第51話パッド
銅線ねえ。たしかに片方の先端に音声スピーカーみたいなものが付いていて、もう片方の先端には体にひっつけるようなパッドが付いているな。マッドドクターのやつ。これをスライムにつけてスピーカーと有線接続するつもりだったのか。パッドを貼り付けるくらいなら、まあダメージもないだろうし……よし。ここはマッドドクターにならってわたし自身の体で確かめてみるとしよう。
このパッドをわたしの体に貼り付けてと……どこに貼り付けようかな。額に貼る……変化なし。お腹に貼る……変化なし。それもそうか。これはスライムがレーザーで撃たれた時に発生する何かを検出する装置だもんね。レーザーで撃たれたいないわたしからその何かが検出されるはずもないか。
それにしても、このパッドだけど……なんだかわたしのおっぱいに貼り付けたらおっぱいが大きく見えそうな形をしているわね。体に貼り付けるのが目的だから山なりアーチみたいな形をしているのかもしれないけれど、その形がなんともわたしのおっぱいに似ているような……
このパッドで胸を大きく見せれば、マッドドクターのやつも実験や数式じゃなくてわたしに注目するかも……なんでわたしはマッドドクターに注目されようとしているんだ。ま、まあ、ものは試しだからこのパッドをわたしのおっぱいに装着してみるか。それっと。
ガガピピ
あれ? わたしがパッドをおっぱいにつけた途端にスピーカーから音が出だしたぞ。レーザーで撃たれてもいないのに、なんでこんなことになるんだ。マッドドクターのやつに聞いてみよう。おーい、マッドドクター……あ、わたしのおっぱいパッドから出てる銅線に足が引っかかっちゃった。
どんがらがっしゃん。かちゃり、ピカピカッ
「もう、何してるんですか、マオウ課長さん。エレクトロビームガンを乱射しないでくださいよ。スライムさんのディスプレイのいろんなところが光っちゃってるじゃないですか。実験の邪魔をしないでくださいよ。ただでさえシスさんの時間魔法とエビルさんの空間魔法の制御がうまくいかない状況ですのに」
「ごめんなさいね、マッドドクターさん。銅線に足を引っ掛けて転んじゃって。その時にエレクトロビームガンのトリガーを引いちゃったみたい」
「気をつけてくださいよ、マオウ課長さん。怪我はないですか。それにしても、銅線に足を引っ掛けて転んじゃうなんて案外おっちょこちょいなんですね。そんなことで人間征伐ができるんですか?」
モンスターであるわたしの体を心配してくださるのはありがたいんですけれどね、マッドドクターさん。『人間征伐ができるかどうか』なんて人間のマッドドクターさんに心配されましてもねえ。
「で、エレクトロビームガンから発射されたビームにスライムさんが当たって発光したわけですか……おかしいですね。エレクトロビームガンは床に転がってる。それなのにディスプレイの上段部分のスライムさんが発光している。床に転がっているエレクトロビームガンから放たれたビームに反応したのなら、床の近くの下段部分のスライムさんが発光するはずでは。マオウ課長さんが転んだ時にエレクトロビームガンが跳ね上がっていたのかな。マオウ課長さん。もう一度エレクトロビームガンのトリガーを引いてもらえますか……マオウ課長さん、胸元から銅線がごあいさつなされてるんですが」
あちゃあ。マッドドクターにわたしがこっそり音声スピーカーと有線接続していたことに気づかれちゃった。なんだかイタズラしているところを見つけられた子供みたいになっちゃた気分……ガガピピ
「ん? 今スピーカーから音がしましたか。検出用のパッドはマオウ課長さんの胸元に装着されているんですよね。それでスピーカーから音が出ている。レーザー銃からのレーザーもエレクトロビームガンからのビームもマオウ課長さんには当たっていないようですのに、スピーカーから音が出ている。となると、マオウ課長さんの胸元から銅線を伝わる何かが発生していることになりますね。モンスターのマオウ課長さんにも心臓ってあるんですか?」
あるわよ。と言うよりも、あんまりひとのおっぱいのあたりをしげしげと眺めつつパッドがどうのこうの言って欲しくないんですけれども。
「少なくともわたしには心臓がありますよ、マッドドクターさん。全部のモンスターにあるわけじゃあありませんけれども」
「なるほど、マオウ課長さんには心臓がある。そして、そのあたりから発生したものを検出してスピーカーから音が出たと。ならばそれはおそらく電気的なものでしょうね。放電管やスライムさんにレーザーを当てた時に発生する電気と同じものがマオウ課長さんの心臓からも発生してると考えていいでしょう」
そんなものがわたしの心臓から発生していたのか。それにしても……
「マッドドクターさんは自分ではこのパッドを体に当てて実験なさらなかったんですか?」
マッドドクターのやつなら、スライムに試す前に自分で試していそうなものなのに。
「試したんですがね、ほら、そのパッド……弓なりのアーチ型でしょう。わたしの胸の形状にはフィットしなくて……だから音声スピーカーから音が出なかったんじゃあないですかね」
そういえば、マッドドクターの胸って、ひらたい……
中間管理職マオウちゃん 部下のスライムはチートモンスター? @rakugohanakosan
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。中間管理職マオウちゃん 部下のスライムはチートモンスター?の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます