ドラゴンって……いいよね……

22世紀の精神異常者

ドラゴンって……いいよね……

 どうも、ドラゴンを愛しすぎて友人にドン引かれた変人です。今日はドラゴンについて語りつくそうと思います。

 タイトルを見て「何言ってんだこいつ」とか思った人もいるかもしれません。「なんか気持ち悪い」とか考える人もいるかもしれません。そういう人も、このエッセイを読み終える頃には私と同じく「ドラゴン……尊い……」等と本気で考える変人になれると思います。いや、してみせます。

 まあ、語る内容としては簡単で、『ドラゴンという存在がどれほど尊いものであるか』もしくは『ドラゴンのどこが魅力的であるのか』ということです。単純ですね。狂気じみてますね。

 まず最初に、ドラゴンと聞いてまず想像するのは、東洋の蛇タイプの龍、そして西洋の蜥蜴に羽が付いたタイプの竜、この二種類が浮かぶと思います。この二種はそれぞれ別の魅力があるので、まずは東洋の方から。

 まず、中国や日本の伝説でもお馴染み、『まんが日本昔ばなし』のパッケージにもいる、あの龍です。一般的に人間と友好的な存在として書かれます。例外はいますが、殆どが友好的な存在ですね。

 種類としては、『青龍』、『赤龍』、『白龍』、『黒龍』、『黄龍』、『神龍』などです。外見的な差は色以外はあまりありません。今例に挙げた龍は、それぞれ中国の伝説で『東』、『南』、『西』、『北』、『中央』を守るとされています。まあ、黒龍に関しては悪者扱いですが。そういえば、日本のヤマタノオロチも悪者でしたね。

 このタイプの龍には良く知られた逸話がありますね。そう、逆鱗です。ここで一つ、逆鱗に関して書かれた漢文を参考にしましょう。


   夫龍之為蟲也夫れ竜の蟲たるや柔可狎而柔にして狎らして騎也騎るべきなり

  

   然其然れども其の喉下有逆鱗喉の下に逆鱗の径尺径尺なる有り


   若人有若し人之に嬰之者嬰るる者有らば則必殺人則ち必ず人を殺す


   人主亦有逆鱗人主も亦逆鱗有り


   説者能説く者能く無嬰人主人主の逆鱗に嬰るる之逆鱗こと無くんば則幾矣則ち幾し


 これは、韓非子の『嬰逆鱗逆鱗にふる』の一説です。この文を現代語に訳すと、『龍という生き物は、従順な性格で、飼いならしてのることができます。 しかしその喉元には逆鱗という長さが一尺ほどの鱗があります。 もしこれに触れる者がいたならば、龍は必ずその人を殺してしまいます。 君主にもまた逆鱗があります。 君主に説く者は、君主の逆鱗にふれないでいられるならば、説得は成功に近いといえるでしょう。 』となります。

 まあ、要するに、逆鱗に触れてはいけない、という事です。誰も自身の弱点やトラウマを突かれて気分が良くなることはないですからね。

 さてここで考察です。先程私は『弱点やトラウマを突かれて気分が良くなることはない』と言いました。相当なマゾヒストでない限り、この定義は適応されるでしょう。『嬰逆鱗逆鱗にふる』の一文目に『夫龍之為蟲也夫れ竜の蟲たるや柔可狎而柔にして狎らして騎也騎るべきなり。』等と書いてありますので、読んでくださっている方の中には「龍はマゾなんじゃないか」と考えるかもしれません。しかし、それならば弱点を弄られて喜ばないのはおかしい気がします。いや、おかしいです。

 つまり、逆鱗と言うのは龍にとって弱点、つまり性感帯にあたる、という事です。幾ら従順な龍とはいえ、家族でもない、更に言えば求愛対象とは程遠いであろう人間に、性感帯を好き勝手に弄られるのは気分が悪いでしょう。嫌がって暴れるでしょう。その結果、人間が不運なことに死んでしまった。『嬰逆鱗逆鱗にふる』の冒頭三文は、こうも取れるのではないでしょうか。

