あるわけないって。』

『だって、神様が一緒にドライブして、谷底に堕ちて亡くなるって言っていたじゃない?』

『そうだけど…俺は、ビックリしたんだよぉ。』

『だからさぁ。その後に電話がかかってきて、急いで大倉山記念公園で探しているから、早く来てって!言われて向かったんだよぉ。』

『ほらぁ、これが間違って2枚買った時の切符だよぉ。』

『えぇ…本当だぁ…34年02月15日って…。』

『よし、行ってみよう…もしかしたら、過去に戻れるかも知れないよぉ。今の記憶があれば大丈夫じゃないかぁ?』

『でも、私達だけが戻っても大丈夫なのぉ?』

『いやいや、それは駄目だけど…1度、体験してみよう。』

『そうねぇ?その場所が過去の入り口か?試してみたいかもねぇ。』


『あぁ…ついたよぉ。大倉山公園の梅林だぁ…。ここだよぉ。確かに、瞬ちゃんが行方不明になっていたように感じるなぁ…。確かに、電話した時に自宅にいるって言っていたような。久しぶりにみんなで怒ったような気がするなぁ…。』

『でも、瞬ちゃんは、横浜市大倉山記念館に入ってトイレに行っていただけだと言っていたような…タイムトラベルしたって言っていたような。切符をみてもあの時はちゃんと見なかったなぁ…。ごめんねぇ?』

『いやぁ…良いんだ。久美ちゃんは今の私が変わってしまったと心変わりしたと感じているとは思うけど…』

『そうねぇ…今は少し、昔とは違ってしまったみたい。今は誰かに恐れているように感じるわぁ。私がいても、反応が鈍くなったように感じるわぁ。』

『ごめんねぇ…』

『いやぁ、大丈夫よぉ。』

『ありがとう。』

『それにしても、梅の香は昔のままだなぁ。』


『ふるさとは 花ぞ昔の 香に匂ひける』


『はぁ!何だって…そんな事あったかぁ!

思い出せないって…それに、切符なんてあるわけないだろうが…あるとすれば、このアルバムかぁ!切符、切符、東横線の切符、大倉山駅っと…げぇ!あったよぉ。34年02月15日って。こわぁ…何なんだぁ…。』






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