3、「風呂敷を大きく広げるコツ、大きな嘘をつくコツはありますか?」

『講釈師、見てきたように嘘をつき』


 1つ目のテーマでも述べましたが、なぜ大風呂敷を広げる必要があるのか? 大きな嘘をつく必要があるのか? 究極的にはやはり読者層へのアピールが目的でしょう。ですが、それ以外の意図もあるので、やはり一概には言えない部分もあるわけで…………


 結論から言えば、これは想像力(妄想力ともいう)が物を言います。

 そして、想像力というのは若いほど高く、歳を取ってくるごとに衰えていきます。恐ろしい(( ;゚Д゚))

 もちろん歳を取ることはデメリットばかりではなく、地に足が付いた現実的な表現や、経験からくる物語の安定性など、文体に迷いがなくなってくるはずです。


 …………そんな結論ではあまりにも身も蓋もないので、真面目にコツというのを考えてみましょうか。

 まず大風呂敷を広げる対象はなにか?


 キャラ設定? 物語のスケール? 世界観?

 この中で言えば、私は特に世界観を大きくするのは比較的得意です。逆にキャラ設定が小さくまとまってしまうことが多い。



・すごいキャラ設定!

 テーマ1でも言った通り、キャラ設定については後で詳しく述べようと思います。

 が、それではちょっとつまらないので、もう少し話をしましょう。


 スパイダーマンの名言で「大いなる力には大いなる責任が伴う」というのがありますが、これは創作にも言えることです。

 強いキャラ出したら世界の一つや二つくらい救え――――というのではなく、強キャラなら強キャラなりの行動を心掛けろという事です。もちろん、すさまじい力を持っているキャラが平凡な日常生活を送るというのも悪くないですが、普通に暴れさせるよりはるかに難易度が高いのは事実です。


 悪い例だとこういうのがあります。

 →https://w.atwiki.jp/kt108stars/pages/267.html


 初めからキャラをアピールしすぎて強くしすぎると、得てして反感を食らいます。が、だからといって負け続けてもダメですね。もう一つ悪い例

 →https://kakuyomu.jp/my/works/1177354054889216737

 ここまでやると主人公が弱く感じる。


 また、恋愛要素が中心の作品で、平凡(のように見える)主人公にハイスペックな異性が好意を抱くというのも、大風呂敷を広げる形の一つでしょうか。

 究極的に言えば恋の形は人それぞれなので、よっぽど破綻している理由がなければ成立しないことはないです。場合によっては「これは運命だと思った」でごり押しするのも悪くありません。

 ですが、ハイスペックな異性が主人公のどういったところに惚れたのかは比較的重要で、物語のクライマックスでそれをきちんと強調できるとよりよいでしょう。



・大言壮語なスケール!

 テーマ1と共通する部分がありますが、異世界で世界を救うというよりも、日常をどれだけ非日常と乖離させ、それを違和感なく物語に反映できるか、ということなのではないでしょうか。


 キロール様の発言にあった「平安時代はニンジャに支配されていた」は、私の大好きなニンジャスレイヤーの設定ですね。

 ただ、そこまでいかなくとも、えーきち様の神小セブンワンダーズ

https://kakuyomu.jp/works/1177354054889651679なんかは色々参考になるのではないでしょうか。


 現実的に考えて「ありえない」ものを存在させるというのは、イレギュラーがあることで今自分たちが生きているこの世界がどれだけゆがむかという思考実験でもあります。

 せっかく独特な設定を入れたのに、結局どこかで見たような世界観にしかならないのではつまらないものです。

 例えば、魔法がある異世界という設定にするならば、実際の歴史がどう変わっただろうかと想像してみましょう。

 どこでも水を出すことができれば、農業生産力は現実世界より飛躍的に上昇するでしょう。高度な炎魔法があれば、製鉄が容易になるだけでなく、戦争兵器そのものを変えてしまうでしょう。

 こんなことを考えるだけでも、物語の基礎がどんどん湧いてくるはず!


 大きな嘘をつくと言えば、歴史ものかSFでしょうか。

 今はもうほぼ下火ですが、一時期「仮想戦記」というのが流行ったことがあります。世界大戦で日本やドイツを勝たせたり、共産主義が世界の主流になったり、織田信長が世界を征服したり、などなど…………

 SFなんかは、もはや想像力ですべてを作る行為です。

 本編でも宇宙の話がチラッと出ましたが、現代の常識を疑ってみる心も、時には必要なのかもしれません。



・とんでも世界観

 紺藤 香純様の発言で

 「異世界ファンタジーの歴史背景を考えるとき、本当っぽくなるか悩みませんか? ファンタジーだけどリアリティを持たせたくて。あれも、大きな嘘だと思っておりますが」

 というのがありました。

 どんな世界であれ、その時代に至った経緯というものがあるわけで、人間はサルから進化したのか、神様が作ったのかですらだいぶ違います。


 独特な世界観を作ると、読者がその世界観に慣れるまでがとても大変だという事は、私もよく肝に銘じています。

 特に慣れていないと、冒頭で世界観説明をドカッと入れてしまい、思わずげんなりしてしまうことも。本編でも言った通り、特に一人称視点では説明口調になるといろいろと台無しです。かといって小出しにすると、膨大な世界観がいまいち伝わりにくいというジレンマ。

 カクヨムを見ていると、たまにとんでもない世界観なのに説明があまりないせいで、会話などから類推するほかないというものもあるから恐ろしい。

 適切な情報量の投入は、もはや経験則でしか計ることはできないので、いろんな人に意見をもらうのが一番いいと思います。



・大風呂敷を広げた! で、どうする?

 皆様は「チェーホフの銃」という用語をご存じでしょうか?

 端的に言えば「無意味な設定は使うな」ということです。


 かの有名な「ソードマスターヤマト」は、急に打ち切りが決まったことで膨大な伏線を回収せねばならず四苦八苦するお話ですが、ああいったことは創作界隈でもよくあることです。

 とにかく設定を広げすぎると、作者でも収拾がつかなくなることはままあり、そこから矛盾が発生してしまう危険性もはらんでいます。広げた大風呂敷の畳方は、あらかじめ決めておくのが賢明でしょう。

 さもないと、批判されたときに物語の良し悪し云々ではなく、プロットの稚拙さで上げ足取られます(経験談)


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