外伝その二 読者サービス的な何か

「どうして争いが起こったの?」

 焚き火の揺らめくほのおをひどく輝いた大きな瞳に写しながら、少女は尋ねた。

「おばあちゃんのお話を聞いていると、どっちもそんなに変わらないような気がするんだけど」

 素直な、混じりけのない質問に、老婆はうっすらと微笑んだ。

「さあ、どうしてだろうねえ。確かにどっちも同じように好まれていたのだけれど、それで満足できなかったのだろうね。山野やまのきのこ(CV:〇藤綾)派は里野さとのたけのこ(CV:〇島愛)のことを『もっさりした風采の上がらない田舎者』だと考えていたようだし、筍派は茸のことを『何だか硬くて融通の効かなさそうな都会人』って思っていたようだね。それで、いずれが上かを戦で決しようとしたわけだけれど――」

 そこで老婆は言葉を止めて、天を仰いだ。少女はその姿を不思議そうに眺めたが、何も言わずに行儀良く待つ。

 さほど間をあけることなく、老婆は顔を再び少女に向けると、話を続けた。

「――やっぱりどっちもどっちだったんだよ。長きに亘る不毛な消耗戦で、いずれの陣営も疲弊し、支持者を減らしていった。そこを伏兵の町野まちの個荒こあら(CV:〇島真理)に付け込まれ、『阿井、覚えていますか』という感じで全てを持っていかれてしまったんだよ」

「ふうん、そうなんだ」

 少女はあどけなく相槌を打つ。

 ただ、無垢というのは時に悲劇を招く原因ともなる。彼女は続けてこう尋ねてしまった。


「それで、お婆ちゃんはどっちのほうが上だと思ったの?」


 老婆は、確信に満ちた表情で答える。

「それはもう、たけ


 *


 どんどんどん!!


「我々は『K(きのこ)K(くわせろ)K(このやろう)団』だ! たった今この家から筍波動が感知された。扉を開けたまえ! さもなくば強行手段に出る!!」

「くっ、見つかったかっ! 同士諸君、四方に散れっ!!」

「逃すか! 中立を装って筍優位の印象操作を企てるとは、何たる姑息な!!」

「どの口が言う? それにそのトンガリ帽子は何だ! どうみても茸より筍のほうがイメージ近いだろ!!」

「くっ、気にしていることを! ともかく、証拠品は押収する!! 持ってっけ――」

「させるか! キラッ☆」

「がはっ、照明弾かっ!」


 こうして、茸筍の惨劇は今も続いているのである。

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おかしな戦争 一 阿井上夫 @Aiueo

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