■第四信①
拝啓
親愛なる唯様
凪や陸海兄弟らと相談したのですが、管理人による美味いメシと我々を統制する意思の有無に関しては、ひとまず様子見と決まりました。食べるか否かは各自その時々の体調と気分で決めればよい……と。ただ、陸は、荘に対して最も強く不快感と警戒心を
「フン」
凪はつまらなそうに掠れた声を発して納屋を出ました。いえ、声が
僕は
凪の
凪がピタリと足を止めて僕を顧みました。双眸に侮蔑の色が滲んでいましたが、すぐに「仕方ない。勘弁してやる」とでも言いたげな苦笑いが取って代わり、消え失せました。僅かに歪めた唇からは、妄想を逞しくするのは個人の自由だし、そんな目で見られるのにも、もう慣れたが、不埒な動きに対しては、いつでも腕力で応じる用意がある——といった言葉が、沈黙を守ったまま零れ落ちるかのようでした。そりゃ、僕だってわかっています。短毛種のネコやウサギに似た手触りを楽しんでいると、突然爪を立てられ皮膚を掻き壊され、挙げ句、喉笛を噛み切られて、血みどろちんがいにされてしまう……と。望むところです。
ところで、何故毒草園なのか。元々敷地に自生していたジギタリスなどを残置したからです。徹じいは一掃しようと言いましたが、僕らが「もったいないから育てて売れば」と提案したのです。すると、徹じいは僕に図書室の段ボール箱を調べろと命じました。表書きがあった箱は僅かに十数個で、家庭向けの医学書や辞書が入っているようでした。僕がその中から植物図鑑を探し出すと、徹じいは、そいつと首っ引きで何種類かを弁別し、効能——もしくは中毒症状——を確認していきました。その
凪が雑草を刈り始めたので手伝いました。こんなときは大抵、気分もいいようで、口笛で短いメロディを繰り返すのです。タイトルも教わらずに覚えてしまった曲を、僕も模倣して奏でます。
「おっと」
どこを通って来たのか、群れから
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