長久別離(おれのロング・グッドバイ)

るきのるき

第1-1話 はじめてテリー・レノックスに会ったとき

 はじめてテリー・レノックスに会ったとき、あいつは盧氏の銀霊号の中で酔い倒れていた。車は高級酒館「踊子林」の露台外だった。駐車係がドアを開けたまま車を出したのは、テリーが左足を忘れているかのように外に出していたからだ。顔は若々しかったが髪は骨の白さだった。へべれけなのは目でわかるとはいえ、夜会服をまとった洒落た普通の若者だった。金を使わせるためだけの曖昧場で、金を使いすぎただけの若者だ。


The first time I laid eyes on Terry Lennox he was drunk in a Rolls-Royce Silver Wraith outside the terrace of The Dancers. The parking lot attendant had brought the car out and he was still holding the door open because Terry Lennox's left foot was still dangling outside, as if he had forgotten he had one. He had a young-looking face but his hair was bone white. You could tell by his eyes that he was plastered to the hairline, but otherwise he looked like any other nice young guy in a dinner jacket who had been spending too much money in a joint that exists for that purpose and for no other.


terrace…テラス ベランダとはどこが違うのかというと、屋根の有無(ないほうがテラス)らしいです

joint…ジョイント 俗語として、いかがわしい場所

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