第四話『怪盗ノワールと探偵助手ちゃん』
◆◆◆黒峰藤乃◆◆◆
「────あのひとのこと、ねらってるんですかぁ?」
あ、あれぇーーっ!!? そんなことないよ!?
私はただ碓氷くんがいっつも机の上占領されてて居場所無さそうでかわいそうだったり、いっつも一人でつまんなそうにとぼとぼ帰ってたりするから一緒にいるだけで、べ、別にそんな狙ってるとかないよ!!?
無いからね!!
「ほっほーう? じつのところどうなんですかねー?」
「ええっ!? 何がかな!?」
「そんなのわかりきってるじゃないですかぁー。あーそもそも『あとつけましょー?』ってしょたいめんのこーはいにいわれてほいほいついてきちゃったせんぱいですからねー、わかりやすいですねー」
「わ、わかっ、分かりやすくないしっ!! 碓氷くんが体調が悪いのに私、気付けなかったし……同級生、それも隣の席の人が体調悪いってなったんだもん、心配だし……」
後半はなんだか自信がなくてぼそぼそ声になってしまってた。当然のことのはずなのに。
……という訳で(?)私は名前も知らない寝ぼけ眼の後輩ちゃんと一緒に、碓氷くんの後を尾行しています。
「あたしてきには、かんぜんにすとれすだとおもうんですよねぇ。いかにもないぞう、よわそーじゃないですかぁ」
「え、ストレス!? なんで!?」
「えっ、まじかーわかってなかったかー」
後輩ちゃんは額を押さえて天井を見ていた。どうしてだろう……。
「ま、いっかー。そだ、せんぱい。はやくいかないとおいてきぼりにされますよー?」
「はっ、そうだね!!」
「────体調心配なら合流すれば良いじゃん」
「は? 何か言った?」
誰かと思えばいつも碓氷くんの机を不法占拠してる女じゃん。
ねぇそんな人がどうしてこんなところにいるんだろうね。
「なんかウチにだけ当たり強くない? 学校一の美少女さん?」
「ええー、そんなことないよー? なんでいつも当然のように碓氷くんの机に乗っててやな人だなーって思ってるだけだよー?」
「ハァ? 喧嘩売ってんの?」
「んん? どーしてそーなるのかな??」
「あー、これがうわさにきくきゃっとふぁいとですか、いいぞーもっとだーもっとやれぃー」
「「違う!!」」
「おー、なかよしー」
「「違うって!! この、合わせないでよ!!」」
全く何なのこの人は……!!
「ま、いいや。ウチ的にはアイツが平気かなんて別にどっかの学校一位とかちやほやされて舞い上がってる女みたいに顔色を遠くで窺わないで直接聞けるし??」
「何よその目は……行くなら勝手に行けばいいじゃん」
「えー、そんなのよくないですよー」
「ハァ? なんで?」
「あたしがー、みぶんさのあるらぶこめがすきだからでーす。ちょうどいまのいちがひとつぶでにどおいしいたちいちなのでーす、どやさー」
…………??????
「えー、おふたりそろってわからないかんじですかぁ? にぶちんですねー?」
「なんかわかんないけど完全にウチの味方じゃないのは分かったわ」
「なんかわかんないけど私の味方でもないような気がする」
「ええー? あたしうたがわれちゃってるー? めいたんてーのじょしゅなのにー」
「名探偵の助手??」
「そーです、こうこーせーたんてー白板白紙のいちのじょしゅ、それがあたしなのです」
誰だろう、その白板白紙という男は。有名人?
「……し、白板白紙が学校来てたん!? 嘘ぉ!!!? いやあの人か!!? 生で見たの初めてだから気付けんかった!!?」
「まっじでーす、おしごとかたづいたからー、わたしががっこうになぞがあるぞーってよびつけたんでーす。きっといまごろこいばなでもしてもりあがってるとおもいますねー」
へ、へえぇ……コイバナ? 碓氷くんのコイバナ、ねえ?
ほほう。
き、興味ないよ? ぜーんぜん興味ないね。さっき教室に来てたあの人には、碓氷くんの体調に気付いてくれた事について五体投地で感謝したいところでありますな!!
「え、えー!! サインとか貰えたり────」
「いいんじゃーないですかねー、せんぱいならきっと────」
二人の会話をフェードアウトさせつつ、柱の陰から碓氷くんの方を覗き込む。遠いね。
そこで活躍するのがこちら先日科学者ちゃんに言って作ってもらった怪盗七つ道具その1!!
《超小型!!強力集音マイク~ノワールエディション~》~!!!
これにイヤホンを接続させれば、あら不思議!!五メートルの分厚い壁をも貫通して音が聞こえます!!
科学者ちゃんが「面白そうだが一応言っておく、絶対読めよ???」ってペラ紙一枚の説明書とセットで貰ったけど読むの忘れちゃった!! ま、別にいいよね!!
さあて碓氷くんはどんな話を────
「『────(※とてつもなく大きな音がイヤホンを通して響いた)────』」
「(※学校一の美少女が出してはいけないような絶叫)────ッ!!!!!」
────ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!(ゴロゴロゴロ)
「なにもんぜつしてるんですかねぇ?」
「あはははははははは!!!!」
「み、耳がぁ……っ!!」
私は床をのたうち回りながら、ポケットの中にあった説明書に目を通した。
『どうせロクに目を通さないからデカデカ書いてやる
音 量 注 意 !!!
これで耳が死んだって文句言ってきたら自業自得。集音機だからって舐めるなよ?
マジで気を付けろ、ヤバイからな?』
うぐうううううううう!!! くらくらするぅぅぅぅ!!!
音量注意ってぇ!! あーーーもうっこのダイヤルだね!! 下がれさがれっ!!!
「────狙ってい────」
「────大胆────」
お、合ってきた合ってきた……、耳も治ってきたし、さてさて、どんな話をしてるのかなぁ。コイバナ? コイバナなのかな? だとしたら誰のはなs──、
「────黒峰さんはさ、凄い美人だし顔もいいしスタイルもいい────運動でき────苦いコーヒー飲めなくて砂糖────いれたり────ケーキは一口で食べるのを────服の趣味が────可愛い────」
ふぇ?
「────最初はお近づきになれるー、なんて喜びも────黒峰さんの並じゃない意思の強さが眩し────ともかくカッコ良い──────」
「────黒峰藤乃の────」
「────まあそうかもしれない────」
えっ。
…………えっ?
………………。
………………………???
…………………………………………………あ。
────えっ!? ひょっとしてコーヒーブラック駄目なのバレていらっしゃる!?
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