第39話 冒険者アイリ 誕生?
「今、決めましたわ!!。私、冒険者になります!!」
えぇーーーーーーーーーー!この人、何言っちゃってんの!?
あんな戦闘があった後なのに、それも自分が狙われたってのに、冒険者になりたいって!?
あれ?、だってここに来る時に『私はいずれ結婚するからそれまでの間、色々な見識を深めたいの』って言ってたよね?。冒険者になっちゃったら、結婚なんてそうそう出来なくなるんじゃないの・・・?。そもそも、領主の長女が冒険者になっちゃ駄目だろ?。
ってか、何であんな怖い
ま、俺がどうこう言える立場じゃないけどさ~・・・
「あ、あの、アイリ様?。冒険者って・・・どういう事ですか?」
「冒険者とは、己の力のみで数多の困難を解決していく者達の総称です!」
「い、いや、そういう意味じゃなくて!!。どうして、冒険者になりたいって思っちゃったんですかーー!?」
「そのまま、その言葉をアル様にお返しいたしますわ。貴方は、どうして冒険者になりたいと思ったのですか?」
「えぇ!?、質問に質問で返されちゃったよ、ぉぃ・・・。ま、まあ俺はそれしか生きて行く道しかなかったんですけど・・・」
「ふむ、それしか道が無かった・・・なるほど。確かに私には、いくつかの生きて行く道があります。それは自分でも分かっておりますわ。ただ、その中に冒険者という道が増えただけです。この道は、私が今まで想像すらしなかった未知なる道です。あ、ダジャレではありませんよ?。
それまで私は結婚をし妻になるという、相手ありきの存在にしかなれないと思っておりました。しかし、冒険者達は自分の力を信じて鍛錬し、冒険し、己の道を切り開いていくと感じたのですわ!。
そうなのです!、わたくしは今こそ自分の力を試したいのです!、ビビビッと来たのです。それになんか楽しそうだし・・・フフ。そうと決まりましたら、早速お父様にご報告しなければ!!。さあ皆さん、急いで戻りましょう!!」
な、なんかエラい事になりましたなぁ・・・ハァ・・・ってか、最後の方に本音出ちゃってるよね!?
これ、俺は悪くないよね?、うん、間違いない!。だから、この件の領主への報告は俺じゃなく、騎士団の人達にお願いして・・・。
「さ、アル様!。何をしているのです?。善は急げですわ!、ささっ!!」
「い、いや、何が善なのか分かりませんし・・・第一、ご領主様がお許しにならないかと・・・」
「大丈夫です、その点はご安心ください!。お父様は、わたくしにはと~っても甘いんですの!」
「そ、それに冒険者になるといっても、剣技や魔法の心得が無いと無理だと思いますが・・・」
「そ、そうですよ~アイリ様!。『はい、冒険者になります!』って訳にはいかないんです~!。しかも冒険者って、生死に関わる依頼も多いんですよ!?」
「その通りだ。そう簡単に決める事ではないと私も思う」「アイリ様~?、冒険者って大変なんですの!」
エメルダもリオノーラも、エリスでさえアイリ様に考えを改めて貰おうと必死だ。
「ご心配無用ですわ。わたくし、これでも剣の修業は幼い頃より嗜んでおりますの。魔法も回復系の素養があるそうですし、いずれ修めたいと思っておりますわ!。それに、冒険に危険は付き物。それを恐れていては何も出来ませんわ!」
もう、冒険者になったつもりになってますな、このお嬢さん。
なんか、面倒くさくなってきたから、もうそれでいいや。
どうせ、俺が面倒みる訳じゃないし―—「と言うことで、これからもよろしくお願い致しますわ、アル様!」は、はぁーーーーー????
そういうと、アイリ様は俺の手を握って目を見つめてきた。
「えええええええ?、アルさん!どういう事ですか?。というか、いつの間にそんな関係になったんですか!?。あたしにだって、たまにしか手を握ってくれないのに!」
「お、俺が知るわけねーだろ!?。アイリ様が勝手にやってるだけだってば!。それに、今回は俺は全く活躍してないし!!」
「ではアル・・・、お前は天然の誑しって事になるのか?」
「そ、そんな・・・アルさんって、誑しだったのですか!?、ショックなのです!不潔なのです!女の敵なのです!!」
お、お前らな・・・俺が一番困ってるんだぞ!?。
何でこんな展開になんだよ、全く・・・。今でさえ彼女達三人で大変なのに、これ以上増やしてたまるか!。
「あのアイリ様?、よろしくお願いしますって意味が分かりかねますが・・・」
「そのままの意味ですわ。わたくしを冒険者にして欲しいのです。そして、わたくしもパーティメンバーに加えて欲しいのです」
「こ,こんな事をいうと失礼に当たりますが、お、お断り致します!。私達は弱小パーティですので、もし・・・もし仮に冒険者になれたとしても、ここではなくもっと強いパーティの方が良いと思います!」
「な、何でですの!?。わたくし、何かアル様のお気に障る事でもしまして?」
「いや、そういう事ではなく・・・。と、とにかく、今は街に帰りましょう。話はそれからで・・・」
もう何か疲れたから、一旦帰りろう・・・帰って、ベッドで休みたい。
さっきの戦闘で打ち身が出来てたりでアチコチ痛いし、何より精神的に疲れた・・・。
その後、俺達は馬車まで移動し、捕縛した敵は馬車にロープで結び、街に戻る事にした。
