偏見捜査シリーズ

ピチトリ

第1話 ホスト殺害事件


公園の敷地内で男の死体が見つかった。

要請を受けた偏見かたみ警部補が現場へ向かった。

到着した偏見かたみは倒れている人に手を合わせ、状況の説明を受ける。


「偏見警部補、お疲れ様です。被害者は、染谷 俊。34歳。都内のホストクラブ勤務です。」

浅見刑事は淡々と説明する。


「そめや しゅん…ホストやるために生まれてきたような名前だな」


「第一発見者はこちらの木村 浩介さん。会社員です。夜のジョギング中に発見し、110番通報があったそうです。」


「こういうのは犯人が第一発見者を装って通報したりする…だがこいつは殺人ができるような顔をしてないな。そして、こいつには動機が、」


「なさそうですね。」


「その通り。なさそうな顔だ。だから、こいつは犯人じゃない。もう帰っていいぞ」


「死亡推定時刻は昨晩19時頃。死因は、このブロックによる撲殺だと思われます。この角のところでゴツンと、即死ですね。」

鑑識が顔を上げ言う。


「ということは、計画的な犯行ではないな。突発的なものだ…争った形跡はあるか?」


「見たところなさそうですね。公園ということもあり、下足痕の特定は難しそうです。」


捜査は難航すると思われた。

しかし偏見警部補が口を開く。


「…よし、わかった。ガイシャの客で年齢は30〜40の独身女、特に肥満体型の人間を洗え」


「え、どうしてです?」


「ホストに通うような女に計画犯罪なんてできない。そして30〜40の独身女はなんとしても結婚しようと焦っている。そこでホシはガイシャにターゲットを定めるが結婚を断られたんだろう」


「なるほど、肥満体型の女性に絞ったのはモテないという条件のためですね。」


「それもあるが、今回はブロックによる撲殺だ。こいつみたいなひょろひょろとした男でも一発で仕留めるには相当な力が必要だ。だから肥満体型の女性である可能性が高い」



「ガイシャの客で肥満体型の30〜40代の女性を洗い出しました。4人ほどいましたが、最近店に来たのは、この〈牛山うしやま 絵里えり〉という女です。」

顔写真を見せる。


「ビンゴだ。こいつがホスト殺しの犯人で間違いない」


「どうして分かるんです?」


「状況的に明らかに黒だということもあるが、この顔は…やる顔だ。頭は弱そうだが、牛山という苗字、強そうだ。人ひとり殺せる力はある」


「たしかに、そんな見た目をしていますね。当たってみましょう。」



「牛山 絵里さんですね?警察です。あなた、昨日の19時頃、どこで何してました?」


「わたしぃ、何もしてませんよぉ〜?昨日ぉわぁ〜仕事おわってぇ、すぐ寝ちゃったのぉ〜」


「(浅見、こいつだ。玄関マットが汚い。玄関マットが汚いやつは人殺しも厭わない)」


「(それは納得できます。玄関マットが汚い女はモテるわけがないので結婚もできないですもんね。)」


「どぉしたのぉ〜?刑事さん〜…?まさか、わたしが殺したって言いたいの!?」


「(口調が変わったぞ、間違いないな。状況によって口調を180°変える女は人殺しも厭わない)」


「(そうですね。今まで挙げてきたホシも取調室で全然態度が違いました。)」


「刑事さん、違うの!あいつがいけないのよ!」


「…思慮の浅い人間は黙ってれば自供し出すと決まっている。こいつは太ってるから走っても逃げ切れない。応援はいらない」


「さすが偏見警部補!」



女は時速80キロメートルで走って逃げた。






この物語はフィクションです。

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偏見捜査シリーズ ピチトリ @PitchGuyBird

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