 要するに、龍に対して人間が求愛対象であると思わせる事が出来れば、逆鱗も触れさせてもらえるという事です。殆どの人間が、身内に対しては幾らか甘くなる事と同義です。そうすれば、普段は凛々しい、中国において皇帝のシンボルにもなった龍が、性感帯を弄られて顔を赤らめながら、身悶えする姿を見られるという事なのです。嗚呼、想像しただけでも気が昂ぶってきます……。おっと、失礼。ここで正気を失ってしまってはいけませんね。まだまだ語りたい魅力はあります。序盤も序盤でくたばってしまっては、龍もとい竜、要するにドラゴンですね、を愛するものとして失格です。気をしっかり持つとしましょう。

 続いての魅力はその長い体です。自宅で蛇を飼っている方は何となく言いたいことがわかるのではないでしょうか。

 そう、その長い体を巻き付けて甘えてくる、あの仕草です。見ていてほっこりしますよね。胸がきゅんとしますよね。

 ええ、皆さんが仰りたい事も十二分に把握しているつもりです。『体が大きすぎて、巻き付く以前に潰されるだろう』という事ですよね。分かります。

 しかし考えてみてください。体を巻き付けて甘えてくる、その時点でかなり心を許していると取ることができます。そんな親しい存在を簡単に殺してしまえるでしょうか? 答えは『否』です。どれだけ冷酷な人であっても、血の繋がった家族をいとも簡単に見捨てられる人はいません。もし簡単に見捨てる人がいれば、それは最早人ではありません。人の皮を被ったモンスターです。見かけたら即刻駆除しましょう。

 ……少々おいたが過ぎましたね。先程の暴言は忘れて下さい。

 さて、本題に戻ると致しましょう。龍が親しい人間に巻き付いて愛情表現をする。これは中々難易度の高いことです。龍の側は、体を密着させたい。人の側は、何を考えているかいまいち分からない。そんな状況になる訳ですね。

 そして、実際に龍が巻き付くとします。巻き付くといっても、『まんが日本昔ばなし』のパッケージで分かる通り人間の何倍も体の大きい龍です。どちらかと言うと『包み込む』という表現が適切になってくるでしょう。そうなれば、龍の側は殆ど体を人間に密着させられない。人間の側は、自分を気遣ってくれる龍に感謝の念が沸き起こる。龍が甘えた声を出して人間の方へ顔を寄せても、精々が『よしよし』と頭を撫でられるか、逆鱗を弄られるだけでしょう。

 どれだけ強く願っても、体の大部分を人間に密着させることができない。龍にとっては非常にもどかしく感じるでしょう。しかし、どんな方法を取ってもその願いは叶わない。ファンタジーお約束の『人化』でもあれば叶うのでしょうが、現実は非情なものです。そんな都合の良い能力など、持ち合わせている方がおかしいのです。

 叶わない願いというのは、その『叶わない』という事実だけで、心を支配してしまいます。べったりと甘えたくても、決して叶わない。人間には決して伝わる事のない愛情。嗚呼、何と甘美な事でしょう……! ふふふ、考えるだけで……いえ、落ち着きましょう。まだまだ語りたいことはあります。

 東洋の龍の魅力の三つ目、それは『目』です。

 皆さんは寺や神社に描かれた龍の絵をご覧になったことは御座いますでしょうか。例を挙げるのであれば、栃木県日光市にある、日光東照宮の薬師堂、その天井にある『啼き龍』です。

 『啼き龍』なるものが何なのか、それは皆さんがご自身で調べてみてください。ちなみに私はよくわかりません、というより覚えていません。

 さて、この『啼き龍』の絵、画像検索していただければ写真が検索に引っかかりますよね。その絵の『目』の部分を見て下さい。

 どうでしょう。 パッチリしてますよね? クリックリですよね? 可愛いですよね?

