ネット小説のランキングを見ると、異世界転生やら最強ステータスやら、非日常にさらに非日常を掛け合わせたような現実から遥か彼方にある世界の物語ばかりが名を連ねている。
それを否定するつもりは全くないし、そういった競争の中でこそ名作が生まれるということもあるだろう。
しかし、異世界に思いをはせるあまり、日常に転がる魅力的なモチーフを見逃してはいないだろうか。
本作は言ってしまえば、イヤリングをなくしただけの話だ。
しかし、その描写を通して幼馴染の二人の離別と再生が浮かび上がる。
凝った設定でなく、練られた伏線でもない。
しかし、本作が良作であることは疑いようのない事実だ。
もう一度、日常に目を向けてみたくなる。
自分の落とし物に気づくかもしれない、そんな短編だと思う。