第38話 戦闘終了
「アル、お前は三人を守ってくれ。心配するな、こいつは私が・・・斬る!」
「し、しかしそれでは・・・」
「早く三人のとこに行け!。それとも、私が負けると思っているのか?」
リオノーラは強い言葉で言った後、俺をチラリと見やりニヤリと笑った。そしてすぐに前を向いた彼女の目には、既に目の前の男しか見えていない様だ・・・
自分を不甲斐ないと思いながらも、ここに居たら二人の邪魔になるだけなので、しぶしぶ後ろの三人の前まで移動する。
「仲良しごっこは終わったか?」
「ふん・・・相変わらず人を不快にさせる男だ・・・。貴様こそ、この世に言い残す言葉は決まったか?」
「おい、エルフの女・・・俺をムカつかせるなよ?。折角、俺が優しく可愛がってやろうかと思ってるんだからな・・・・」
「貴様はさっきから何を言っている?。この体を貴様の好き勝手にさせる訳ないだろう・・・。貴様はここで死ぬんだからな」
「ほぉ~~~、随分自信満々じゃねーか・・・。ま、そうでなきゃその後が楽しめねぇしな・・ククク」
「つべこべ言わずに、さっさとかかってこい。それとも、ここに来て急に臆したか?」
「あ”!?、テメーー!調子こいてんじゃねーーーーーーーぞーーーーーーー!!」
リオノーラが煽るようにいうと、男の顔がカッと怒りの表情に変わったかと思った瞬間・・・
先程、俺が目にした驚くほどの移動速度をもってリオノーラに接近した男は、右手で殴り掛かってきた。
男はまだリオノーラを凌辱するつもりなのか、殺さないためにシミターは腰の鞘に仕舞われている。
だがしかし、彼女はそれを体をスウェーさせて難なく躱す。しかし、男はそれを読んでいたいのか、彼女の前を通り過ぎる際に左足で回し蹴りを繰り出した。その動きは、まるで流れるような動作で無駄が無いように見えた。
さすがのリオノーラも避け切れず両手をクロスしてガードしつつ、後ろに飛んで威力を殺している。流石にこれには、男も眉をひそめた。
「ほぉ~、口だけじゃなかったわけだ・・・。なかなかやるな~、何か楽しくなってきたぜ!」
「こちらは楽しくなどないがな・・・、煩わしいので早々に片を付けさせてもらうぞ」
そう言うとリオノーラは、レイピアを抜き左下に下げ、体を
「ほ、ほう・・・珍しい構えだな・・・どこの流派だ?」
「これから死ぬ貴様が、知る必要はあるまい?」
そう言うが早いか、男ほどでは無いがかなり速い動きで接近して、下から剣を切り上げる。その速さたるや、俺達の目では捕らえられない程であった。
しかし彼女の間合いではなかったからか、それとも男がバックステップで躱したからなのか、その剣先は相手には僅かに届かなかった・・・・・ハズなのだが、男のプレートメイルに守られていない肌から、鮮血が飛び出た。
「がはぁ・・・・な、なんだ?。何をしやがった!?」
「ふん、私は何もしておらんぞ。ただ剣を振っただけだが?」
「バ、バカな!。それだけで、切れる訳ねーだろ!。そうか、貴様・・・魔法使いやがったな!?」
「残念ながら、戦闘しながら魔法の詠唱などという高等技術は、私には出来ん」
「斬撃だけで斬る!?。そ、そんな事出来るわきゃねーだろ!!」
「ぎゃあぎゃあ煩いな、出来たから斬れたんだろうが・・・。もう貴様の様な下衆と話すのも疲れた・・・。そろそろ死ぬがいい」
それからのリオノーラは、凄まじかった。剣を振る数だけ、男の体に傷が増えていく。男も自慢のシミターを抜き、彼女に振りかざし反撃をしてはいるが、それ以上に彼女の正確な剣戟にもやは男は、凌ぐだけで精いっぱいの様相だ。
しかし、そこは男と女・・・力や体力の差がある為、リオノーラにも疲れが出てきたのか剣技にキレが無くなってきた様に思えたその時、ついに、男は足の腱を切られて動けなくなった。それまでもかなりの傷を負い、動くこともままならなかったのだが・・・。
俺達は、その光景を茫然として見守っていた・・・いや、見るしか出来なかった。いつの間にか、アイリ様やエメルダが傍にいた事さえ分からなかったぐらいだ。
