三姉妹の旅路は続く

 そこには感情を手放した、至るところがぼろぼろの、赤い着物が特徴的な日本人形が残っていた。


「無事に逝けたようですね」


 悲しみを隠しきれない声音で、サチが呟いた。その呟きにアイとメイが頷く。


 しばらくの間、彼女たちは感情人形フィーリング・ドールだった日本人形を見ていた。


感情人形私たちってやっぱり、不思議で儚いわね。さっきまで話していたのに、今は何も反応を返さない、ただの人形になっちゃうんだもの」


 日本人形の手を握りながら、メイが言った。


「その儚さが良いんだと私は思います」

「え?」

「儚いからこそ、感情人形私たちは一瞬の煌めきや感情が美しいんです」

「……流石」


 そして3人はぼんやりと辺りを見渡す。終わってしまった、世界を。


「でもさ、ソフィアって名前には驚いたよねー」

「そうね」

「綺麗な黒髪をしてるのに、“ソフィア”なんだもん」


 もっといい名前はなかったのかなぁ、と何気なくアイは呟いた。


「でも不思議と似合ってましたよね。なんか、馴染むっていうか」

「それはそうかも。ソフィアって語感、アイ好き」

「付けた人はそのことをなんとなく、わかっていたのかもしれないわね」


 ソフィアという名前の日本人形を見ながら、サチたちはソフィアという名前を胸に刻んだ。


「さて、そろそろ行きましょう」

「そうね」

「出発進行〜」



 始まりの魔女・テイルに創られた、特別な感情人形フィーリング・ドールの三姉妹。

 彼女たちは終わった世界を旅をする。彼女たちの仲間たちと会うために。



 三姉妹の旅はまだまだ続く。

 世界に感情人形フィーリング・ドールがいなくなる、その時まで。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る