名もなき詩

@sensyamen

無題

ここは、東京都水上市北第5区。

官営民営の住宅地や団地が乱立している。特にこの官営住宅とされる団地には、社会行政特区へ赴き、その工場で働く者達が住んでいる。それは、アニマルガールとなった元保健所のペット達だ。

この国の保健所のイヌネコ等の愛玩動物の殺処分率はゼロとなった。

保健所に送られたペット達は新しい飼い主が来る迄待つ。そしてそれが駄目なら殺処分・・・・・・ 

だったのを貴重な労働力、あわよくば少子高齢化問題に悩んでいた日本の人口増加の促進の為に人為的にフレンズ化させる。

人口増加の為と聞いて・・・・・

いや、なんでもない。

話が脱線した。


工場で働く元ペットのアニマルガール達の一日の始まりは、早くとも朝の7時。

住宅から出てきた者達は、同じ方向に向かっていく。たどり着いた先には、高速地下鉄道の入り口だ。

定期券を改札機にかざし、車両に乗り込む。


お勤め先は国営の工場で、出勤時間は9時、退勤時間は17時。

休憩時間を含め、8時間労働する。月給は1500円。

土日祝日休み。

毎日、何の脈絡もなく、仕事は工場自体がよほどの方針転換等をしない限り全く変わらない。

各々で同じことを毎日、決められただけやり、与えられた仕事を全うに行っている。この国営工場には、合い言葉がある。

それは、「人燃金欲」だ。

意味は「人の燃料は金を始めとした欲」である。

ここに居る労働者達は、安定した収入を求めて働きに来ている。

ただ、好きなことをし、食事をする為に働いている。

工場には、電車のダイヤグラムに狂いが無ければ7時半に到着する。

しばらくすると、夜勤で働いて帰る者と鉢合わせする。

私服を着たフレンズとスーツを着た事務系統の人間が混在した列がすれ違う。

8時、朝礼が行われる。工場長から連絡事項を伝えられる。

そして朝礼の終了直後に作業開始。

11時に午前中の休息を10分間。

12時に昼休憩を1時間とる。

そして3時に10分間。

16時50分に終礼し17時に帰宅開始。

これが工場で働くフレンズ達の一日である。




帰宅途上。

電車に乗っていると、後ろから声をかけられ、イエイヌのフレンズの一人が振り向いた。

振り向いたらイエネコのフレンズが居た。

疲れきった顔が笑顔に変わった。

「やっと、終わったね。」と云うと「そう、やっとね」とイエイヌが応えた。


このイエイヌの食費は一日平均で190円。米は三キロで20円になるので、

ガス代は一日平均26円。

電気代は一日平均3円50銭。

小遣いは350円。これで服を買ったり、遊びに興じたりする。

貯蓄はタンス貯金を抜きにして、大体10000円。


かつて100円は握り飯一つが税込で買えるか買えないかであったが、今の100円はSSプリンターのもたらした物価安で少し上質な服を買ってお釣りが出る位。

その為、銭単位の貨幣が出回っている。

しかしその代わりに行政地区の最低賃金と国家最低賃金を合わせて12円。

1ドル1円の世界、極端なる円高だ。


イエネコは食事に誘ったが、イエイヌは「疲れたから」と誘いを断った。

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