第10話 メッセージ
久しぶりに家族揃って、それに七海さんと柚葉さんと一緒に出掛けた。
母さんが働き始めてからずっと寂しそうにしていた妹菜も、まあ、とびウサが当たらなかったときはしょんぼりしていたけど、楓さんから貰えると聞いてからはずっと笑顔で、妹菜も久しぶりに楽しめたのかなって思う。
そして家に帰ってくるなり、妹菜はずっと眠たそうな目を擦っている。
お風呂に入って、歯を磨くまでは頑張って堪えていたんだけど、ドライヤーで髪を乾かすまでは堪えられなかったらしく。
「おにいちゃん、まいな、もう……おやすみ……」
「まだ寝ちゃダメだよ」
長い後ろ髪を乾かしていると、コクッ、コクッと頭が倒れる。それが面白くてずっと見ていたかったけど、さすがにかわいそうかな。
「よし、もう大丈夫だぞ」
「はあい……おやすみ、おにいちゃ……」
「ああ、おやすみ」
椅子に座っていた妹菜はふらっと立ち上がり、そのまま布団にダイブした。それからすぐに寝息が聞こえてくる。
はしゃぎ疲れたんだな、寝顔が少しだけ笑顔に見える。
「っと、早く電気消してあげないと」
電気を消して部屋を出る。
手には今日買ったスマホと、分厚過ぎる説明書。
リビングには誰もいない。明日の朝が早いのと母さんも疲れたのか、もう部屋で寝ている。
「俺も早く寝ないとな」
明日も新聞配達は休みだから余裕あるけど。
今日ほど、明日休みで良かったと思ったことはない。
俺はスマホのボタンを押す。ピカッと光る画面。
「新着の、メッセージ……?」
というのが三件届いているらしい。
スマホの画面をタッチして、暗証番号を入力する。
「0214……っと」
妹菜の誕生日であり、バレンタインデーの日。
自分の誕生日は暗証番号にしたら危ないって、最初にこういう暗証番号関係を作ったときに言われた。だからいつも暗証番号はこれにしている。
画面のロックを解除すると、すぐに届いていたメッセージが表示された。
『りっくん、初メッセージだよ! これからはどんなに離れててもいつでも話せるね、良かった良かった! それじゃあまた明日、おやすみー!』
柚葉さんからのメッセージ。
声の無い文章なのに、柚葉さんらしいって感じがして笑ってしまう。
「はい、よろしくお願いします。おやすみなさい……っと」
文字入力は母さんのスマホを使ったことがあるからやり方はわかってる。ただ片手での入力は難しい。両手でゆっくりと入力する。
そして次のメッセージは、七海さんからだった。
『陸斗くん、今日は誘ってくれてありがとう。妹菜ちゃんも元気になってくれて良かったね。何か困ったことがあったらメッセージでも電話でもいいから、なんでも言ってね。それじゃあ、おやすみなさい』
今度は七海さんらしい丁寧なメッセージに微笑んでしまった。
柚葉さんと同じ返事をして最後のメッセージを確認すると、相手は楓さんだった。
お店を出ようとしたとき、楓さんとそのお父さんに挨拶へ行ったとき連絡先を交換した。
同じ学生だから、ということもあるけど、貰えると言っていた”とびウサ”のぬいぐるみは意外とサイズが大きいらしく、お弁当屋さんに持っていくのは少し恥ずかしいから俺に直接渡したいのだとか。
メッセージを確認すると、
『楓だよ、登録よろしくね!』
という、短い文章。そして可愛らしい絵文字。
柚葉さんとか七海さんとは違った感じで、なんというか……どう返事したらいいのか迷った。
「こちらこそ、よろしくお願いします……でいいのかな?」
絵文字の使い方とかわからないから、これしか送る言葉がない。
返事をして説明書を見ようとすると、送ってから十秒ぐらいでメッセージが届いた。
『そういえば陸斗くんって、あたしの一個下だったよね?』
返事早いな。
俺は短く、はい、と返すと、
『じゃあ敬語とか無しで!』
またすぐに返事が。
敬語無しか、うーん。
『敬語使われるの慣れてないから!』
『だから敬語はいらないよ』
『そっちの方が話しやすいもん!』
ピコン! ピコン! と返事に困っている間に何度も通知音が鳴る。
「メッセージのやり取りって、こんな感じなのか……?」
俺の短い返事よりも長かったり、何度も送られてきたり。
メッセージをくれているのに返事をしないわけにはいかない。
短いし遅い返事だけどなんとか返していると、それが何件も何件も続いていく。
最初はお互いの自己紹介みたいな感じで始まって、それから学校でのこととかバイトでの母さんの話しとか、楓さんに振られる話題が尽きることはない。
「メッセージのやり取りって、こんなに往復するものなのか……?」
そんな風に思いながらも、楓さんとのメッセージのやり取りは面白かった。
柚葉さんや七海さんと話すときの、家族と会話するのとは違った……友達との会話。
年上の人と話すことは今までの経験上多くて慣れているけど、こうして同じ学生とする会話の経験はあまりない。
だから不思議な感じで、楽しいと思えるのかな。
それからもメッセージのやり取りをしていると、
『あの、変な質問していい?』
と、少し雰囲気が変わったように感じた。
「大丈夫」
『えっと、陸斗くんのお母さん……宇野さんって、お付き合いしてる人っている?』
幼稚園に通う妹が、年上のお姉さんたちをお持ち帰りしてくる 柊咲 @ooka
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。幼稚園に通う妹が、年上のお姉さんたちをお持ち帰りしてくるの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます