ギルティギア -鶍-

 ギルティギアといえば、世界的に有名な対戦格闘ゲーム(以下、格ゲーと略す)だ。

 格ゲーとしての内容もさることながら、色彩鮮やかで派手なビジュアル、ロック・メタル調のサウンドも相まって、かなりの人気を誇る名シリーズだ。

 世界的な大会が開かれ、多くのプレイヤーが腕を競い合った。国内外のプレイヤーがしのぎを削り、観客すらも夢中になるような、アツいプレイが魅力だった。


 しかしこのギルティギアイスカはシリーズの中でも毛色が違う。全く別種のゲームとなっている。


 対戦格闘ゲームといえば基本的に一対一。一人と一人が向き合い、互いに行動を読み合う。

 大技を差すか、連続攻撃を狙うか、相手の攻撃を見越してカウンターに踏み切るか……。

 そういった駆け引きこそが格ゲーの醍醐味、その一つだ。

 世には色んな対戦格闘ゲームが出た。言わずと知れた『スト2』が代表的な『スタンダード』であるとすれば、全キャラクターがそれぞれ武器を持ったいわゆる『武器格闘モノ』というジャンルもある。


 そうした中でギルティギアというシリーズの放つ色彩はというと、色々な意見があるだろうが、総じて『コンボゲー』という人が多いだろう。

 ギルティギアは技から技を繋げる連続攻撃、いわゆるコンボ(ゲーム内用語で言うところのガトリングコンビネーション)がキモだ。


 そして、ゲーム全体の速さ――いわゆるゲームスピードも速かった。

 有名タイトルであるところのストリートファイターと比べると一目瞭然だった。目にもとまらぬ――というほどではないが、初心者が上級者同士の対戦を観ても、何が起きたのか分からないだろう。


 だが当然、「他のタイトルよりゲームスピードが速いから優れている」というわけではない。速いがゆえの欠点もある。

 それは、一言で言えば、とっつきにくい事だ。

 早ければ早いほど、操作が難しい。読み合いもより難しくなる。


 シリーズの名誉のため言っておくが、最近の〈ギルティギア〉シリーズでは、ゲームスピードは抑えめになっている。

 昨今リリースされている格ゲーの多くはチュートリアルも充実しており、どうすれば上達するのか、どのような戦術が存在するのかをきめ細やかにゲーム内で解説している。

 ギルティギア、ならびに多くのメーカーが初心者を呼び込もうという努力がなされているため、初心者の方も怖気ることなく挑戦してみてほしい。



 話を戻そう。

 このギルティギア-イスカ-はどういったゲームなのか。


 最初に述べた通り、これまでの対戦格闘ゲーム――どころか、ギルティギアシリーズの常識では、このゲームは通用しない。


 それは、四人対戦が出来ること。

 そして、2ラインという概念が追加されたこと。

 これが最大最強の理由だ。



 まず四人対戦についてだが、プレイヤーAがプレイヤーBに対して優勢を誇っていたとしても、他二人からもし狙われたりしたら、よほど実力差が無い限りはまず勝てない。

 そのため、「今までのシリーズだったら通用していたであろう戦術」だけでは、今作では必ずしも通用するわけではなくなった。

 それに、どれだけ緻密なコンボを決めていたとしても、他のプレイヤーが反転演出のある覚醒必殺技(他のゲームで言うところの、ゲージを使用する超必殺技)を使っただけでリズムを狂わされる。


 四人対戦ということで、システム面は大きな改修がかかっている。

 対戦格闘ゲームでは、相手がジャンプなどで飛び越したりした場合、自動的に左右を振り向く。

 が、このゲームでは振り向きは自分でボタンを押さなければならない。

 なぜなら、どっちの方向にも敵がいるという状況が多く発生するからだ。


「そんなんどうでもいいじゃん」と思われるかもしれない。

 が、対戦格闘ゲームにおける『必殺技』――いわゆる波動拳やら昇竜拳を出す・走る・バックステップで攻撃を避ける・攻撃を防御するという行動すべてに言えることだが、「キャラクターの向いてる方向」が重要になる。


 自分が今どっちを向いてるのか、今どう動くべきか?


 この判断が、今までギルティギアシリーズで鳴らしてきたプレイヤーほど沼にはまりやすいのだ。


 今風に言えば、スマブラでコマンドを要求してくるようなものだろうか。


 最近のスマブラにはリュウをはじめとした格ゲー出身のキャラクターも参戦しているため、それは体験した人もいるかもしれないが、シールドがボタンで出来ないとしたらどうだろう?

 敵が攻撃のモーションにはいったと判断したとする。

 自分がいま向いてる方向が右か左かを瞬時に判断し、その反対方向にレバーを入れて防御するという芸当が常に出来るだろうか?



 次に、2ラインという要素について。

 このゲームは手前と奥側で分けるように2つのフィールドがある。

 これが2ラインと呼ばれるものだが、手前で一対一、奥側で一対一という構図も可能だし、手前のラインで他プレイヤーが大暴れをしていたら、奥側に逃げることも可能だ。


 ライン制自体は、格ゲーとして奇抜なわけではない。

 餓狼伝説2という、1993年に稼働を開始したアーケードゲームでも採用されているシステムだ。


 ただ、これもまた賛否の分かれるところで、ラインが2つあるということは、ライン移動関連の操作が増えたということでもある。


 ライン移動関連操作そのものは「振り向きボタン+他ボタン」という単純なものだが、どれを押せばどうなるかを把握する必要がある。


 しかも前述した「振り向き手動化」に伴い、振り向き攻撃という新操作がかなり増えているため、ただでさえ複雑な操作が更に煩雑化している。


 また、振り向きボタンは前作までのダスト攻撃(ギルティギアシリーズ特有の要素)ボタンであったため、誤操作しやすかったということも、否定的な方が多いことに関係しているのかもしれない。


 あと単純に、奥側のラインは手前のラインにいるキャラクターで隠れやすく見えづらいという欠点もある。



 実は他にもたくさんの要素がある。


 残機がチーム内共通の『ソウル』という要素。

 振り向きが手動だからこそできる戦術の存在。

 レオパルドンという本作にのみ登場するボスキャラの異様さ。

 ロボカイII という本作にのみ登場するキャラクターの育成モード。


 色々と述べたが、四人対戦により従来通り対戦格闘はできないと考えていい。

 真剣勝負をするには問題が多い(その気になれば多対一によるリンチが出来てしまう、攻撃範囲の狭いキャラが圧倒的不利である等)。


 ただ、友人と集まって『雑に楽しむパーティゲーム』としては、最高に楽しい。

 残機を少なめに設定し、チームをその都度入れ変えたりしていればワイワイと楽しめる作品だ。


 なにしろ、めちゃくちゃな事が起こりやすい。

 吹っ飛ばされたキャラクターが延々と違うキャラクター達にボコボコにされたり、味方の攻撃にボコボコにされたり、ゲームを進めればラスボスが対人戦で使えたり……。


 そして、ゲーム内のBGMはロック・メタル好きの方にはぜひとも一度聴いてもらいたい。シリーズの中でもかなり質の高いBGMが揃っていて飽きの来ないものが多い。



 もしあなたが格ゲー好きの友人を2,3人集めた時、一緒に遊ぶゲームの候補として、ギルティギアイスカをひとつ加えてみていただきたい。

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