第33話 静心なく 花の散るらむ

『先生、先生、こんにちは。』

『あぁ…こんにちは。』

『はい、いつものです。』

『はい、はい、どれどれ、ルイボスティーとソフトチキンとパクチー大量のサラダとハムとチーズのサンドイッチねぇ。』

『ちょっと、ちょっと、素っ気なくないですか?』

『そうかなぁ。』

『ちょっと、お聞きしても良いですか?』

『どうした?』

『諏訪湖プリンスホテルにはいつ行かれたのですか?』

『はぁ?このライターねぇ。昨日、もらったんだぁ。普段はタバコは吸わないけど…飲みの席だとタバコが吸いたくてなぁ。たまたま、もらったんだぁ。良かったら?吸う?』

『私は吸わないですよぉ。』

『もしかして、雪さんと大人の恋愛になったと焼きもちやいているのかなぁ?』

『ちょっと、ちょっと、それはないですよぉ。雪さんとうまくやっているなら心配はしていないですよぉ。』

『でも、私達が見た夢が現実になったら…辛いなぁ~っと思って。』

『確かになぁ…。でもなぁ…。普段どおりで良いと思うけどなぁ。』

『ですよねぇ!ところで、もしかして、先生は隠し事してないですか?』

『えぇ!なぜかなぁ…。』

『だって嘘が下手ですよねぇ?タバコは吸わないのにお酒を飲むとタバコを吸いたくなるとか?諏訪湖プリンスホテルのライターがあるのはどうもおかしくてねぇ。』

『久美ちゃんには、嘘は付けないなぁ。実はなぁ…夢が現実になるというか…夢で見た物が手元に残るんだよぉ。』

『へぇ~、そうなんだぁ。不思議だねぇ。』

『だろう。これも、久美ちゃんが私の担当になってから何だよぉ。予知夢なのか?それとも、タイムトラベラーなのか解らなくなっているんだよぉ。』

『そう言えば、私も先生の担当になってから不思議な夢をみたり、同じ夢を見たり現実に同じような事が起きましたよぉ。もしかして、百人一首を題材にした事により夢だけが未来につながっていて、その記憶が現在に残るのかも知れないですねぇ?その夢の一部が物として残るのかもなぁ。』

『なるほど…という事はここで大人の関係になるという事かぁ。』

『えぇ?誰とですか?聞きたいなぁ。』

『それは言えないって…。あぁ~、原稿出来ているから持って行ってねぇ。』

『はい、はい、解りました。』




今日の百人一首は…

『紀 友則〜ひさかたの 光のどけき 春の日に 静心なく 花の散るらむ』


20××年

『早いですねぇ?先生の担当になって2年になりますねぇ?』

『そうだねぇ?この2年、色々な事があったねぇ?』

『ですねぇ?先生が通信で大学生になって…いよいよ、今年は実習ですねぇ?』

『そうなんだよぉ。実習先にご挨拶に行かなきゃな…夏には実習。卒業単位を取らなきならないから忙しくなりそうだよぉ。』

『なら、久しぶりに雪さんを誘って花見でも行きませんか?』

『そうだねぇ。そう言えば、雪さんは元気なのかなぁ?』

『私も1年ほど、逢っていないけど…元気なのかなぁ?ちょっと、電話して見ますねぇ。』


『もしもし、私。』

『あれぇ、お久しぶり。どうしたのぉ?』

『先生が久しぶりにみんなで花見でもしませんかぁ?と…大丈夫かなぁ?』

『もちろんよぉ。上野駅に16時ですねぇ?』

『はい。』

『ところで、誰が来るの?』

『仲村さん、私、雪さん、先生かなぁ?後は、仲村さんの後輩の里中くんだったかなぁ。他にもいるみたいだけど…。』

『そうなんだぁ。楽しみにしてますねぇ。』


『お久しぶりです。お元気ですか?』

『雪さん、お久しぶりです。ハンバーグの件依頼ですねぇ?』

『本当、かなり御無沙汰ですねぇ?あの後、お互いに忙しくなりましたねぇ。ですねぇ…。先生は大学生と小説家、専門学校の講師と…』

『ところで、雪さんは今は何をしているのですか?』

『私は、食品会社でレトルト食品の開発をしてますよぉ。』

『あれぇ、先生?』

『お久しぶりですねぇ。今回もコラムの依頼ありがとうねぇ。』

『お久しぶりです。仲村さん。専門学校の講師も順調です。ありがとうございます。』

『あらぁ~、稲村さんもお元気そうで良かった。』

『ところで、こちらの方は?』

『あぁ~、すいません。私の大学時代の親友の上村さんです。』

『初めまして、稲村さんと同じ会社の仲村です。宜しくねぇ?小説のコラムを担当してます。』

『そうなんですかぁ?もしかして、パッケージのコラムとかもやられていますかぁ?』

『印刷会社ではないのでやった事はないけど…食品会社とのコラボで雑誌にコラムを担当した事があるけど…。』

『へぇ~、そうなんですかぁ。仕事の依頼を頼む事があると思うので…』

『えぇ~!ニチレイって…すごいじゃない。』

『へぇ~、雪村出版社ですか?写真集や雑誌などの大手ですよねぇ?』

『そうねぇ。仕事の話は抜きで楽しみましょう?』


『おぉ~!来たよぉ。』

『仲村先輩、場所取りして置きました。』

『ありがとうねぇ。』

『こちらが、新入社員の田中さんと後輩の里中さんです。』

『稲村先輩、御無沙汰です。』

『もう、先輩って…1年しか違わないでしょ。』

『ですねぇ。』

『ところで、こちらは?』

『あぁ~、ごめんねぇ。私の親友の上村さんです。』

『お邪魔ではなかったですか?』

『大丈夫ですよぉ。稲村先輩の親友なら大歓迎ですよぉ。』


『先生、今日は天気が良くて気持ちが良いですねぇ?』

『そうだねぇ。でも、そんな日でありながら、静心なく花の散るらむ…だなぁ。』

『ですねぇ。今日ぐらいは落ち着いてもらいたいですねぇ…(笑)』



『ふぅ~、寝過ぎた!夢かぁ。それにしても、2年後に、みんなで花見かぁ。楽しみだなぁ。あれぇ、なぜだぁ~!手のひらに桜って?…今は、秋なのに…不思議だなぁ。』


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