実に面白い発想です。同じカレーでありながら国ごとに食べ方や味は千差万別。その国の歴史や文化が色濃く表れ、それぞれ独自の個性があるのものです。では、それら各国のカレーを食べ比べてどれが一番を決めようとしたら…いったいどうなるのか?
イギリスやインドのカレーについては有名ですが、フランス、中国、イタリアとあまりカレーに馴染みが無さそうな国が次々と名乗りをあげる点が新鮮で魅力的でした。
そして、料理対決に欠かせないウンチクの量も実に「判っている」配分です。
長文で延々と説明されてしまうとテンポが悪くなってしまうし、面白味に欠ける。それでも短編で面白い料理対決を描きたいのならどうすればいいのか?
答えはキャラクターとリアクションです。
この作品では各国の『偉人』に料理を語らせることで少ない台詞の中から強烈な個性を引き出すことに成功しているのです。誰もが知る歴史の有名人なら、あらためて説明せずとも皆が楽しめますからね。
読んでいるとカレーが食べたくなること請け合いの「一味ちがう」料理対決小説。グルメ系統の作品が好きであれば、是非!
インドを起源に、世界各地で独自の進化を遂げてきた料理。
その頂点を決めようと、会議が開催された。各国の、歴史上の偉人たちによる、究極のカレーを決める、そう、カレーサミットなる会議がここに開幕した。
もう、この設定だけでもおもしろいというのに、自国のカレーを推す人たちが、またおもしろい。更に、それらを審査しようとするのは、インド出身のあのお方☆
その歴史的な背景と、その風土に合った食材と、その国の料理人の威信と、その情熱が込められたここに集められたカレーは、実に美味しそうだ。
各話を読むと、自分でも再現できそうなところが不思議でならない。
この歴史書(?)を読むと……、「そうだ! 今日の晩ご飯は、カレーにしよ!」って思えるかもしれない。
さぁ、そこのあなた! 一番美味しいカレーは、どこの国のカレーだと思いますか?
カレーを軸に歴史や文化を横断しつつ、舌だけでなく、良い感じに知的好奇心までも華麗に刺激してくれます。
審査員は誰もが知るあの方! だからこその、出されたカレーを味わった時の感覚の体現。これは目が離せないと言うか、癖になります。
名だたるプレゼンターたちが紹介するカレーは、思わずどれも舌鼓をうってしまいます。私自身は二番手と三番手の間で揺れる気持ちを、次に現れた者の計に華麗に奪われてしまいました。
しかし最後に現れたカレーなくしては、審査員の心の安寧はもたらされず、かの審査員だからこその華麗なる和合の道でした。
カレーだけではなく、改めて各国の食に触れたくなりました。
是非一度味わってみてほしい作品です。