第1-2話 女子がひとり、付き添っていた

 女子がひとり、付き添っていた。髪は濃赤のほれぼれするような色で、冷ややかな微笑を浮かべていた。青水鼬の肩掛けは高級車がありきたりの車に見えるほどだった。それは言いすぎだ。そんなものはあり得ない。

 係員はよくいるような、やくざ者くずれだった。白い外套の腹には赤字で店の名前が刺繍されていた。男はうんざりしてきていた。


There was a girl beside him. Her hair was a lovely shade of dark red and she had a distant smile on her lips and over her shoulders she had a blue mink that almost made the Rolls-Royce look like just another automobile. It didn't quite. Nothing can.

The attendant was the usual half-tough character in a white coat with the name of the restaurant stitched across the front of it in red. He was getting fed up.


distant smile…よそよそしい微笑 このあとにlipsと複数形になるんで「唇」ではなく「口」なんよね。それは訳さなくてもなんとかなる。英英辞典によると、このdistantは「Aloof or chilly(よそよそしい、あるいは冷ややかな)」だそうなんで、chillyのほうを採用します。


just another…ありきたりの

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