第5話 勇者がモテないのは町田のせい

 牙這髑髏サイデルを勇者の力で倒したひろみであったが、ベルモッドら町田の剣士は空想上の産物に過ぎなかった龍の出現にどん引きしてしまい、討伐は感謝されたが皆から距離を置かれてしまった。

 ひろみは愛龍のあーくんをこのままに置くわけにはいかないことを悟り、名残惜しいが一端消してこれ以上の混乱を避けることにした。

 もしまたあのような怪物が現れたらあーくん創像して倒せば良い。ひろみは自分の力が勇者としてこの世界で役に立てることを実感したが、当分はどん引きされ続けなきゃならないだろう、と少し凹んだ。


「まー、ぼっちは慣れてるから……ところで」


 ひろみの先日の騒動以来気になっていたことを確かめに、町田駅前南口にやってきた。究極白龍アルティメットドラゴンのブレスで半壊した魔導具量販店バシは現在復旧工事中だが、魔法で修復しているので近いうちに再開するそうである。無論、破壊の件は人的被害も無かったのでひろみは不問とされた。

 ひろみがここへ来たのは別に理由があった。

 そう、あの外見はす○家な謎の店がどうしても気になっていたのだ。


「……こちらの世界にも牛丼あるのかしら……食べたい」


 店の前に立つひろみは、内側からカーテンで覆われて中が見えないこの店ヘ入るかどうか迷っていた。


「ボッチJKでもお一人様で牛丼屋入るのってなかなか勇気いるのよね……ええいっ」


 ひろみは覚悟して扉に手を掛けたとその時だった。


「ひろみ殿っ! 貴女は何て事をしているのですかっ!」


 背中に、ベルモッドの嘆きの声が浴びせられた。

 ひろみが驚いて振り向くと、息荒げなベルモッドがいた。現場検証中にひろみを見かけて驚いて駆け寄ってきたらしい。


「あのー何か」

「勇者とももあろう方が、しかも女性がっ! そんな店に入ろうとするなんてっ!」

「えっと何言ってるか分からない」

「我は失望しましたっ!!」


 言うだけ言ってベルモッドはそのまま踵を返して魔導具量販店バシの方へ去って行った。

 暫く事態が飲み込めず混乱していたひろみだったがやがて、嫌われた?という四文字が背中にのしかかりその場に膝を突いて嘆いた。


「何なのこの町田って世界ぃ……」

(男は一人じゃないから大丈夫よン)

「オネェに慰められても嬉しくないですぅ」


                  おわり

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町田転生。 arm1475 @arm1475

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