第12話 すべての終わりははじまり
それから約一ヶ月後。
両親をはじめ美月ちゃんや学校関係者に
てっきり俺の記憶からも削除されると思ったんだが、こうしてしっかり覚えている。
−−もしかしてあれは夢だったんじゃないか?−−
って思うくらい、充実した生活を送っている。
「
「いいなぁ
「ヘヘッ、いいだろー」
俺も臆面もなく自慢する。
「でもよう、ただの幼なじみだよね?どっちか
なかなかイタいとこついてくる…。
「いんや…」
なんとなく、流れ的に今さら告白なんてできない雰囲気なのだ、
毎日登下校して
幼なじみで毎日当たり前に顔を合わせてるだけに、かえって決めの言葉は言いづらかった。
「それじゃあつき合ってる訳じゃないんだね、俺、
「よ、よせよ!」
思わず声を荒げる。
「ムキになんなよ、冗談だって。こうでも言わなきゃ危機感持たなかったでしょ?美月ちゃんかわいくて狙ってる男子多いんだからさー、少しは対策考えたら?」
その夜のこと。
自分の部屋がある二階の窓を開け空を眺める。
−−あれ、今日は満月か?−−
夜空にポッカリきれいな満月が輝いている。
今日は金曜日だから告白するなら明日の土曜日にするつもりだった、
万が一ダメだった場合次の日学校休みのほうが少しでもダメージが少ないと思ったから…。
でも今日みたいにきれいな満月のほうがロマンチックかも!なんてガラにもないこと考え、居ても立っても居られなくなって
−−えっと、なんて呼び出そうかな、月がきれいだから一緒に見ようはキモいかな?−−
あれこれ考えていたら、窓から青紫色の光が射し込んできた。
−−なんだ?−−
再び窓を開ける。
狭いベランダがあるんだが、そこに存在するはずのない人物が立っていたんで、
俺は悲鳴をあげた。
「ふおッ!リ、リラッ!なんでここに!?」
そう、虫食いに遭って目の前から姿を消したはずのリラがにこやかに立っていて、次の瞬間抱きついてきた。
「レイジ〜!!」
ふわりと甘い香りが漂う。
全身出来物だらけになったと聞いていたが跡形もなく、むしろ一ヶ月前よりさらに美しくなっていた。
「な、なんでここに!?」
俺は体からリラを引き剥がす。
「治ったのよ、レイジのママさんのおかげさまで!」
リラは嬉しそうに青紫色の瞳をキラキラ輝かせる。
「うちの母親?」
あいつ、一体何をしたんだ…。
ライラックが虫食いになってるのを発見した母親が悲鳴をあげたとこまでは覚えている、だが、その後何かしたのか?
俺は苗木を植え少し水をやってたくらいで、リラ現れてからは一切タッチしていなかった。
「ええ、レイジのママさんね、一生懸命ダンゴムシ退治してくれてね、私にタップリ栄養剤を与えてくれたのよ、ほら、私キレイでしょう?今満開なのよ!」
そう言ってクルリと一回転して見せた、回ったときに何やらキラキラしたものが発せられたような気がするのは気のせいか?
リラの周りにほのかに光が発せられているようにも見え、一ヶ月前よりさらに美しくなっているのは確実だ。
庭に関心ないから気づかなかったが、リラが言うことが事実なら今ライラックの花が満開ということか?
「私もうダメだと思ってたから感動しちゃってさ、何としてもママさんにお礼がしたいと思ったの」
「ふーん、じゃあそうすりゃいいじゃないか」
リラを美しく復活させたのは母親なのになぜ俺の目の前に現れたか、理解できなかった。
「でね、ママさんの夢枕に立ったのよ、なんでも望み叶えますって」
「ふ〜ん…」
なんだかイヤな予感、コイツが人の夢枕に立てる能力があるとは知らなかった…。
「そしたらなんて言ったと思う?レイジにかわいいお嫁さんがきて一緒に暮らせますようにって願ったのよ!」
「なんだって!?」
俺は大声をあげた、マジかよ!
俺にかわいい嫁でなんでオマエがしゃしゃり出てくるんだ、しかも結婚後も親と同居だなんてあり得ねー!と思ったが、あまりのことに言葉にできなかった。
「今度こそレイジと一緒になれるってなんかもう嬉しくて嬉しくて…オベロン様もティタニア様も賛成してくれたから、怖いものないわ!」
リラはそう言ってまた俺に抱きついてきた。
俺はあまりのことに脱力し、動けなくなってしまった。
どういうことだよ、これから
ジャマすんなよ、ジャマすんなよ、ジャマすんなよ…。
妖精退治の方法を本気で探さなくちゃ…。
そんなことでグルグルと考えを巡らせた。
妖精の王たちに祝福され、今後はカノジョ
〜終わり〜
押しかけカノジョが妖精な件。 帆高亜希 @Azul-spring
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