第26話 小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば
『先生、お待たせしました。』
『いやぁ、久しぶりに熱海に旅行なんてうれしいなぁ…』
『今日は、久しぶりに日頃の執筆活動の疲れを取って下さいよぉ。』
『もちろんだよぉ…それにしても、何から何までやってもらって良いのかい?』
『もちろんですよぉ…。はい、新幹線のチケットですよぉ。』
『あぁ…ありがとう。よし、早速、駅弁とお茶だなぁ…』
『もう、先生たら、新横浜駅から熱海まではすぐですから、駅弁を食べる暇はないですよぉ?』
『えぇ!そうなんだぁ…旅行の醍醐味は駅弁とお茶なんだけどなぁ…』
『もう、先生らしいなぁ…でも、熱海駅に降りたら、『あぁ…食べなくて良かったなぁ…』と言いますよぉ。』
『本当かなぁ…熱海は行った事がないし、降りた事がないからなぁ…どうなんだぁ?』
『そうだなぁ…期待を裏切らない場所で好きだなぁ…駅に着いたら、駅前にある名店商店街で散策してから、ホテルでサイン会、その後は、ゆっくりと温泉に入ってから、花火を一緒に見ます。』
『えぇ!サイン会って…聞いてないよぉ…。』
『えぇ?もしかして、旅行だけだと思っていた?』
『そりゃそうだよぉ…』
『あぁ…でも、熱海で仕事なら、温泉でまったり出来ますよぉ…』
『次は熱海、熱海…』
『あぁ…先生、着きますよぉ?ほらぁ、ほらぁ、機嫌直して行きましょう。』
『あぁ…のらないなぁ…事前に行きたいところ調べたのになぁ…ふぅ…』
『先生、先生、見て、見て!足湯だよぉ…、足湯!』
『おぉ!すごいなぁ!』
『先生、行きましょう?』
『いやぁ、気持ち良いなぁ…』
『でしょ?気持ちが良いでしょ?気にいった?』
『いやぁ、最高だなぁ…。』
『これから、名店街で旅館で食べる温泉まんじゅうとお酒に合う、つまみを買いましょう?』
『えぇ?お土産ではなくて?』
『そうよぉ。旅館で温泉につかると無性に食べたくなるからねぇ?』
『そうなんだぁ…』
『先生、ほらぁ、見て、見て!温泉まんじゅう。あぁ…すいません。温泉まんじゅうを10個と今、食べるので、2個下さい。』
『はい。あらぁ、新婚さんかい?熱海は最高だから、楽しんでねぇ?』
『ありがとうございます。』
『先生、先生どこに行ったのかしら?』
『あぁ…いた、いた。先生、さっき、まんじゅう屋さんの奥さんから『新婚旅行かい?』ってうれしいねぇ?』
『あれぇ、先生顔が真っ赤になってるぅ。かわいい…』
『違うよぉ…。カマボコで一杯飲んでたぁ。』
『ちょっと、ちょっと、これから、サイン会ですよぉ。旅館に着いたら歯を磨いて下さいよぉ…。』
『あぁ…もちろんだよぉ…。それにしても、このカマボコが旨いなぁ。食べる?』
『あぁ…ありがとうございます。本当だぁ!美味しい。これは、ビールがすすむなぁ。』
『だろぉ?だから、さりげなく買ってきた。』
『あぁ…先生、私は温泉まんじゅうですよぉ。先生食べましょう?』
『おぉ!旨いなぁ。薄皮であんこがぎっしりは最高だなぁ…。』
『でしょ?』
『あぁ…そうだぁ、昼食は予約してますので行きましょう?』
『本当に?いやぁ、うれしいなぁ…』
『はい、ここです。』
『えぇ!マジかぁ、カレーって…冗談だろう?熱海にきてカレーって…はぁ…』
『冗談よぉ。すごいなぁ、かなりの落ち込みで笑いそうになった…こっち、こっちですよぉ!』
『おぉ!ここは…行きたかった場所だなぁ…海鮮丼が有名なお店だぁ!やっほい、やっほい、やっほ〜い!!いやぁ、うれしいなぁ…るんるんだなぁ…。』
『えぇ!行きたかったお店って?もしかして…先生、リサーチしてきたでしょ?』
『えぇ…、そんな事ないぞぉ…』
『もう、嘘が下手だなぁ…行きたい場所?実はあるでしょ?違う?』
『そうなんだぁ…実は『サンビーチ』を歩きたい…後は熱海ロープウェイで熱海城から海をみたいなぁ…っと。』
