第34話 高砂の 松も昔の 友ならなくに

『先生、先生!見ましたか?』

『もしかして?2年後に?花見?』

『私も見たんですよぉ。』

『かなり、リアルでビックリしたんだ。』

『もしかして、これは…?』

『桜だよぉ。たぶん、2年後に咲く、桜の花だよぉ。』

『ところで、雪さんとは最近、逢ってますか?』

『いやぁ、逢っていないけど…。』

『稲村さんは…?』

『先生とのハンバーグの一件依頼、話もしていないですよぉ。』

『すまないけど…雪さんに連絡を入れて、職場を聞いてもらえないかなぁ?』

『解ったわぁ。』


『いきなり、連絡するって…失礼じゃない。』

『ごめんねぇ。ちょっと、聞きたい事があるんだけど…』

『何かしら?』

『雪の職場って…何処かなって…思って。』

『あれぇ、言ってなかったけぇ。ニチレイのレトルト食品の企画担当をしているけど…。』

『だよねぇ?実は、今度、レトルト食品の本を出そうかなぁ…って。』

『へぇ~、そうなんだぁ。』

『そうなの。なら、しょうがないなぁ~、今度、詳しく聞かせて欲しいかなぁ。』

『ごめんねぇ。ありがとう。今度、連絡するねぇ。』


『先生。夢が現実になるみたいですよぉ。』

『みたいだねぇ…。という事は…。』


今日の百人一首は…

『藤原興風〜誰をかも 知る人にせむ 高砂の松も昔の 友ならなくに』


20××年

『おい、皆、何で、何で、俺だけを残して、亡くなるだよぉ。せっかく、過去の記憶を取り戻して、やっと仲良くなれると思ったのに…』

『ほらぁ…、あなた、結婚したら、お互いに疎遠になるものですよぉ。それに、昔を思い出して、80歳を過ぎてから、逢うのには身体もそうですけど精神的にも辛くなりますよぉ。』

『確かになぁ…。新田さん、小川さんは別々の人生を歩んで、それなりの家庭を作っていたし、無理をして逢ってくれたなぁ。それにしても、出逢ってから次々に亡くなるとはなぁ。しかし、幸せそうだったなぁ…。』

『あなたも私がいるのだから、幸せでしょ?違うのぉ?』

『そうだなぁ…確かに、結婚して、20年かぁ…。まさかなぁ、こんなに月日が流れるとはなぁ。』

『そうよぉ。それに、稲村さんとは短いにしろ、一緒になれたでしょ?』

『そうだねぇ…。グスン…』

『もう、泣かないで、今は私がいるんだから…ほらぁ、涙を拭いて下さいよぉ。』

『あぁ…ありがとう。』

『ほらぁ、この家には立派な松があり、先生を見ていますよぉ。』


『高砂の 松も昔の 友ならなくに…』


『えぇ!どうなっているんだぁ。おい、おい。俺だけが残って、皆が亡くなっているって…それも、隣にいた。奥さんって誰だぁ…。かなり、若いようだったけど…という事は再婚するって事かぁ…。しかし、庭園に松とは立派になったなぁ…。いやぁ…落ち着け、落ち着け、これは、夢、夢だよなぁ。夢なら覚めなければありがたいけど…』


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る