新世紀エヴァンゲリオン2

 PS2で発売されたアドベンチャーゲーム。後にPSPでも発売された。

「2」と銘打たれているが特に前作は存在しない。


 このゲームはなにをするのか?

 一言で言うと、箱庭ゲーだ。

 つまり街を散策し、アイテムを手に入れたり自キャラを強化したり、他のキャラクターとコミュニケーションを取ったり、というものだ。


 誤解を恐れず言うが、このゲームは『キャラゲー』に分類される。

 箱庭ゲーを、『エヴァンゲリオンのキャラクターでやる』、という事にこそ価値があるゲームだ。


 ゲームが進行すればするほど人間関係が構築されていく。

 友情・愛情・親愛という3つのパラメータがあり、各キャラクターが他のキャラクターに対してどのような感情を抱いているのかを数値化している。


 例えば、シンジは初期状態だと同年代のトウジに対して友情の値が高いが、他は軒並み低い。これは、トウジを友人として思っているから。


 アスカは初期状態だとシンジに対して全数値が低い。

 これは、柔弱なシンジの事を嫌っているからであり、また、原作ファンに対しては言うまでもなく加持に対してはかなり愛情の値が高い。


 もちろん、これは初期値の話だ。


 最初に嫌われていようがなんだろうが、コミュニケーションのコツさえつかめば、数値がどんどん上がっていく。


 しかも、シンジとはあんまり絡みの無いネルフスタッフ、冬月などとの関係を進行させることもできる。


 基本的に嫌われて得をすることはないから、好かれるような選択肢を選んだりするし、単純にキャラが好きだからorどういう会話をするのか気になるからという理由で色んなキャラクターに話しかけまくることになる。


 まあ大体の場合、複数のキャラクターと恋愛関係になるし、複数の同性と親友みたいな間柄になる。


 シンジ君の皮をかぶったスーパープレイボーイが爆誕し、なんかそれでも面白いからいいか、という気分になる。


 自キャラ以外での人間関係も面白く、碇ゲンドウなんかは特に、赤木リツコに対して愛情だけは高いくせに友情と親愛はマイナスに近い。完全に性愛の対象として見ている。

 この二人はなかなかに複雑な間柄なので納得しつつも、ゲンドウの破廉恥な部分にクスリと笑ってしまう。



 もちろん使徒との戦いもある。

 マップでの行動中に唐突にサイレンが鳴り、暗転する。使徒が第3新東京市に侵攻してきた合図だ。


 ここで画面が切り替わり、見下ろし画面になる。基本的にはレーダーのような画面で移動し、エヴァで攻撃したり使徒に攻撃されたりした時だけ3Dモデルが動く。


 前述の記載ではあたかもプレイヤーキャラクターはシンジのみのように書いてきたが、シンジのシナリオをクリアすることで他キャラでプレイできるようになる。

 その時にレイやアスカがプレイヤーであれば、プレイヤーが操作するのは初号機ではなく零号機や弐号機となる。


 エヴァごとに異なる攻撃方法があるので、好みのエヴァを操作するということも可能だ。


 戦闘はクセが強く、最初は使徒がどこにいるのかわからないという問題と、A.T.フィールドによって遠距離攻撃はほとんど効果がないという問題といかに向き合うかが重要だ。

 大体の場合は使徒の位置を把握している国連軍の後を追いかけつつ、武器を捨てて肉弾戦を行うのが手っ取り早いという、原作を知っていればとんでもない行動を取ることになると思う。


 もし戦闘によってエヴァが使徒の攻撃を受けて大きなダメージを負って大破してしまうと、次の戦闘では修理中なので出撃不可ということになったり、エヴァがロストして二度と出撃できなくなったり、レイやアスカなどのNPCであれば最悪死亡することもある。


