Mission067: 緑色
報告を聞いたMは、怒鳴るように情報を求める。
「種別は!?」
「リクシアスとグリンドリン多数、それに艦が5隻……いえもっといます!」
この情報が何を示すか、考えるまでもない。ベルゼード帝国軍による、ゲルゼリアへの攻撃である。
Mは素早くマイクを手に取ると、ゲルゼリア内の全クルーに――また艦の外部で作業している
「総員戦闘配置! 作業部隊は進行急げ、完了次第着艦せよ!」
マイクを置くと、まずMは状況の把握に努める。
先陣を切って向かってきたのは、
これだけでもフィリスという護衛対象があるので厄介だが、Mにはさらに気になる点があった。
「艦種は何だ!?」
「軽巡洋艦5隻、重巡洋艦1隻……巡洋戦艦1隻です!」
「巡洋戦艦か……!」
今までに交戦した経験の無い艦種だ。大まかな情報ではあるが、重巡洋艦より武装・装甲に優れ、さらに機動性もそこそこある。
ゲルゼリアの火砲は強力であるが、それでも単に主砲を直撃させるだけでは仕留めそこなう可能性のある強敵である。加えて搭載
今までのような簡単な敵ではない、そうMは結論付けた。
下手を打てば護衛対象のフィリスが落とされる可能性も、最悪ゲルゼリアが沈められる可能性もあり得る戦力だ。
ゆえにMは、多少つたなくとも最速の対応を取る。
「フィリスへ通達しろ、連結を解除する! ゲルゼリアを盾にするぞ、フィリスや整備部隊を何としてでも守り抜け!」
フィリスへ移動した補給部隊を、一時的に置き去りにするものである。戦闘さえ終わればすぐに元に戻せるため、異存なく遂行に動き出した。
問題は、整備部隊とフィリスである。そもそも修復作業は、フィリスがゲルゼリアについていける程の速力を得てもらうために行っていたものだ。
未完成である現時点で離脱しては、置き去りにしてしまう。今後のサロメルデ王国との関係を考慮すれば、最悪極まりない選択であった。
と、レーダー手の一人が、通常とは違う反応を見つけた。
「妙に反応が異なるリクシアスが、見えます」
「種別は分かるか?」
「最大望遠で映します!」
すぐさまカメラを起動し、接近するリクシアスの姿を捉える。
そこには、小隊――4機一組の構成――中に1機だけ、緑色のリクシアスがいた。
Mはそれを見るや否や、マイクをひっつかむ。
「エクスカリバー、プロメテウス隊、交戦を許可する! ただし、フィリスや整備部隊のリクシアスの護衛が最優先だ! なお敵機に緑色のリクシアスがいる、交戦する時は
それを聞いたゼルゲイドは、嫌な予感を覚える。
「緑色……? 聞いたことが無い色だ」
「ゼルゲイド様、優先して撃墜しましょう。敵も緑色のリクシアスを守りに動くでしょうが、それよりも先に」
「はい、アドレーネ様!」
返事をするや否や、ゼルゲイドはシュヴァルリト・グランを前に出す。
シュヴァルリト・グランがライフルを構え、緑色のリクシアスに狙いを定めた。
「狙いづらいとこにいんじゃねぇ……!」
緑色のリクシアスがいるのは、編隊の最後部だ。いざとなったら回避機動を取り、あるいは仲間のリクシアスが盾となって守る目論見である。
しかしシュヴァルリト・グランの持つビームライフルは、そんな動きを取るのも許さずに緑色のリクシアスを撃墜した。
「まずは1機……!」
複数いる緑色のリクシアスのうち、先頭の1機を墜とすことに成功したシュヴァルリト・グラン。
残る通常のリクシアスを撃墜せんと、ビームライフルを格納して機体を前に推し進める。
と、リクシアスたちの機動が緩慢になった。
「……?」
アドレーネはリクシアスたちの動きに、不審さを抱く。
しかしゼルゲイドは気づかない。
次の瞬間。
「何だ、モニターが……!?」
シュヴァルリト・グランのカメラアイが捉えた映像に、乱れが生じる。
「ゼルゲイド様、一時後退を!」
アドレーネの指示で、ゼルゲイドは素早くシュヴァルリト・グランを後退させる。牽制としてビームをばら撒きつつ、ゲルゼリアの近くまで逆戻りした。
「乱れが止まらない……。アドレーネ様、これは?」
「これがMの言っていた
アドレーネはブレた映像を見ながら、冷静に伝えた。
Advancer(アドヴァンサー)~かつて国を追われた“最強”の騎士の息子が、“希望”の象徴である姫様を守る物語~ 有原ハリアー @BlackKnight
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