◇
捕虜が徒歩の為に少し時間が掛かってしまったが、無事に街に着いた俺達は捕虜を街の憲兵に引き渡し、その後ご領主様の屋敷に向かうことにした。騎士団の方達は、一足先に屋敷に戻ったので自分達の仕事に戻ったらしい。
盗賊達の雇い主とか目的を少し知りたいと思ったが、厄介事に巻き込まれたくないし、このままスルーしておくか・・・
俺達はご領主の屋敷に向かったのだが、その邸宅は一般家庭よりは二倍くらいの大きさがある。ただ、豪奢な感じではなが、しかし、使っている建材は高そうな装飾や良い材質と分かる物が見てとれる。
俺達はメイドさんに案内されて、ある一室に案内された。
そこは三十人ぐらいは普通に入れそうな部屋で、シーツを被せてある長テーブルが二列並び、椅子も二十脚ほど並べられている。
そこに案内され座るように勧められたので、俺は遠慮無く座り部屋の中を眺めてたら、俺達が入ってきた扉とは別の扉からご領主様と思われる人とアイリ様が揃って入ってきたので、俺達は慌てて椅子から立ち上がり軽く頭を下げる。
「ご領主様、お初にお目に掛かります。この度、ご息女アイリ様のご依頼で遺跡までの警護をしておりました、冒険者パーティのリーダー、アルと申します。こちらにいるのは、パーティメンバーで左からエメルダ、リオノーラ、エリスと申します」
「エメルダです」「リオノーラと申します」「エリスなのです」
「ご丁寧にありがとうございます。私はこの街の領主をしております、コルネリオ・エルベールと申す者です。この度は、うちの娘を助けて頂いたようで、本当にありがとうございます」
「いえいえ!、私達は仕事として当たり前の事をしたまでです!。ですから、お礼の言葉など私達には不要です!」
「そうはまいりません。アイリは何と言うか・・・その、お転婆で大変ではなかったかな?。一人娘なので我儘に育ってしまい・・・お恥ずかしい限りです。でも、そんなあの子でも私達には大事な娘なのです」
そういうと、コルネリオ様は苦笑しながら、ハンカチで汗を拭いていた。
まあ活発な人だとは思ったけど、それほど恐縮するほどの事は感じなかったが・・・
それから、ドワーフの遺跡にて賊に襲われたこと、アイリ様は依頼の相手は前領主のコリンズではないかと踏んでいること、賊は全て捕縛し街の憲兵に引き渡した事などを簡潔に報告した。
「コリンズですか・・・、奴ならあり得る事だとは思います。元領主でしたが、賄賂などの不正行為が多く失脚した後に私が引き継いだのですが、私が密告したと思い込んでるようですな・・・。犯人達には、この後しっかり事情を聴くことになりますな」
「なるほど、そんな事が・・・。それでアイリ様はそう思ったのですか、なかなか聡明な方ですね。それに、好奇心旺盛で・・・色んな事にチャレンジしたり・・・」
俺はチラッとアイリ様に目をやると、相手もこっちをニヤリとした目で見てきている。なんだ、あの目・・・?、嫌な予感がビンビン感じるんだが・・・?
「アル様にそう思われていたなんて、わたくし嬉しい限りですわ。そこで、お父様・・・」
「ん?、どうしたアイリ?」
「わたくし、冒険者になろうと思うんですの!」
「なっ!?冒険者!?。お、お、お前は何を言っているのか、分かっているのか!?」
「勿論ですわ。わたくしは今まで色んな見識を深めようと、色々な事をしてきましたわ。しかし、それは表面的な事でしかなかったのです。自分の知識欲を満たすためだけの、自己満足だったと分かったのです。
でも今回の戦闘場面に遭遇して、自分の浅はかさを感じました。わたくしも自分の命を懸けて、何かを成し遂げたい、各地を渡り人々と触れ合い風土を感じたい。そういう気持ちが湧いてきましたの。それはいつか、この街や人々達の為になると信じております!」
ア、アイリ様・・・・だいぶ熱弁をふるっているが、正直何を言いたいのか俺には良く分からなかった。が、要は冒険者になってあちこち行ってみたいって事なんだろうな~・・・
ま、こんなんじゃコルネリオ様だって許るわきゃないだろう、多分。
「ア、アイリ・・・・・・お、お前・・・・・・そこまで、この街の事を考えてくれていたいのか・・・ううぅ」
あ、あの・・・ご領主様・・・・???
この流れは、とても嫌な流れなのですが・・・
「アイリ、今はお前の好きなようにやってみなさい。そして、この街をもっと良くしていってくれ。これからはお前達の時代だ。どんどん新しい感性を取り入れ、街を発展させるんだ!」
「はい!、お父様!!。わたくし、頑張りますわ!!!」
二人は、手に手を取って涙を流しながら見つめ合っている。
この街、本当に大丈夫だろうか・・・?ちょっと、本気手心配になってきたぞ?
「と言うことで、アル君。うちの娘の面倒をよろしく頼む!!。君なら安心だ!!」
・・・・・
・・・
・
「はぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーー??」
最底辺のソロ冒険者、パーティを組む~亜人の女の子と戯れたい~ 士郎 @shirow1972
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