 そう、このゲームはキャラクターが死亡することがあるのだ。


 死亡したら、当然ゲーム中には一切出てこなくなる。


 ただし特例として、レイの場合は原作にもある『例のセリフ』と共に再登場する。


「私はたぶん、三人目だと思うから」


 そして、当然といえば当然だが、レイの感情――構築したはずの人間関係は初期状態に戻るので、ペナルティはあるというわけだ。



 で、不謹慎なネタかもしれないが、これも特筆すべきことで――このゲームのレイは三人目に留まらない。


 ネタプレイとなるが、レイを出撃させて死亡させ、新たなレイを登場させてもう一度出撃させてまた死亡させる――というサイクルによって、何人ものレイが登場してくる。


 しかも、その都度レイのセリフもカウントが増していく。


 何人目までレイが登場するのか試したという記事をどこかで目にした記憶があるので、興味があったら調べて欲しい。



 そして、このゲームはキャラクター間の人間模様と、エヴァンゲリオンによる戦闘だけではない。


 キャラクターは感情のほかに、『欲求』というパラメータと、『技能』というパラメータが存在する。


 欲求は食欲や睡眠欲などの、まあこういったゲームにはよくあるものだ。食事や睡眠などを、どこかの施設だったりアイテムで回復することにより回復する。

 NPCは基本的に、この『欲求』に基づいた行動を取る。


 空腹だから食事を摂ろう、のどが渇いたから何か飲もう。そんな具合だ。


 そして技能は、白兵技能や各キャラクターの役割に応じた技能。

 すなわち、シンジなどのパイロットキャラであればエヴァに関するものだし、オペレーターキャラであればオペレートの技能。

 いわば、そのキャラがどれだけ仕事ができるかを数値化したものだろうか。


 そして、このゲームにおける『闇』の部分でもある。

 いや、むしろこれこそがこのゲームにおける真の目玉となるシステムであるとさえ思う。


 このゲームには、『力欲』という欲求が存在する。

 このパラメータが高いキャラクターがどんな行動を取るのかというと、『機密情報を知ろうとする』のだ。


 エヴァンゲリオン2には、ネルフ本部に存在するPC端末などを使用することによって、機密情報を得ることができる。


 例えば、エヴァとは何か?ネルフとは何か?使徒とは何か?


 そういった、エヴァンゲリオンにおける設定がここで知れるのだ。

 もしかしたら熱心なファンの方であれば既にご存じの事も多いかもしれないが、そういったことを全く知らないままこの機密情報に触れると衝撃を受けることうけあいだ。


 だが、例えば。


 あなたが会社を経営しているとする。

 従業員の一人が、知られてはならない会社の機密情報を情報端末から勝手に引き出しているとするならどうだろう。


 あなたはなんらかの方法で報復しなければならない。


 このゲームでもそうだ。

 もし機密情報を知りすぎたら、どこかからか派遣されてきた黒服の男たちが突如として現れ、なんと『暗殺』されてしまう!


 そうすると当然、そのキャラクターは死亡してしまい、今後ゲーム中に登場する事は無い。

 それがもしプレイヤーだったら当然ゲームオーバーだ。


 だがもし、ここで『白兵技能』が高ければ、なんと暗殺者を撃退できる。

 もし『力欲』が高いNPCが機密を知りすぎた場合も、プレイヤーの白兵技能が高ければ撃退してあげることも可能だ。


 なんともキナ臭く、危なっかしいことだろうか。


 だが私はそこに惹かれた。


 機密情報を知るのは中々難しく、他のキャラクターとの交流がてら機密情報の収集などしていたら、暗殺対象にされるほどの情報を知ることはあんまりない。


 大体の場合は中途半端に終わる。


 が、〈死海文書〉や〈第一始祖民族〉、〈マルドゥック機関〉や〈ゲヒルン〉などのあんまり聞き覚えが無い用語などは、中二精神をくすぐってくれるし、『知ってはいけない』と言われてしまうと余計に気になる。



 問題点もある。

 シンジ以外のキャラも操作できると述べたが、一部のキャラクターはストレスが溜まりすぎる。


 筆者の場合、カヲルや冬月などがそうだった。


 その理由は単純なものだ。

 別にキャラクターが嫌いなわけではない。


 走れないのだ。


 マップを歩き回るゲームで、移動速度が遅いというストレスに勝てなかった、というわけだ。

 そりゃあ確かに走り回るイメージはないが、そこはユーザビリティを優先してくれてもよかったのではないだろうか?



 それ以外にも、戦闘の最適行動が武器を捨てて使徒の死角に回り込んでからの射角の広いミドルキック連打でありがちなことや、エンディングの少なさが挙げられる。


 まあ戦闘は自分の力量次第な部分もあるが、エンディングばかりはプレイヤーにはどうしようもない部分がある。



 ただし、原作では単なるかませ犬的存在だったジェット・アローンが意外な形でエヴァと共闘を果たしたり。

 色んなキャラクターと色んな人間関係が築けること。

 シンジとゲンドウの和解エンドが存在していたりすること。


 こういう美点によって何周もプレイしたくなる。


 今回のプレイはミサトと仲良くしようとか、今回はネタに走って風呂に入らずどれだけアイテムで誤魔化せるか試そうだとか、機密情報コンプ目指そうだとか、間口が広いゲームだ。


 ただ、2003年発売のゲームなので、当然ながら新劇場版のエヴァとは全く関係ない。


 テレビ版に準拠しているので、基本的に暗く、あんまり救いがない。



 熱心なエヴァファン、あるいは『テレビでエヴァを観たことがある』ぐらいの世代の方であれば、問題なく楽しめるだろう。


 それ以外の方におすすめできるかというと、ちょっとできない。


 そういった、どこか歪んだゲーム性こそ、エヴァンゲリオンを感じる。


 だからこそ、このゲームは愛するべきものなのだ。


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