『えぇ…行きますよぉ…。熱海ロープウェイに乗って熱海城でサイン会ですから…』
『本当に!いやぁ、うれしいなぁ…。えぇ!もしかして、2箇所?』
『あぁ…しまった。明日が旅館でのサイン会です…すいません。あぁ…でも、明日のサイン会は午後からですから…大丈夫ですよねぇ?』
『まぁ、食べたかった海鮮丼だからやむを得ないけど…』
『あぁ…良かった。』
『それにしても、うまく騙された感じだなぁ…』
『解りましたよぉ。先生が見たかった、私の浴衣姿をお見せしますよぉ。』
『えぇ!本当に?いやぁ、楽しみだなぁ…。』
『あぁ…先生、来ましたよぉ…海鮮丼。』
『マグロ、伊勢エビ、しらす、他にイカ、タイ、甘エビ、ウニ、イクラ、アワビ…ってすごいなぁ。』
『本当ですねぇ?最高ですねぇ?』
『いやぁ、こんな贅沢などんぶりはめったに食べられないなぁ…』
『ですねぇ?』
『あぁ、美味しかった。満足、満足、めでたし、めでたし。』
『ちょっと、ちょっと、もう、旅館でゆっくりしようと思っているでしょ?』
『これから、熱海城でサイン会ですからねぇ?』
『あぁ…先方からだぁ…』
『はい、大丈夫ですよぉ。』
『すいませんねぇ…突然、直木賞作家がこれなくなってしまいまして…でも、坂浦先生が来てくれるので、すでに坂浦ファンのおば様(いやぁ、お姉様)が出待ちしてますよぉ…。』
『はい、ではタクシーで行きますねぇ。』
『先生、ごめんなさい。熱海ロープウェイで熱海城はキャンセルです。』
『えぇ!何で?』
『先生はおば様たちに人気があるんですよぉ。今回の『鏡花水月の花言葉喫茶〜澤村 あやめ』のファンが先生の写真をSNSでアップしたらしんです。』
『あぁ…そうなんだぁ。確か、売れる前に韓流ドラマファンのチングと仲が良かったからなぁ。』
『うれしいなぁ…』
『それで…100人近くの出待ちがうちわを持って待っているんですよぉ!』
『えぇ?本当に?あり得ないなぁ…、』
『まぁ、行きましょう。』
『はい、到着しました。』
『えぇ…えぇ!すごいなぁ…まさか、こんなに来ているとはなぁ…』
『瞬ちゃん、きゃ〜かわいい!』
『瞬ちゃん、握手して下さい。あぁ…ありがとうございます。』
『もう、韓流ドラマの俳優みたいで素敵です。はい、これ使って下さい。ファンデーションです。』
『あぁ…ありがとうございます。すげぇ、これが欲しかったんだぁ…。ありがとう。』
『いやだぁ…チングとしては当然ですよぉ。』
『写真良いですか?』
『あぁ…大丈夫だよぉ…。』
『はい、大変お待たせ致しました。これより、坂浦先生ことイケメンカリスマ作家、坂浦 瞬先生のご登場です。』
『あぁ、ご紹介致きました。坂浦 瞬です。今日はたくさんの方にわざわざ足を運んで致き誠にありがとうございます。まさか、韓流チングのおかげで読者も増えて作家としと一歩、歩むことが出来ました。ありがとうございます。今回は『鏡花水月の花言葉喫茶〜澤村あやめ』のサイン会です。至らない事もありますが宜しくお願い致します。今回は、記念品として、『澤村 あやめ』のフィギュアをプレゼントしますので大切に飾って頂ければ幸いです。』
『はい、1列に並んで下さい。』
『えぇ!まさか、君が一番先に来るとは…うれしいなぁ…。あぁ…ありがとうねぇ。』
『今日は、久しぶり友達も呼んだからねぇ?』
『おぉ!元気かい?』
『まさかなぁ…おまえからサインをもらうとはなぁ。』
『おい、おい…お姉様たちに刺されても知らないぞぉ。』
『冗談だよぉ…冗談だよぉ…。おめでとう。』
『あぁ…瞬様、逢いたかった。これからも頑張って下さいねぇ?応援してます。』
『あぁ…ありがとう。』
『はい、それでは、イケメンカリスマ坂浦 瞬先生と記念撮影を行います。』
『はい、先生真ん中にどうぞ。』
『はい、1、2、3…カシャ』
『先生、お疲れ様でした。無事にイベントも終わりましたねぇ?』
『いえいえ、これも稲村さんが段取りをしてくれて、サイン会を開催してくれて、ホテルまで用意してくれたからですよぉ。』
