ss03『ダブル怪盗の夏(会話のみ編)』
「はぁーあ、今日も七月を目前とした放課後だからものすごく蒸し暑いし、帰り道にアイスクリームでも買って帰ろっかなー。さーて、碓氷くんいるー!?」
「第二物理室に来るのにやけに説明口調じゃない……藤乃」
「あ、なんだ鈴音ちゃんだけか」
「碓氷が居ないからって露骨に落ち込むな……そもそもあいつ、私や科学者ちゃんと違って黒峰家とは無関係だって前説明したんだけど」
「したっけ?」
「したわ!!! 試練が終わってから三人一緒に黒峰家に拉致されたの覚えてないの!?」
「ら……ち……? ああー! 科学者ちゃんも一緒に私の家に来た日の事? ちゃんと呼んだじゃん、拉致じゃないよ。お母様の話には驚いたけど」
「驚いたのは多分あんただけだし……悲しいかな、私たちに拒否権は無いので結局あれ拉致なんだよねぇ。ま、その話はいいや。冷房付けてるけど、どうする?」
「どうするって?」
「科学者ちゃん特製冷気発生装置」
「あ、遠慮しておきます……凍え死にたくはないもん」
「まあそう答えると思って付けておきました。はい」
「……はい?」
「はい」
「はい、じゃないんですけどぉ!!? 前付けたとき空気中の水分が窓際で昇華して大変だったの覚えてないの!?」
「ダイヤモンドダスト、綺麗じゃん?」
「じゃんじゃないよぉ!!?」
「あは、冗談だよ、寒くなってないでしょ? ……こういうところはまともな反応出来るんだよね、藤乃。普段猪突猛進の癖に」
「一度体験したら懲りるよ流石の私だって!!」
「ほんとぉ?」
「本当だよ!! なんなら、か、怪盗ノワール様に誓ってもいいよ!!」
「えぇ……あいつに誓われても困る……」
「……と、とにかくっ、私そんなに馬鹿じゃないからね!!」
「でも怪盗になるのは諦めてないんでしょ?」
「うん、それとこれは別だもん、簡単に諦められないからね」
「私としてはさっさと諦めてあの部屋に帰りたいんだけどね」
「うちの家が代々そういう使命? があるのは初耳だったけど。すごいね、私って他の能力を持った人から能力を盗めるなんて能力があるんだよね?」
「あるね。面倒なことに」
「それはきっと、世のため人のために使う能力だよね。だって怪盗だもん」
「いやだってじゃないし何処から出てきたのその発想」
「でもさぁ? いまいち能力ってなんだかわかんないし、私が想像していたカッコイイ怪盗とはちょっとズレてるけど」
「あっ、無視ですか。そうですか…………大丈夫、そもそも藤乃自体ズレッズレだから」
「えっ、なんか言った?」
「なんにも? ……あ、そうそう。言い忘れてたんじゃなくて藤乃が勝手に気付いても良かったと思ったから言わなかったんだけどね? 科学者ちゃん今日は学校来てないから待ってても来ないよ。そもそもこの部屋に住み着いてるような人だから居ないときは居ないし」
「あー。あれ? じゃあ碓氷くん待ち?」
「…………あ、メッセージ届いてる。『妹が泣いているので帰ります』? は、碓氷妹いたんだ意外」
「そうでもなくない? 碓氷くんはなんかお兄ちゃんっぽいというか、ほら、ちゃんとしてるし」
「ちゃんと……してる……!??」
「えっ、そこ驚くところかな!? ちゃんとしてるよね!?」
「いや、ええ……? まあ、一応試練の時はちゃんと救出までして帰ってきたし、ちゃんと……? ちゃんと??? そうなの? あいつが、ちゃんとしてる……??」
「……鈴音ちゃんが碓氷くんのことどう思ってるかよーくわかった。ざーんねん、助けてくれたお礼に今日は私の奢りで一緒にサーティ○ンアイス食べようって思ってたんだけどなぁ」
「えっ」
「ざーんねんだなぁー」
「……今月もフラムの新衣装とか機材とか注文しちゃって毎日もやし生活でアイスなんてここ半年食べてない……えっ、これもしかして前言撤回すればロハでアイス食べられる……じゃあ…………!!?」
「……えっ。なんで土下座してるの!!!?」
「碓氷はちゃんとしてるので!!! アイスを!!!!」
「あ、うん。わか、わかったのはよかった。でも土下座やめてね? 土下座されるほど怒ってないしね? なんかすごい怒ってるみたいじゃん」
「……こちらとしてはアイスを奢っていただけるのかもしれないというこの状況。不服ならば靴をも舐めます所存ですよ…………?」
「必死すぎない!!? そんなことしなくてもちゃんと一緒に行くからねサー○ィワン!! ほら立って!! 床汚いから!!」
「ありがとうございます!!!!」
「あーもう、抱き着かないでよ~、外熱いし!! よーし、行くぞー! 標的はサー○ィワンのトリプルだー!!」
「お、おー? ってやっぱ藤乃足早っ!!!!? 待てぇい、私ゃ伊達に引きこもりの体力してないんだぞ!!!」
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