『すれ違いの奇跡〜儚い恋物語』

第27話 いつ見きとてか 恋しかるらむ

『先生、おはようございます。』

『あぁ、おはよう。こっちに置いてねぇ。今日は、少し忙しいからぁ。』

『はい、いつもの。ルイボスティーとソフトチキンとパクチー大量のサラダとハムとチーズのサンドイッチです。』

『はい、原稿ねぇ。では、原稿が出来たら連絡する。』

『はぁ、お疲れ様でした。』

『待て、待て、待てって…冗談だよぉ。びっくりした？』

『もう、最低ですよぉ。びっくりしたじゃないですか！』

『泣く事ないじゃないかぁ。』

『普段と違うし、熱海のイベントでミスしたかなぁ…っとか。先生を1人にしたのが悪かったのかなぁ…など考えちゃいましたよぉ！』

『いやぁ、悪かった。酔っぱらってしまったから、顔を合わせにくいと言うか…ぎこちなくなっちまってなぁ。お詫びもかねてランチに行こう。』

『ありがとうございます。素敵なカフェですねぇ？雰囲気も素敵で落ち着いていて、女子力高めのカフェですねぇ？(あぁ…素敵だなぁ…)』

『そうかなぁ…(そりゃ、久美ちゃんの為にリサーチ済みだよぉ！)』

『ここのカフェはサラダがとても美味しいですよぉ。それに、ランチタイムは五穀米や温野菜を使っていて、身体を温めてくれるし、体調も改善したりと最高なんだよぉ。ランチセットで大丈夫かなぁ？』

『はい、大丈夫ですよぉ。』

『おぉ！来た来た！テンション上がるなぁ…』

『あぁ…本当に美味しそう。』

『あぁ…ところで、稲村さんは嫌いな食べ物はありますか？』

『嫌いな食べ物は、鶏肉の皮の部分です…どうも、鳥肌を思い出すというか…噛んだ時の感触がゴムを思い出してダメ何ですよぉ…』

『なるほどねぇ？その感覚は解るなぁ…でも、私は嫌いではないなぁ…』

『あぁ…早速、あるんですけど…じゃ、頂くねぇ？』

『えぇ…私の口がついていますよぉ。』

『あぁ…そっか、気にならないさぁ。好きな人が嫌いなら食べ物なら、成敗だなぁ…』

『もう、恥ずかしいですよぉ。』

『そっか。恥ずかしい顔も好きだけどなぁ。』

『あぁ…ところで先生が嫌いな食べ物は何ですか？』

『わさび漬けが嫌いだなぁ…』

『えぇ！美味しいですけど…』

『いやいや、無理だなぁ…わさびと酒粕は別に食べたいタイプ何だぁ…』

『なるほどねぇ？解るなようなぁ…』

『本当に？いやぁ、うれしいなぁ…その感覚。ありがとうございますって感じだよぉ…。』

『あぁ…そう言えば、先生は街に用事がある時はメモとか書いて、午前中に済ませるタイプじゃない？』

『えぇ…すごいなぁ…そうなんだよぉ…時間を有効につかいたいからなぁ。』

『だろうと思った。それから、BGMが流れていそうだなぁ…』

『すごいなぁ。そうそう、そうなんだよぉ！

最近は『プリティーウーマン』のテーマ曲何だぁ。』

『解るなぁ…私も最近はそうかもなぁ。用事を済ませる時は無駄な物は買いたくないですよねぇ？ところで、どんなお店に行かれます？』

『そうだなぁ…ロクシタン、フラン・フラン、アフタヌーンティー、ビームス、古着屋、ドラッグストアーかなぁ…最後にカフェで贅沢にランチが定番のコースかなぁ。あぁ…GAPにも行くなぁ。特に、花柄のシャツを買いたくなるなぁ…。』

『えぇ！花柄ですか？』

『そうだよぉ。でも、さりげないシャツだよぉ…どぎついのは苦手だけど…』

『あぁ…このシャツも花柄ですねぇ？』

『これは、ビームスで衝動買いだなぁ…かれこれ、5年ほど使っているなぁ…』

『素敵ですねぇ？愛着を持って物を大事にするのは好感触です。』

『そうかなぁ…ありがとう。でもねぇ…買うのには時間がかかるなぁ…だから、本当は好きな人に選んでもらったり、選んであげたりしたいんだぁ。たとえそれが、『しまむら』などのファストファッションでも良いんだよぉ』