そして、騎士団達も負傷者を担ぎながら、捕らえた敵を紐で括り引きずってきて、彼女と男の戦いを見守っていた。
そして少し息が上がっているリオノーラは、動けず謝罪の言葉を並べ立てる男に、止めを刺そうとしていた。
「た、助けてくれ・・・頼む!!。俺は命じられて襲っただけなんだ!、俺は悪くねぇんだよ!。貰った金はあんた達に渡すから!だから殺さないでくれ!!!、頼むよーーーーーーーー!」
「なら、貴様に問う!。お前は、そう言った人々を一度でも助けたか?」
「・・・そ、それは・・・・・・・ない。無いが、これからは心を改めるから!。頼む!!」
男はそういうと、土下座をして頼む。
既に男の周りは敵だけと分かっていたのだろう、既に戦意は無くなっている様に見える。剣も手放しているし・・・
「もし一度でもあれば、私も慈悲で殺さないでやろうと思ったが、無いのであれば容赦するつもりは無い」
「ヒィ・・・ヒィィィィィーーーーーーーー」
情けない声を出しながら、四つん這いになりながら逃げだした。
しかし、それを許す彼女ではない。今度は普通に剣で、両手両足を刺し貫き動けないようにした。
「ぎゃあああああ!!痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!誰か助けてーーー!」
「リオノーラ・・・、もう止めとけよ」
俺は堪らず、リオノーラに近づき諭そうとした。そして彼女の顔を見た時、俺は怖気を感じた。
しかし、その顔は鬼女の様ではなく、ただでさえ美しい顔立ちなのだが、怒りに任せたその顔はぞっとする様な壮絶さを漂わせる美しさであった。
確か彼女は、貴族を極端に嫌うところがあった。
さっきの男も、貴族に奴隷を売るなど、ほざいていた後からリオノーラが変わった気がする。
何か、まだ俺達に話せない事があるんだろう・・・自身の何かしらの過去の事とか・・・
俺は、何も言わずそっとリオノーラを抱きしめた。
彼女は拒絶もせず、俺にされるがままになっている。
「リオ・・・、落ち着いたか?」
「ア、アル、私は・・・」
「何も言うな。リオはよくやったよ。ただ、俺はお前が激情に任せて人を殺すところを見たくないんだ。だからもういいんだよ」
「ああ・・・、すまない、アル・・・」
「エメルダ、エリス、リオノーラとアイリ様を頼む。アイリ様は安全が確認されるまで、彼女達と一緒にここに居て下さい。騎士団の皆さんは、俺と一緒に生きてる賊の捕縛をお願いできますか?。色々聞けると思いますので」
そして、みんな自分の役目を全うする為、奔走した。
俺は俺で、騎士団と出来る限り敵を捕縛して回った。
リオノーラを見れば、顔もすっかりいつもの美しい顔に戻っていたので、俺は一安心した。
ただ、いつもの凛々しさは無く、なにか儚げな印象を与えている。一気に力が抜けた感じだ。
あれから一時間ほど経ち、今俺達は馬車まで戻っている最中である。
さすが、あんな事があった後では遺跡の探索など出来ないし、こいつらの仲間が助けに来ないとも限らないので、今回はやむを得ず戻る事にしたのだ。
「アイリ様、あの今回はこのような事になり・・・何と言ったらよいか・・・」
「いいえ、アル様がご心配する事はありません。今回、私達に危害を及ぼそうとする者達が居るという、この事実が分かっただけでも、ある意味収穫でした」
「そ、そうなのですが、折角アイリ様の目的である遺跡の探索が出来なくなり、また怖い思いもさせてしまい・・・」
「あら?、私はこれくらいでヘコたれるほど
・・・・・・・・はっ??
そう言って俺達を見る目の色が変わって・・・キラキラしてる・・・
え?・・・いやだ、何か嫌な予感しないんですが・・・
「今、決めましたわ!!。私、冒険者になります!!」
・・・・・・・
・・・・・
・・・
・
「「「「「「「「「えええええええええーーーーーーー!?」」」」」」」」」
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