第3話

 ライブ当日。

 待ち合わせは電車の中。宗介君宗介君.......いたいた!

「やほ!」

「あ、やほ!」

 宗介君は私に気づくと1番角の席を譲ってくれた。

 宗介君は灰色のコートを羽織り、上はシャツに深い黄色のウールニットを重ね着、下は黒のスキニーパンツを履いて、靴はチロリアンシューズで決めてる。め、め、め、めちゃかっけー!!!!

 ちなみに私は緑のシスターワンピースに黒のオックスフォードシューズである。

「.......。」

「ん?」

 宗介君は何やら慌てたように

「あ、いや、素敵だなって。」

「そう?ありがとう!」

 今回は物販に並ばないから開場の30分前に現地に着いた。

「うわー!人いっぱいだー!」

「ほんとだ!すごい人混みだね。」

 開場入りまでオタク話で盛り上がってると

「あ、そういえば。」

「どうしたの?」

「この間は姉ちゃんがごめんね。びっくりしたでしょ?」

 宗介君は申し訳なさそうにしていた。俯くと長いまつ毛がよくわかる。うん、美形や。

「全然謝んないでいいよ!ちょっとびっくりしたけど。」

「ありがとう。そうだよね、びっくりするよね。変なこと言われてない?」

「大丈夫だよー。あ、そろそろ開くっぽい!」

 そして、会場に入り、夢のような空間に。

 祭りじゃー!!!!

「あ、手紙BOXある!入れてきていい?」

「あ、僕も行くよ。」

 届きますようにと気持ちを込めて入れて次は自席を目指す。

「どこだろー?」

「あ、ここの列じゃない?」

「どれどれー?あ、ほんとだ!」

 そしてたどり着いた場所は正しく神席!正面!!しかもステージ近い!!!

「うわー!めちゃいい席じゃん!」

「ほんとだね!」

 開演までライトが点くか確認してから、会場を撮影したり記念撮影したりした。

 ──ブーー

「お!始まった!」

 そして夢のひとときが始まる。

 ぽぽちんの声優さんが出る度、思い切り叫んではしゃいで気持ちを共有したくて思わず隣を見ると

「ぽぽさんだね!」

 とはっちゃけた笑顔で笑い返してくれた。

 さらに、ぽぽちんのソロが流れると泣いた私にハンカチをそっと出してくれた。

 こんな素敵な同志はなかなかいない。感謝!

 ひーくんの声優さんがでると宗介君は歓喜あまってか涙を流していて、この人とずっとオタ活できたら最高に楽しそうだなーとふと思った。

 そしてライブは大盛況で幕を閉じた。

「ライブ楽しかったねー!」

「うん!まさかの重大告知もあったしね!」

 そう言って宗介君はふわふわした笑顔で私を見た。うおー、相変わらずお美しいのー。

「めいさん。」

「なにー?」

「やっぱり僕はめいさんのこと好きなんです。」

 え、あ、え?待って待って待って!!!急にやめてー!!!

「そ、宗介君??」

「好きな物に全力な所とか笑顔とか全部僕守りたいです。」

「.......。」

 すごくすごくときめく。うん、好きになるわこんなセリフ言われたら誰でも。だけどだからこそ、私は告げなければならない。

「ごめんなさい。私気になってる人がいるんです。」

「え?」

「あ、もちろん宗介君はイケメンだし優しいしセンスいいし完璧な女の子の理想って感じだよ?でも私はこの人が理想なの!!」

 そしてスマホのロック画面の推しコスプレーヤーのsou様の写真を見せる。諦めてくれ。私は結局こういう女なんだ。

「.......めいさん。」

「ほんとごめん。でもこれからも友達でいて欲しい。楽しかったのは真実だもん。」

 嫌われたよな。でも私は本当に楽しかった。

「めいさん。」

「わがまま、かな?」

 あ、もう泣きそう。全て終わったかもしれない。あとは宗介君の言葉を聞けば

「めいさん、あのそれ僕です。」

「え?」

「souって僕のコスプレするときのハンドルネームです。」

「へ?」

「証拠写真です。これまだ未公開なんですけど。」

 と言ってみせてくれた写真。え?sou様がいる。まじか。え?え?え?

「工工工エエエエエエェェェェェェ(゚Д゚)ェェェェェェエエエエエエ工工工」

「信じてくれました?」

「あぁ.......神はここに居たのね。」

 うわああああああああああああああああああああああああああああ!!!

 私は膝から崩れ落ち、泣いた。こんな幸せなオタクがいるだろうか?嬉しすぎて現実か夢かわからない。ただ、1つ言えることは私は宗介君のことを推しとしても人としても好きだということだ。

「改めて、めいさん、僕と付き合ってください。」

「わだじも、じゅぎでずウッ、ウッ、げっごんじでェェエエ工(訳:私も好きです。結婚して)」

「え!??結婚していいんですか!??」

「いっじょヴ、ウッぞばに、イダイィィ(訳:一生に傍にいたい)」

「僕もです。.......もう離しませんから。」

 そう言って宗介君は私を抱き寄せてキスをした。


 オタクは恋しない。恋はいずれ終わりが来るが愛は永遠である。だからオタクは恋をせず愛するのだ、推しを。


 完

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オタクは恋しない!.......はず おきた狂 @Soms-05

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