 まあ、つまりそういう事です。ちなみに長野県上田市の妙見寺の啼き龍も、お目々パッチリです。とても可愛いです。見ているだけで龍への愛が数回限界突破してしまいそうです。あ、もうすでに二回は限界突破しかけていますね。失礼。

 そして四つ目。ずばり『声』です。これ以外にもまだまだ語りたいことがありますが、それは次回に回しましょう。……次回があるかは分かりませんが。

 先程も語った『啼き龍』ですが、その声も言いようもなく素晴らしいものに御座います。

 実際に体験に行った方は分るのではないでしょうか。あの、室内に鋭く響き渡る、甲高く透き通った、神の如きその御声が、いかに素晴らしいものであるか。あの御声は、幾ら言葉を重ねても表現しきることは不可能です。私はあの御声を一度拝聴させて頂いた際は、その余りの素晴らしさに一瞬トリップしてしまいました。嗚呼、いつかもう一度、もう一度あの御声を拝聴させて頂くとしましょう。

 さて、まだ説明不足ではありますが、続いて西洋の竜、一般的にファンタジー作品で『ドラゴン』として親しまれているタイプですね、こちらの魅力を語っていきたいと思います。

 このタイプの龍は、翼を持ち空を駆け巡る『飛竜』と呼ばれるタイプ、翼がなく、地上を駆け巡る『地竜』と呼ばれるタイプ、東洋の龍と似た姿形で、海や湖等に住む『水竜』と呼ばれるタイプ等、細かく分ければきりがありません。……まあ、この区分は私が勝手に使っているものにすぎませんが。

 西洋の竜……いや、ドラゴンと呼びましょう、その種類を一部挙げてみます。『バハムート』、『ヴィーヴル』、『ヒュドラ』、『ニーズヘッグ』、『リンドヴルム』、『ワイバーン』、『ファフニル』、『サラマンダー』、『ケツァルコアトル』等々、様々居ますね。一部精霊さんだったり創造神様だったりが混じってますけど、ドラゴンの姿をしているのでよしとします。

 これらドラゴンに共通する特徴として、鱗があります。よくファンタジー世界で最高級素材の一種として使われますね。無理矢理はがされるドラゴンがすこし哀れです。

 さてこの鱗、基本的に頑強で、艶やかで、すべすべして、少し冷たくて、といった描写が多いです。爬虫類の肌に似ている部分もありますね。

 爬虫類を飼っている方は当然の様に触っているはずですので、勿論あの手触りの心地よさは理解しているでしょう。ドラゴンは、それを全身で感じさせてくれるのです。なんと素晴らしい。

 次に、その性格です。『ケツァルコアトル』の様に平和主義の存在もいますが、基本的に西洋のドラゴンは凶暴な存在として描かれます。実際ファンタジー作品でも、敵幹部やら裏ステージのボスやらでよくお世話になりますね。

 しかし考えても見て下さい。ドラゴンという存在は人間より遥かに巨躯であり、彼らにとって人間は、私たちにとって小型犬と同じくらいの大きさ、もっと差があれば蟻程度の大きさしかありません。それだけ差があって、ドラゴンに暴れられた時に対抗できますか? 答えは『否』です。ファンタジーお約束の勇者でも厳しいものがあるでしょう。

 さてここで妄想のお時間です。偶にドラゴンが人間と仲良くなる描写がある作品が存在しますね。そういった作品では偶に、人間と仲良くなったドラゴンに対して嫉妬に近い感情を抱くドラゴンがいます。なんだか昼ドラみたいにドロドロしてますね。

 まあ、つまりドラゴン=ツンデレという事です。うん、話が飛びすぎて理解できない人がいると思いますが、その場合は知り合いにこの文を読んでもらって一緒に悩んでください。

 さて、ドラゴン=ツンデレ説が真であると仮定して話をすると、先程のドラゴンが悪であるという言い伝えに一つ新たな解釈が見出せます。それは、人間と仲良くしたいけど恥ずかしいから誤魔化そうとしたら殺してしまった、という事です。

 本当は人間と仲良くしたい、でも恥ずかしい。誤魔化そうとすれば害を加えてしまい、敵認定されてしまう。きっとドラゴンはかなりの葛藤を抱え込んでいるでしょうね。何ともどかしい。

 さて、そんなドラゴンに近づいて、『仲良くしよう』という旨の事を言うとします。きっとそのドラゴンは動揺するでしょうね。自分は敵であるはずなのに、何故近づいてくるのか、と。少し間違えれば死んでしまうのに、と。

