第6話あんちけもなーさん

 旅する異世界人、彼は何処から来て何処へと向かうのか?それは良く分からない。たぶん神々ですら………




「別に吾が子等ではないし見届けたる必要もなかろう。たまに目に留まれば興味を持つこともあろうが」(by某地方を守護する女神様)




 地の文に茶々入れしないでください。




 今日の旅の宿は獣人族に対する差別が強い地域である。魔王との戦争があった過去でも共闘する獣人族戦士の助けを払いのけた史実があったりする。どんだけ獣人差別が根強いのかと………旅する異世界人は知らない、異世界人は見た目人族だから。彼の種族は良く分からない、異世界人だし。


 そんな彼も食事をしようと飯屋?酒場?に入る。この地域は牧畜がほとんど行われておらず、わずかな農業と森の恵みを利用した加工業を主としているのだがこの地の産物は人材といわれるくらいに有能なものを輩出しているのだが獣人差別がひどくて使いづらい、獣人以外の諸種族に関しては柔軟対応しているのにどうしてなのかと疑問があるのだが土地土地に理に適ったやり方があるのだろうそれを話のタネにするのも面白いのだろうなと異世界人は思ってみたりする。立ち寄った店でも『獣人お断り』の文字がどこまであれなんだろうか?




 異世界人は一人である。旅の連れは基本的にいない。相席になることは多い、席いっぱいに料理を並べれば別だがそこまで食べきれる人なんてそんなにいない。ドワーフ小人だと席いっぱいに酒瓶を並べるのかもしれないが他にも竜族だとか巨人とか………この辺は体が大きすぎて席に収まらない気がする。


今日は地元の役人と魔王国から来た外交官である。




「相席失礼する。」


 役人は固く一言


「お邪魔しますよ」


 外交官は軽く挨拶する。異世界人も「どぞどぞ」と軽く挨拶を返してよかったらどうぞと皿を勧める。カウンター席なら兎も角テーブル席で一人だけ飲んでいるというのはとても気まずいものである。皿のものは会話の切っ掛けとなる。互いに自己紹介をし役人が異世界人の分の盃を用意して出会いの乾杯をする。


 酒と美味は太古よりの交流手段である。紹介を受けて異世界人はこの取り合わせの異質さに驚く。魔王国は国交は僅かながらにあるが魔王勇者戦役で色々気まずいこととなっているので大っぴらには交流はない。一部の目ざとい商人達が交易をしている程度である。まぁ、この儲けは意外とあるようで国としても一口噛みたいと……げふんげふん………これ美味しいんじゃね?取り繕ってないな。相席している彼等も大々的な交易がはじまった時の問題点の洗い出しとかどういって物が売れるのかといった市場調査を兼ねて見聞を広げたり論を戦わせたりしていったあとである。


 この地に来た原因も交易路の中で微妙に要衝となっている地が獣人差別が酷いとされているのでその原因を探りつつ解決できれば嬉しいなと………両国の思惑が一致しているのだがこの地を治める領主一族が頑なに獣人を受け入れること曲りならんと突っぱねているのである。領主一族を更迭するのは可能だがそれをするとこの地の民ごと反乱を起こされかねないので何とか穏便に収めたいものであったりする。領主一族は名君とは言わないが、土地の者の幸いに骨折る仁君ではある。一番に災難はこの席にいる役人殿であったり………彼は胃壁が壊れて薬と服用すると今度は頭髪に被害が………ちなみに獣人族は魔王国の中でも結構な数がいて彼等の受け入れを拒否するのはいろいろと問題が………人種差別というよりも俺たちにも交易させてうまい汁吸わせろ的な意味合いで魔王国側でも大変だったりするのは笑い話。




 そんな愚痴を両者の口から聞かされてこればっかりは時間をかけてじっくり交流をして解決するくらいだとか交易都市でも作って貿易管理でもすればとかとかしか言えない異世界人。その案が出せるだけちょっと俺たちの話に混ざって力貸せやと首根っこつかまれたりするのはどうしたものか、おまえ等一応守秘義務とかあるだろうと思ったのは異世界人だけである。




「この話は俺を巻き込むなとか色々突っ込みたいところがあるんだが、どうしてこの地の領主一族は獣人を嫌がるんだ?」


「…………古くからの言い伝えによると領主一族のご先祖様は獣人には毒があると言い残して居られたらしい。なんでもクシャミが止まらなくなったり目が痛くなったり………我が国の獣人達ですら遠ざけておられたとか………」


「それって過敏症(アレルギー)じゃね?」




「あっ………!」


______________________________________


ネタバレ&登場人物?


異世界人:住所不定無職………それを言うと本人が傷つく。今回はつい突っ込んでしまった一言で世界に大波紋を起こした模様。こいつの場合は言動見直したほうが良いかも。




役人さん:現地の領主一家の一族の人。色々な所からつけ上げを食らって不憫な人、原因が分かったからって解決策が見つかっていない。過敏症(アレルギー)の薬を用意しても「不味い」の一言で却下されたりどうしたものかと頭を抱える。本人も獣人アレルギー持ち(軽度)。猫好きなのにアレルギー。




魔王国の外交官さん:作中語られていないけど魔王様の血族(魔王族)、王位継承権は低いけど持っていたりする実はお偉いさん。魔王国の獣人諸種族と人族側との板挟みで苦労している。魔王にもっと力貸せやとぶん殴りたくなっているのは公然の秘密。




領主一族:作中登場せず、古くからこの地を統べている古き貴種。この地の住民とも縁続きだったりしているのでそんなに悪政はしていない。獣毛過敏症持ちが多い。この件を聞いて立ち入り禁止地域を設けるなど住み分けする政策をとったりする。彼らは魔王国に行くことはまずない。


ご先祖様は獣人族の助けを良しとせずに魔王軍本陣に退却(突撃)して当時の魔王をビビらせているのは笑い話。後の史書には「あれは怒られたとの妻並みに怖かった」と記されているのだが勇者について言明されていないのは(お察しください)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

なぜなに異世界人 @valota666

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