『なるほどねぇ？私も選んでもらったら、毎日でも着たくなるなぁ…先生が選ぶのはセンスが良さそうだなぁ…もしかして、ブランドの服は古着屋で買うのぉ？』

『もちろんさぁ。好きなブランドがあるのは、昔、高くて着れなかった反動だから、せめて大人になったら、着たいって思っているだけ何だぁ。』

『こだわりがありそうでないからなぁ。でも、ロクシタンは好きで使っているなぁ…』

『ロクシタン？あれは高いですよねぇ？』

『そう、そうなんだよぉ…だから、自分へのご褒美に半年を目安に買っているなぁ…チビチビ使ってますよぉ。』

『へぇ、そうなんだぁ。案外、庶民的で良かった。』

『そりゃそうさぁ。売れていない作家だからなぁ…』

『そうでもなさそうだけどなぁ…』

『それにしても、この定番コースって、デートのコースとしても素敵ですよねぇ？女の子が好きそうですけど…そりゃ、女性にはモテるでしょ？』

『そっかなぁ…まぁ、最近は女性との付き合いは減ったけど自然とこうなったなぁ…。昔は、渋谷にあるキリストンカフェが好きでねぇ？行った事ある？』

『いやぁ、ないですよぉ…』

『そうなんだぁ。今度、渋谷あたりで食事に行くときは連れて行ってあげるねぇ？』

『えぇ…本当に？楽しみ。』

『あぁ…その前に、監獄レストランでも行きますか？』

『何ですか？監獄レストランって？』

『えぇ！知らないのぉ？なら、楽しみにしてねぇ？』

『はい、楽しみにしてます。』

あぁ…先生、ご馳走様でした。ありがとうございます。』

『又、誘っても良いかなぁ？』

『もちろんですよぉ！』

『あぁ…それと失礼になるとは思いますが、話を聞いていて『小説家』として、成功していないですよねぇ？』

『おい！痛いところつくなぁ…確かに…『鏡花水月の花言葉喫茶〜澤村 あやめ』以外はヒット作はないよぉ。それに、似たような作品があるから…辛いけど。』

『そうかなぁ…違うと思うけど…店員が幼いようで実は28歳とか？月に1日と15日しか開業しないとか？メニューが1種類しかないとか？花言葉を選ぶとか？ただ、まだまだこの作品の知名度がないからなんじゃないかなぁ？私は、どの作品も先生の人柄や温かい気持ちを届けたい熱意を感じますよぉ。感情移入して涙なくして読めなかったですよぉ。続きが読みたくなりましたよぉ…』

『本当に？すごくうれしいなぁ…』

『ところで、なぜ『小説』を書いているのですか？』

『実は、昔…『兎の眼』〜『灰谷 健次郎』の作品に強く影響を受けたんだ。』

『えぇ…どんな話なんですか？』

『簡単に説明すると、新人の女性担任とその教え子の話でねぇ？その子供がお爺さんと焼却炉に住んでいるのぉ？周囲はその子供を差別したり近寄らないようにと言うのさぁ…そんな影響もあって自分の気持ちを伝えない内気な性格になるのだが…その子供はとって貴重な蠅を飼っていて大切な宝物何だぁ。誰しもが『蠅』は汚いものだと思っているのが一般的だけど…それが原因で内気な子供が気が狂ったほどに暴れてしまいお爺さんからその話を聞くのさぁ…後は本を読んでもらえればうれしいなぁ…。』

『へぇ、そうなんだぁ。ぜひ、読んでみます。』

『だからねぇ？私は『小説』をとおして、本当の気持ちに寄り添ってもらいたいと思うんだよぉ。出来れば、『生きる希望』や『相手を思いやる心』や『小さなきっかけ』になればと思っているんだぁ…だから、たとえ売れなくても『今の気持ちを伝えたいのさぁ。』』

『そうなんですねぇ…すいません。私は、ただ売れない作家が苦悩していると思っていて、正直、これで最後にすれば幸せだと思っていました。グスン…』

『ほらぁ、泣かないで…売れてないと生活出来ないからなぁ…大丈夫だよぉ…。前にも伝えたけど…先の事は考えているからねぇ。(ナデナデ)ほらぁ、原稿忘れているよぉ…』

『はい。きっと、私を大切にして下さいよぉ…』

『もちろんだよぉ…。では、原稿が出来たら連絡するねぇ？』

『はい』

『それにしても、最初はびっくりしたなぁ。素っ気ないし、目を合わせないなんてぇ。男って最低って思ったなぁ。でも、冗談で良かったけど…はぁ、また、泣いちゃたなぁ…。反省、反省。』

『それにしても、情けないなぁ。酔っぱらうと顔を合わせられなくなる性格は最低だよなぁ。

久しぶりに一緒に食事をしたり、世間話が出来て良かったなぁ…。さぁ！開き直って、仕事、仕事。』

今日の百人一首は？

『中納言 兼輔〜みかの床 わきて流るる いづみ川 いつ見きとてか 恋しかるらむ 』

20××年

『先生、先生、私を探してって伝えましたよねぇ…』

『えぇ…姿が見えないのに…何処にいるんだい？』

『私はここにいるでしょ？』

『ちょっと、何処にいるんだよぉ…姿も形も見えないのに…出て来て欲しいよぉ…』

『あなたが書いた小説の中にいるでしょ？』

『そんな事言わないでおくれよぉ…』

『あなたが書いた理想な女性はあなたが未来を信じれば逢えるのよぉ…』

『だとしても、近くで声が聞こえるのに…ここにいるんでしょ？違うのぉ？』

『そりゃ、あなたの側にいるわよぉ。』

『頼む、一度で良いから…姿を表して欲しい。』

『もう、先生泣かないで下さいよぉ…』

『1度も出逢った事がないのに何処かであったような…』

『あなたは逢えるわぁ…』

『いつ見きとてか 恋しかるらむ』

『はぁ、夢かぁ！いったい誰？出逢った事があるような…懐かしい感覚は？それにしても、声だけは辛すぎるって。』