413.自由気ままだが居心地の良い関係だ
頭を悩ます問題ばかり山積する状況に、眉を顰めた。謁見の大広間に集まった魔族は、思い思いの場所で寛いでいる。
臣下として控える右側に立つのはアガレス、アスタルテのみ。客人を迎える正面の絨毯上に、クッションを積んだ双子とククルが寝転がる。這いずって上司の元へ向かおうとするマルフォスが、ククルに引きずり戻された。
長椅子を置いて左側に腰掛けるのは、オリヴィエラとロゼマリアだ。椅子の影にお座りするマルコシアス親子。入り口付近の離れた場所に魔術師の兄妹が立っていた。手招きするアスタルテに従い、数歩ずつ近づいているがまだ遠い。
クリスティーヌは階段の途中に黒猫と座り、その脇でウラノスも階段を椅子代わりに足を伸ばした。アルシエルは正面の扉の脇に、何やら捕まえた獲物と一緒に控える。ヴィネも一緒だった。
リリアーナは膝に手を置いて、オレの足にしがみつく。纏まりのなさはいつのことだった。咎めたところで、品よく振る舞うのは無理だろう。何しろ魔族自体が、品行方正から程遠い種族なのだから。
「報告から始めますが、よろしいでしょうか?」
口火を切ったのはアガレスだ。人間の身で、この上位魔族の群れに紛れる度胸は賞賛に値する。マルファスは何とか隅へ逃げ込もうと足掻いているというのに、堂々とした態度は素晴らしい。大仰に頷いて先を促せば、アスタルテが一歩前に出た。
「今回の攻撃……いや、騒動への対応ご苦労だった。主犯格と思われる魔族を捕獲したヴィネ、アルシエルから報告してくれ」
当事者に話させるのは、二度手間と勘違いによる事実誤認を防ぐ。報告しなれていない者には緊張を強いるが、この2人なら問題あるまい。
「僕がミミズの処理を終えたところに、突然現れました。いきなり襲いかかってきたため、自己防衛のために迎撃。体中に根を張った木はその時の拘束具です」
ヴィネは淡々と事実のみを語った。なぜ襲ってきたか、勝手に推測を交えないところが好ましい。微笑を浮かべて頷いたオレに、目を輝かせた。何か欲しい褒美でもあるのか。後できちんと聞いてやろう。
捕らえた男は木の根で縛り上げられ、その先をアルシエルが握っていた。運ぶのはアルシエルが担当したようだ。
「運んだだけなので、この件についての褒美は不要です。ヴィネ単独の功績としてお考えくださいますよう、お願いします」
控え目にそう告げたアルシエルは、ヴィネに穏やかな目を向けた。師弟関係にあると聞いているが、上手くいっているのだろう。互いに高め合う関係は利が大きく、将来の飛躍のきっかけとなろう。他者の功績を奪おうとする輩が多い魔族だが、我が配下はうまく機能しているようだ。
「それでは……」
続けようとしたアスタルテが、怪訝そうに言葉を止めた。
この場にいなかったレーシーが、珍しく静かに入ってくる。甲高い歌声がないと、幽霊のようだった。具合でも悪いのかと尋ねる視線を集めた彼女と手を繋ぎ、夢魔の魔王が囚われの男の前に立つ。
「ベルゼブブ、後ろに誰がいるの?」
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