■第三信①
拝啓
親愛なる唯様
驚くべき事態です。傲岸不遜な新管理人が何をしたと思いますか。食事の改善です。極めてまともな
料理は調理室で作られ、食堂へ運ばれます。学校給食に似た風景を思い浮かべていただけばよろしいかと。いや、元々、施設が低地にあった頃、そういうスタイルだったというのです。台風に追いやられて
いわゆる
何となく、いつものグループに分かれて着席し、黙々と食べ始めました。すると、そこかしこで微かな感嘆の溜め息が漏れたのです。
「……ふぅん。美味いじゃん」
陸海兄弟は同時に褒め言葉を発しましたが、すぐ
僕は
「管理人、嚴たちを取り込むつもりかな」
「そんな気がする」
僕がじっと眼を見据えると、二人は顔の横で手を振って否定の意を表しました。彼らは日和見グループに属しつつ、図書検索について多少僕を頼りにしている都合上——卓の場合は第二信に記したとおり、凪に恩を感じている手前もあって——凪チームに歩み寄っているのですが、反・凪派に傾きはしないかという僕の疑いを払拭しようと、少し慌て気味に、
「か、関係ないよ」
「うん。メシは食うけどね」
僕や卓たちが考えたのは、荘が魅惑的な食事で嚴らを懐柔し、運営を円滑にしようという
教官が死んで徹じいが現れるまでの空白期間は、かなりスリリングでした。浅ましい話ですが、食い物を巡って揉めたのです。争点は、誰が食料庫の鍵を管理するかでした。凪や陸海兄弟は、自分らが番をすれば不正は起きないと考えました。僕も同感でしたが、異を唱える者がいたのです。嚴たち反・凪派ですが、しかし、ヤツらに任せたら何が起きるかわかったもんじゃなかった。僕らが恐れたのは、鍵が嚴たちの間を回っているうちに食べ物が尽きてしまう可能性より、ヤツらが文字通り餌をチラつかせて誰彼となく丸め込み、僕らを極端な少数派として孤立させる算段に違いないということでした。
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