『多忙で疲れたんじゃないですか?』
『いやぁ、大丈夫だよぉ。それに、ホテルに着いてからサイン会を終えて温泉で疲れた身体を休ませたからねぇ。』
『良かった。実はねぇ。これから花火が打ち上がるんですよぉ。』
『本当に?楽しみだなぁ!』
『という事で、個室を用意して置きましたよぉ!』
『パンパン…パァーン。パンパン…パァーン!』
『おぉ~!すごい、すごい!すごいよぉ!』
『もう、先生ったら。こんなに酔っぱらうなんてぇ!』
『先生、先生、起きて下さい。朝ですよぉ。』
『はぁ?ここは?何処?』
『熱海ですよぉ。昨日、イベントで熱海に来ていたでしょ?サイン会して温泉に入って花火を見たでしょ?』
『あぁ~、そうだったなぁ。』
『先生、私はこれから、新横浜でお仕事なので先に帰りますが…先生はゆっくりしていって下さいねぇ。後、こちらが、タクシー券と帰りの新幹線のチケットです。』
『あぁ~、ありがとう。では、気をつけて。』
『はぁ、先生ったら…飲みすぎって…。はしゃいじゃうからなぁ。まぁ、たまにはこんな姿もありだなぁ。』
『あちゃ〜、すっかり飲みすぎたなぁ。それにしても、久しぶりにゆっくり出来たなぁ。朝風呂も久しぶりで気持ちが良いなぁ。最高だなぁ。』
『それにしても、飲みすぎたなぁ。家に帰って、かまぼこと干物で飲んじまったなぁ。さてぇ~、ゆっくり出来たから、仕事、仕事、よし、やるぞぉ!』
今日の百人一首は…
『貞信公(藤原 忠平)〜小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ』
20××年
『先生、先生から『京都の嵐山』に着きあって欲しいってうれしかったなぁ…』
『えぇ?だめなのかなぁ?』
『ダメではないですけど…先週、行って来たばかり何ですよぉ…』
『あぁ…そうなんだぁ…タイミングが悪かったねぇ?』
『いえいえ、大丈夫ですよぉ。』
『先生となら何度でも行きたいなぁ。』
『えぇ!本当に?うれしいなぁ…。』
『じゃあ、明日。原稿を渡す時に、日程を決めようねぇ?』
『はい。喜んで。』
『稲村さん、おはよう。』
『日程は大丈夫かい?』
『はい、来週なら、付き合う事が出来ますが…私で大丈夫ですか?』
『もちろんだよぉ…小倉山の紅葉が綺麗な時期だから楽しみだなぁ…』
『そうなんですか?』
『そうだよぉ。』
『では、来週に新幹線の予約を入れますねぇ?』
『あぁ…ありがとう。』
『ジリジリジリジリ…誰からだぁ。こんなに朝早くに…あれぇ?稲村さんからだぁ…どうした?』
『すいません…先生、朝早くからご連絡をいれなければ…っと思いまして…』
『大丈夫だよぉ…何かあったのかなぁ?』
『すいません…来週何ですが…身内で不幸がありまして…一緒に旅行が行けなくなったので、連絡しました。』
『えぇ!そうなんだぁ。稲村さんと一緒に行きたかったけど…ダメかなぁ?』
『再来週なら、大丈夫ですけど…私で良いのですか?』
『あぁ…もちろんだよぉ…。でも、新幹線の予約を入れたよねぇ?』
『実は今日、予約を入れようと思っていまして…』
『あぁ…それは良かった。では、再来週の金曜日の13時の便で予約を入れておいてねぇ?』
『はい、大丈夫です。』
『では、楽しみにしてますねぇ?』
『はい、私も楽しみにしてます。ありがとうございます。』
『あぁ…来週は紅葉は無理かなぁ…でも、久美ちゃんの紅葉は見れるかなぁ…楽しみだなぁ…。』
『小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ』
『はぁ…夢か…。それにしても何故だろう、以前見た夢と比べてかなり、ぎこちなかったなぁ…どうしてだぁ?それにしても、明日はどうなるのかぁ…不安だなぁ…』
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