ボンバーマンヒーロー ミリアン王女を救え!


『ボンバーマンヒーロー ミリアン王女を救え!』


 このゲームを知らない人……いや、あるいは知っている人も、ある『共通の疑問』を抱くタイトルだ。


 ミリアン王女って誰?



 ボンバーマンというタイトルは、古くは1985年から発売され、語り続けられてきた。

 かつて存在したゲームメーカー、ハドソンを代表するソフトの一つとして、その時代の学生から社会人までを巻き込んだほどの大人気タイトルである。

 どのボンバーマンを一番プレイしたか?どのボンバーマンが最も好きなタイトルか?


 ゲーム好き仲間との雑談では鉄板の会話ネタだった経験があった方もおありだろう。


 ボンバーマンは、ゲーム性が強く、わかりやすく、シンプルでわかりやすい。

 ゲーム性というのは、有限会社ソラの代表取締役、桜井政博氏が自身のyoutube上や多くの講演でも述べていることがある。

 桜井氏は『スペースインベーダー』を例に詳しく解説されており、ゲーム性とは「かけひき」と「リスクとリターン」である、と定義されている。

 めちゃくちゃ面白いので、興味を持った方はぜひとも氏の動画や書籍を参考していただきたい。


 氏曰く、「リスクを冒してリターンを得る」ことがゲーム性、およびゲームの本質である、という話だ。



 ボンバーマンはその名の通り、爆弾を使用するキャラクターを使用する。


 敵を倒す手段は爆弾による爆風だけ。

 敵だけでなく爆弾によってブロックも破壊でき、強化アイテムを取ればボンバーマンを強化したり、爆弾の性能を強化できる。

 ただし、爆風はボンバーマン自身も食らってしまい、基本的には一発死してしまう。

 つまり自分の爆弾で自滅してしまう可能性がある、ということだ。


 ここで「リスクとリターン」の話になるのだが、強化アイテムによって爆弾を強化すればするほど敵を倒しやすくなるが、同時に自滅しやすくなってしまうのだ。


 多くの爆弾を設置し、巨大な爆風を生じることで爽快感すら感じるほど爆弾を置くことができる反面、自分が死ぬリスクが高まる。



 ここまでは従来の――特にスーパーファミコンなどで発売された『スーパーボンバーマン』シリーズ――に通じる話だ。


 前置きが長くなったが、ボンバーマンヒーローも、その従来の「ボンバーマンシリーズが持つゲーム性」と共通しているところがある。

 ただし、『スーパーボンバーマン』のシンプルな見下ろし方2Dゲームから、3Dアクションゲームとなったことが今までのシリーズと大きな一線を画す点だ。


 ボンバーマンヒーローはライフ制であり、爆風に当たったところでライフが1つ削れるだけなのでそこまで自滅を気にする必要はない。

 ただし、ゲームとはまた違ったところで、爆弾の火力を抑える必要制を感じる事があると思う。


 強化が最大でない爆弾の爆発音は、言語化すると「ボンッ」となる。普通だ。


 最大火力となった爆弾の爆発音は急に変化する。言語化すると「ボジャ――――オ」となる。

 これは決してふざけているわけではなく、本気だ。「ボジャ――――オ」なのだ。個人差はあるだろうが、「ボジャ――――オ」なのだ。本当に。

 これがかなりうるさい。しかもボンバーマン唯一の攻撃方法なのだから、ゲーム中頻繁に聴く事になる効果音だ。

 Bボタンを押せば投げて着弾して「ボジャ――――オ」、Cボタン下で設置して時間が経てば「ボジャ――――オ」、爆弾を蹴り飛ばしてぶつけて「ボジャ――――オ」…………


 爆風が大きい事で攻撃範囲が広くなるが、いわゆる「攻撃力」が上がるわけではないため、あえて最大強化の一歩手前で火力の強化を抑える人も多かったのではないだろうか?


 ちなみに当時プレイした筆者はゲーム中ちょっとでも不利になることを嫌って「ボジャ――――オ」を甘受した。感覚は麻痺するもので、最大強化状態のあのうるささがないと物足りなさすら感じるようになった。



 文章のIQがだいぶ下がったところで、ボンバーマンヒーローの独自性について述べたい。



 色々あるのだが、まず、ジャンプ・ぶらさがりを使用したいわゆる「ジャンプアクション」が可能であること。

 64のジャンプアクションと言うとどうしても比較せざるを得ない『スーパーマリオ64』と比べるとジャンプアクションの爽快さや自由度などは比べるべくもないのだが、ジャンプアクションがメインというよりは、様々な仕掛け・配置された敵を爆弾でどうにかするということがメインに据えられており、そこは差別化されている。


 比較されてしまう、というと、絶対に外せない存在がある。『爆ボンバーマン』だ。

 爆ボンバーマンはAボタンで出るようなジャンプが存在せず、膝程度しかない障害物を絶対に越えられないボンバーマンにイライラしながらも、「溜めボム」やボムだけでなく敵も「投げ」が出来るようになったり、制御が難しすぎる「ボムジャンプ」を駆使したり……。


 爆ボンバーマンはコンプリートを目指すとかなり難易度が高いが、BGMの質は高いし、多人数プレイ可能な「バトルモード」も搭載されている。

 いまなお根強いファンがいるゲームである。



 そこにボンバーマンヒーローを当てはめ、比較すると、

 BGMは地味なやつと悲しげなやつしかない・一人プレイ専用ソフトである・画面上が暗め(爆風の明るさ、世界観などを含める)。


 爆ボンバーマンと張り合える点は難易度がマイルドというところと自由にジャンプできることだろうか?

