エピローグ

破滅へのライジング・サン

 リラ星人は予定より一か月早く地球を去った。地球のエネルギー資源は完全な枯渇こそ免れたが、それでも世界を復興させるには全く足りなかった。これから世界各国は維持可能な自然エネルギーのみを頼りに、細々と生きて行くしかないのだ。


 しかし、日本だけは違った。日本政府はリラ星人が去った後、リラ星人に協力する見返りとして引き渡された、を大々的に発表した。それは九割以上の変換効率を誇るエネルギーコンバーターと、その生産装置。両者ともに外観は一メートル立方に満たない小さな黒い箱状の物体で、一定以上の熱・電気・光エネルギーを浴びると稼働する。

 エネルギーコンバーターは熱・電気・光エネルギーを自在に変換可能な超技術。しかもバッテリーのようにチャージまで可能。これさえあれば太陽光からでも文明の維持に必要なエネルギーを十分に賄える。石油も石炭も天然ガスも原子力も不要なのだ。


 この超技術を持って、日本は他国に先駆けて復興し、世界一の覇権国家に昇り詰める。無名の少年一人を犠牲にして――その事実さえ全く知らないまま――日本は危険な賭けに勝利した。長き夜の時代を越え、遂にライジング・サンが世界の頂点で輝く時が来たのだ。





 だが、誰も知らない。リラ星人の置き土産が、大いなる罠である事を。

 エネルギーコンバーターを生み出すブラックボックスのが何なのかを。

 エネルギーコンバーターの中にを。

 地球を襲ったリラ星人の正体を知らない大多数の者には、全く想像もできないだろう。日本が隆盛を極め、我が世の春を謳歌する裏で、既に滅亡へのカウントダウンが始まっている。



―――――『超兵器NEO』に続く

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

O'wil【オーウィル】 @odan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説