 それでも何度も接触し続けたとします。そうすれば、そのドラゴンは恐らく、段々と心を開いてくれるでしょう。恐らく、ではありませんね。絶対です。

 ドラゴンの中で、少しずつその人間の事が特別になってくる。そして、気付けばその人間と離れられなくなるくらい依存する事も在り得るでしょう。どんどん甘えるようになるでしょう。嗚呼、何と可愛らしいのか……! 人間より遥かに大きな体を持ち、威圧感溢れる姿をしているドラゴンが、一人の人間に甘える。考えるだけで愛が限界突破してしまいます。してしまいました。

 ……ふう。では、三つ目の魅力を解説していこうと思います。ドラゴンの魅力三つ目、それは『見た目』です。……え? 東洋の龍に比べて大雑把? いえいえ、そんな事は御座いません。私は、ドラゴンの外見、その全てが魅力的だと言いたいのです。

 まずは顔。基本的に西洋のドラゴンの顔は爬虫類に近いデザインです。ですが、全体が頑強な鱗に覆われて、口を開ければ鋭い牙が姿を現し、側頭部には小さいつぶらな瞳。ファンタジー作品に登場するドラゴンの顔は、大体がいまお話しした特徴を持っています。想像できますか? 無骨な鱗に覆われて、鋭い牙を持った、厳つい顔。その側部に、小さくてつぶらな、キラキラしたお目目です。可愛いと思いませんか? いえ、可愛いのです。異論は許しません。

 次にその体全体です。基本的にドラゴンは体を鱗に覆われています。ですので、この魅力は東洋の龍にも当てはまりますね。

 鱗、というものは基本的に滑らかな手触りとして描かれます。朝日や夕日を浴びて、鱗の一枚一枚がまるで宝石の様に美しく輝く、そしてドラゴンの威厳ある姿をシルエットとして浮かび上がらせるのです。嗚呼、何と素晴らしい。

 次に尻尾です。犬が感情を尻尾の動きで表すのは周知の事実ですが、意外とドラゴンもそのように描かれることが多いのです。喜べば尻尾を揺らすし、寂しかったり悲しかったりすれば尻尾は垂れて元気がなくなる。

 表情が分かりにくいとされるドラゴンですが、尻尾があればすぐに分かります。更に言えば、その巨躯に対してちんまりした尻尾がぴょこぴょこ動くのは、遠目から見れば愛嬌があって非常に可愛らしいのです。嗚呼、素晴らしい。またしても愛が限界突破してしまいました。

 ……はい。次はその背です。こちらは種類によって魅力が変わってきますね。

 まずは空を駆ける『翼竜』です。その背は少し小さいですが、代わりに大きな翼が付いています。空を縦横無尽に駆け巡るための、雄々しい翼。ひとたび広げれば、まるで後輪が浮かぶかのように神々しい姿と成ります。

 次に地を駆ける『地竜』です。こちらは翼という分かりやすいアイデンティティは在りませんが、代わりに無骨でありながら頼もしい、大きな背中があります。例えて言うなら、少し気難しいが頼りになる親戚の叔父さん、とでも表しましょうか。乗るものすべてをしっかりと支え、どこまでも連れて行ってくれる。そんな安心感があります。

 次に水中を駆ける『水竜』です。こちらはジブリの名作『千と千尋の神隠し』のハクを参考にしていただけると分かりやすいかと思います。東洋の龍にも通ずる魅力ですね。『翼竜』や『地竜』に比べて細い代わりに、その背は素晴らしい曲線美を見せてくれます。大人の女性の様な、妖艶な雰囲気を纏っているのです。私自身、ハクを見た時は一瞬理性が飛びました。そう、『水竜』には、『翼竜』や『地竜』の様な雄々しさではなく、女性的な美しさ、艶やかさが存在するのです。

 そして次に下腹部。これは最早『魅力』ではなく『性癖』の話ですね。ええ、分からない方や分かりたくない方は無視していただいて結構です。以前友人に勢いで話した際、一週間ほど距離を取られましたから。異常性はよく理解しているつもりです。だけど、これだけは言わせてください。スリットはえっちなんです。

 ……まだまだ語り足りませんが、これ以上話していると理性が飛んでしまいそうなので、一旦打ち止めと致します。いかがでしたでしょうか。ドラゴンの魅力、分かっていただけたでしょうか。

 それでは最後に、合唱。

 ドラゴンは格好いい! ドラゴンは可愛い! どらごんはえっち!

 有難うございました。ドラゴン万歳。

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