第二章 秘密

 わたしはこの写真を何度も疑った。

 スタッフさんにカメラを見させてもらい、故障してるか、特別な機能があるか確認して貰う。けど、それらしきものは無いと分かっていた。もう一度私のみで写真撮って貰ったが

「映ってない…どういうこと?」

 チラリと澤村くんを見てみたが、彼は浮かない顔でこの状況を棒立ちしていた。

 彼が関係しているのだろうか。

 でも、もしそうなら、なんで彼なんだろう。などなど頭が回らずにいた。けど確かめるしかなかった。

「澤村くん、もう一回私と撮ってくれない?」

「いいですけど…集合写真の時間は?」

 あっ…?!!?完全に忘れていた。

「ごめん。そうだった、すぐ戻ろう」

 わたしと彼は急いでクラスのところに戻った。彼がわたしを庇うように先生やみんなに上手く言ってくれた。

 なぜわたしが映ったのか…

 その事でずっと頭がいっぱいであり、彼ともう一度撮れば分かるかもしれない。

 でも、これ以上はわたしの都合で迷惑かけたくなかったから、すぐにバスに乗り帰ることにした。

 みんなアトラクションに乗り、疲れきったのか、すぐに眠っていた。朝のような元気さは無かった。隣の友達も寝ている事を確認してわたしが映った写真を見た。

 小学一年生以来自分が映った写真。何故か笑ってしまう。もう一度隣の友達見て、バレていないか確認する。でも写真を見ると笑ってしまう。

 この気持ちは嬉しさだ なんて思いつつ、カバンに大事にしまう。



 バス旅行も終わり、行事ごとは当分ない。

 普通の学校生活が始まる。ここからは、何事もなく日々過ごせると思い、気持ちも楽だ。

 でも、わたしが映った写真に関してはまだ分からないでいた。普段の澤村くんは、大人しい。というより正直よく分からない。意外と本を読んでいたりして、読書が好きなのか?ぐらいしか分からない。急にクラスで彼に声をかけると、みんな驚くかもしれないし、澤村くんが一番驚くんじゃないかと思い込み、中々声が掛けられない。


「はい、授業はここまでにする。それと一週間後にテストあるからしっかりやれよ。」


 あっ…私は気を取られていた。テストがもうすぐだって事を忘れていた。ここで一つ名案が浮かんだ。澤村くんに勉強を教えてもらうと同時に写真撮影を要求しようと。

 彼には悪いと思ったけど、我ながら一石二鳥だと思い、放課後のタイミングで声をかけることにした。


「澤村くん」

「はい?」

「あの、テスト勉強してる?」

 彼が少し急ぎ気味だったので、低いトーンで会話してみた。

「まだ、これからですね」

 彼は少しハニカミながら答えてくれた。少しでも話題をふって、流れに持っていきたかった。

「そうなんだね。あっ、私さ、数学不安だから教えてくれない?」

「すいません。実は図書委員の仕事もありまして、終わったら良かったら。」

「うん!じゃあ、図書室にいるよ」

 彼の後ろに着いていくように歩いた。数回程度しか行ったことない図書室に勉強。普通は疑われるかもしれない。少し歩いた所で到着。彼は図書委員の仕事。わたしはノート広げて、取り掛かろうとしていた。図書室は凄く静かだった。意外と捗りそうなんて思いながら、イヤホンをさし、好きな音楽を聴きながら始めようとすると。

「音楽かけないほうがいいですよ。」

 彼がわたしのイヤホンを耳から取った。急な事でびっくりし、彼の方を向くと、顔も近かった。

「いや、あの、静か過ぎるから!」

 顔を赤くしながら、思っていた事と反対なことを咄嗟に言ってしまった。広すぎる図書室に二人しかいないことに今気づき、余計恥ずかしくなった。彼は驚く素振りもなく、笑っていた。

「仕事終わりましたので、勉強します?」

「あっ、もう終わったんだ」

 彼はリュックから、筆箱やノートを取り出して勉強に掛かろうとすると、慌てて止めた。

「あ〜!あの、オススメの本ないかな?」

「え?勉強は…?」

 わたしは椅子から立ち上がり、本棚に向かおうとした瞬間。ある写真が机から落ちてしまった。彼は躊躇なく拾う。それはあのバス旅行で彼と一緒に撮った写真だった。

「落としましたよ」

 彼は優しく差し出してくれた。そんな優しさにやられ、正直言おうと思った。

「あのね、私さ、写真に映れたのかなってずっとずっと、考えてた」

 少しずつ自分の思いを伝えようとすると、涙が出てきた。震えながらも彼に言った。

「だから、もう一度確認したくて、写真撮ってくれませんか。」

「いいですよ?」

 二人並び、スマホのカメラで撮ってみる。


 わたしはいた。彼の隣にいた。


「わたし、わたし映ってる」

 ようやく理解出来た。彼となら、映れる。

 何故、彼なのかはもう考えることは辞めた。

「それは映りますよね」

 笑いながら彼は答えた。彼はわたしとなら、映ることに疑問を持っていないのか。

「わたし、澤村くん以外と写真撮っても、映らないよ?」

「え?」

「え?」

 お互い「?」になっていた。

「私自己紹介の時そう言ったじゃん。」

「すみません。忘れていたというか聞き逃していました。」

 溜め息が出る。わたしだけこんなに悩んでいたこと。涙が出ながら、彼に伝えたことに。

 でも、ほっとしたというか。楽だった。

「で、テスト勉強は…?」

「もういいよ、実は写真撮って貰いたかっただけ。」

 わたしは帰る準備をした。でも本当は数学を教えてもらいたかった。自分が映った写真に満足してしまった。

「ねぇ!」

 彼は驚きながら、こっち向いた。

「明日はさ、ちゃんと教えてね。後、写真も撮ってよね。」

 彼に押し問答をした。急に積極的な態度を取ってしまう。

「はい。また明日図書室で。」

「うん。ばいばい」

 わたしは校舎を走り抜けた。スマホで撮った時の顔は無く。嬉しさのあまりずっと笑っていた。難しいことはもう考えず、わたしもやっと写真に映れることに喜びを感じれた。



「早く明日にならないかな」

 そう呟き、学校を後にした。

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肉眼レンズ "HiKaRu" @HiKaRu_

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