 いや、ボンバーマンヒーローにはもう一枚の手札がある。乗り物という要素があることだ。


 ボンバーマンシリーズ恒例の「乗り物」というと、『ルーイ』というキャラクターがある。マリオにおけるヨッシーのように可愛らしく、自キャラを乗せてくれ、ダメージを一度だけ肩代わりしてくれる。


 本作にもルーイは存在する。

 それまでのシリーズとは異なり、乗っている間は爆弾が使用できなくなるが、ジャンプ力が強化され、踏みつけで敵を倒せるようになる。

 しかし、ルーイ以外の乗り物も登場する。


 正確に言うとオプションパーツ「パワードギア」をボンバーマンが装着することで、飛行して直進するミサイルを発射できる「ボンバージェット」、自由にホバリングして爆弾を投下できる「ボンバーコプター」、海中を潜航して直進するミサイルを発射できる「ボンバーマリン」、坂や雪を滑っていく「ボンバースライダー」となり、操作やゲーム性がガラっと変わる。


 ルーイも含め、パワードギアの使用は任意ではなく強制であり、一部のコースは開始時にルーイに乗ったりパワードギアを装着する事となる。

 これら乗り物要素はジャンプ+ボムだけのシンプル故に、そればかりしていると中盤ぐらいにやってくるであろう「飽き」を無くすよいアクセントとなっている。


 ジェットやスライダーの(本作において貴重な)スピード感はちょっと難しいが楽しいし、コプターは視点などの関係で最も難しいがボンバーマンとは思えないゲーム性で楽しませてくれる。

 ルーイを使用するステージも、(本作において貴重な)軽快なBGMと共に弾むような高いジャンプで敵を踏みつけて倒すのは、ジャンプアクションの原点とも呼べるゲーム性を楽しませてくれるのだ。


 ただ、頭の良い貴方は気づいてしまっただろうか?

 上記の説明、ボンバージェットとボンバーマリンが一緒ということに。


 ジェットとマリンはスピード感の差であり、直進するミサイルを敵にぶつけるシューティング的ゲームになる、という点は同じだ。



 ついつい重箱の隅をつつくような事を書いてしまったが、もう一つの独自性を述べる事で許していただきたい。


 それは「ソルトボム」の存在だ。


 砂漠のステージで白いアイテムパネルを取ると、ボムが塩の塊であるソルトボムに変化する。

 ソルトボムを取るとナメクジみたいな敵「シオカケロン」を倒すことができるが、他の敵を倒す事はできなくなる。


 実はもっと他にもボムを変化させるアイテムはあるが、とにかく筆者が最も強いインパクトがあったアイテムがこのソルトボムである。


 なぜナメクジが爆炎および爆風で倒せないのか?

 なぜ乾燥に弱いナメクジが砂漠にいるのか?

 塩をおもいっきりぶつければ他の敵であっても怯むぐらいしてくれてもいいのではないのか?


 謎は尽きない。



 ボンバーマンヒーローは、単体で見ると良作アクションゲームである。

 ただ、マリオや爆ボンバーマンなどと比較されると「一点に突き抜けた点」には弱さがあるようにも思える。

 アクションの自由度やゲーム性と呼ばれるかけひき、BGMや画面効果などから感じられる「楽しそう」感がどうにも今一歩足りない気がする。


 だが、間違いなく本作は良作なのである。少なくとも筆者はそう信じている。


 上記で挙げた特徴は欠点をあげつらったものだと感じられるかもしれないが、「笑って許せる」範疇のものばかり。

 ジャンプで障害物を乗り越え、リフトを乗り継ぎ、ボムを投げて敵を倒し、ボムをキックで飛ばして仕掛けを解いたり。


 ゲーム性がわかりやすく、「何をしたらいいのか?」と突きつけられる課題は常にシンプル。

 BGMは地味で種類が少ないが、それゆえ耳に残りやすく、今でもゲーム画面の情景とともに思い出せる。

 ちゃんと爆弾を使った爽快感、リスクとリターンのかけひきが維持されており、ボンバーマンの根っこにある部分は変わっていない良作である。



 ただミリアン王女が誰で、なんでゲーム冒頭で連れ去られたのかは覚えていない。

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ゲームレビューのまねごと 早見一也 @kio_brando

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