遠坂永司が自分と瓜二つの重病人・近藤舜一に体を貸す。「体を貸す」というのは、他人の意識データを宿し、肉体に同居させるというもの。舜一は永司の体を借り、女性に会いに行っていたのだが、その理由は――舜一に悪意があるのか?展開が読めず、とてもドキドキして読みました。SFの設定に恋愛や友情を通して、自分を見つめなおすテーマも込められており、至極の短編となっています。後味がとてもいい作品なので、ぜひお読みいただきたいです。自分もこんな作品が書きたいなと思いました。無理だけど。
顔がそっくりな二人の男性は、あるきっかけで出逢い、契約を交わし、『交換』することで手に入れたいと懇願していたものを手にし合う。でも、手にした先に見えたものは、満足感よりも別の真実だった。鴨志田さんの切り取った『羨望/隣の芝生は青い』気持ち──不思議な体験として是非ご体感いただきたい!
他人の芝生が青いと思うのは自分勝手で簡単過ぎる。しかし自分の芝生を青いと思うことは自分の勝手が利かず、難しすぎる。「汝我を知れ」という言葉がありますが、決して身の程をわきまえろという意味ではありません。ネガティブな面ばかりでなく、自分を良い意味合いでとらえなさい、というメッセージを感じました。人間のリアリティが描けていると思います。この作品を読んだ後、私は次のように思います。相手が持っているものが欲しいと……本当にそんなことが言えるでしょうか?
僕たちは芝生の青さに気づけないホントにそうだと感じさせられました。自分に自信がない人、他人と自分をついつい比べてしまう人に読んでもらいたい作品です。
2人の主人公は、とある理由で体を貸す契約をする。そして、徐々に互いの意識や記憶が絡み合い、1人の女性の姿が現れる。切ない愛の物語でもありながら、何かを誰かに託す大切さを考えさせられる最高のSF小説です。是非、ご覧下さい。