224.自尊心を傷つけない選択

 ウラノスの魔法陣は彼の魔力量に合わせて調整されていた。その制限を取っ払って使用したが……原型となった魔法陣を改良すれば効率よく使える。


 アナトが来た時、ウラノスが最初の蘇生で失敗したのではなかった。目的が違う魔法陣を流用したため、非常に効率が悪かったのだ。彼の魔力が拡散した結果、最終的に足りなくなって途中で断念せざるを得なかった。


 光る魔法陣を空中に映し、いくつか変更を加えた。互いに矛盾がないか、わずかな魔力を流して確認する。スパークした部位を修正し、再度テストした。数回繰り返したオレは、この魔法陣の仕組みを大まかに理解する。


 蘇生魔法陣ではない。作られた目的は他人に魔力を注ぐのではなく……誰かと寿命を分かち合うものだった。

「……来た時、私もこんな状態だったんだね」


 ぼそりと呟いたアナトは、覚悟を決めた眼差しでオレの目を覗き込む。大切な片割れを預け、何があっても受け止める。一見すると魔族の特徴を持たないアナトは頷いた。


「ねえ。2人一緒なら、もしかして……アスタルテも」


 嫌な予感に襲われるオレに、現実を突きつけるように呟いたアナトの表情が引きつる。一先ず順番に片付けようとする指先で、先程使った魔法陣を呼び出した。展開する魔法陣に新たな範囲指定を追加する。


「サタン様、足りる? 魔力余ってるよ」


 自分の魔力も使えばいいと自ら口にしたリリアーナの頭を、いつも通り撫でようとして手を止めた。ロゼマリアにもらったのか、薄いピンクの花をかたどった髪飾りをしている。一息置いて、頬を撫でてやった。


 目を見開くが、すぐに尻尾が左右に揺られる。表情より感情を示す尻尾が後ろに立つクリスティーヌを叩いているが、本人はそれどころではなかった。役に立ちたい一心で見上げる少女に首を横に振る。


「まだ余力がある」


 多少のだるさは感じるが、魔力を放出しすぎた時の脱力感には程遠かった。何よりリリアーナでは明らかに足りない。無駄に自尊心を傷つける必要はなかった。


 誇り高いドラゴンの申し出を退け、オレは魔法陣へ手をかざす。吸い込むように奪われる魔力がじわりと温度をあげた。


 バアルはアナトと同じ魔力量だ。双子神の2人に違いがあるとすれば、瞳の色が逆な事と性別くらいだろう。考え方も共有できるため、彼と彼女の魔力は常に共有されてきた。


 世界が分かたれた時点で一時的に切れた絆も、再び繋がったようだ。回復したはずのアナトが顔をしかめて、頭痛を耐えるように額を押さえた。魔力が不足したバアルへ向かい、アナトの魔力が流れるのが見える。


 レーシーが心配そうにアナトの肩を抱き寄せる。回復を願う歌を細く高く歌いながら、己の魔力を上手に流し込んだ。レーシーが同族でもない者へ魔力を分け与える事例は、聞いたことがない。


 同調するレーシーが倒れる前に、魔力を注ぎ切る必要が出てきた。多めに流したその時、パチンと何かが弾ける。ククルの首にかけたペンダントの石が粉々に砕ける音だった。








*********************************

Σ(´ω`ノ)ノ 「魔王なのに、勇者と間違えて召喚されたんだが?」準大賞、受賞!?


エブリスタで、「あなたの小説が5P分漫画になるファンタジーコンテスト ドラゴン・モンスターが登場するファンタジー小説を募集」に申し込んでいたのですが(*ノωノ) 準大賞をいただきました!! カラー表紙とキャラのイラストが貰えます゜゜+.(っ´∀`)っ゜+.


イラストは「ヤマトイヌル様」https://twitter.com/inuru_yamato にご担当いただけます! 名誉じゃ、栄誉じゃ(((o* ̄  ̄)oオシリフリフリ♪(((o* ̄  ̄)oオシリフリフリ♪


カラー表紙がいただけますので、届きましたら表紙イラストの公開を行います(*ノωノ)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る