春が来ないことを僕は知っている

@sasasatsuki

第1話 恋愛は甘酸っぱい、なんてことはなく無味無臭であると僕は知っている

うだるような暑さの中、平日の昼間に東京のアスファルトを履き慣れていないピカピカの革靴で一歩一歩踏んで踏んで、そして踏んだ。

面接会場に着くギリギリまでネクタイを緩め、シャツの袖をまくり、ジャケットは折りたたんで鞄に詰めた。

あの時はなんで夏なのにジャケットまで着なきゃならないんだと文句を垂れながらもよく頑張っていたと思う。ただそんな不満が顔に出ていたのかことごとく面接に落ち、その都度就活を続ける気力もなくなり、内定が決まらないまま12月を迎えた。


そんな僕の日常はとにかく暇で仕方がない。いや、すべき事をたくさんあるのだが、僕としてはする気が無いので暇と言っていい。決定権は僕にある。

暇な人間なら知っていると思うが、インスタグラムでしょっちゅう飲み会の写真をUPている人間より、投稿が2.3ヶ月に1回あるかないかの人間の方がSNSに依存している。滅多にいいねなんてしないが、すべての投稿をチェックしている。

そんなことを言うと気持ち悪がられるのを僕は知っているので僕はただ黙って見ている。いいじゃないか無害なんだから。

インスタグラムの最新の投稿まで見終わったのでTwitterを開こうとしたとき、ふと気づく。ここ数週間女性と会話していないことに。大学は隔週で行われるゼミだけで、しかも女子が1人もいない。バイトもしていない。そもそも女友達がいなかった。詰みである。


Twitterの自分の本アカウントを開き、Twitter上ではいつ女性と話したかなと、過去のツイートを見てみたが、2年前まで遡っても見つからなかったので諦めた。友人ではないが、知り合い程度の間柄ならフォロワーにいたはずなのだが。


中学生の時はまだガラケーを使ってメールのやり取りを女子としていた。ただ1人の女子と。

中学一年の5月、彼女とは直接話したことは無かったが、友人Aが僕のケータイに勝手に彼女のアドレスを登録し、勝手に告白メールを送った。当時イタ告(イタズラ告白)が流行っていたから、多分相手もわかってくれるだろうと、すぐに事情を説明するメールを送ったが、帰ってきたのはキモい、という中学生にはキツすぎる3文字だった。

放心状態の僕宛に再びメールが届いた。どうやらさっきのメールは告白メールへの返信で、次は事情説明メールへの返信。本文「二度とメールしてこないで」

終わった。こんなことなら友人Aに好きな子なんて教えるんじゃ無かった。


中学最初の恋が終わり、そして、始まった。


大学四年生の現在と、フリーターの未来では恋愛なんてできるはずもないので、過去の恋愛を語らせてほしい。どうか、よろしく。


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