第13話 新たな出会い(2)

 ガッツポーズを採っていると、ハルが話を続けた。


「でも、無償で力を貸すのは、わたくしとしても不本意。代償としてわたくしとパーティーを組んで頂きます。わたくしの目的を果たす手伝いをしてもらいたいの。実は、わたくし、あなたがたのジョブ判別の声を聞いておりまして――。是非、パーティーを組みたいと考えておりましたの」


 あれだけ騒げば、僕たちが相当な職業に就くのはバレて当然だ。


 この件については僕、個人の判断では決めかねるな。


「明日香、どうする? 職業に就いた後、ハルと行動するか?」


「絶対に嫌!!」


 即答かよ。


 こんなに丁寧に話を聞いてくれて助けてくれるって人に、何て態度だ。


 明日香は両腕を偉そうに組んで、なぜかハルを睨みつけていた。


 これでは、僕がどれだけ好印象でも、明日香の態度でマイナス印象確定だ。


 でも、明日香とは長い付き合いだ。


 コイツがこんな態度を示すのは、本当に簡単な「理由」がある。


 思い当たる節があるから、恥ずかしながら聞いてみる。


「明日香、もしかしてだけど……。僕がハルに浮気するかもしれないから駄目って理由かい?」


 明日香が僕の顔を殺気立った表情で見つめる。


 この表情は正解だ。


 明日香の奴、僕が他の女の子と一緒に行動するのが嫌だから乗り気になれなかったな。


 理由は「浮気されるかもしれないから――」。


 どれだけ信用ないんだよ?


 ハルに微笑んで「少し失礼」と語る。


 仕切り直しに、明日香を冒険者ギルドの端に引っ張って行く。


 そこで全部を解決する想いで話を切り出した。


「明日香、僕を信用していないな? 大丈夫だよ。僕は明日香がどんな子よりも大切だ」


「ハルって子、私より胸、大きかった」


「その部分で僕を信用していないのか!」


「だって、だって! 豊は乳魔人よ! 豊の隠し持っているエッチなDVD全部女優さん胸大きいし!」


「君は僕の部屋を漁ったな! 油断も隙もあったものじゃない!」


「エッチの時だって私の胸を視て、ため息吐くでしょ!」


「勘違いだ! 僕はその一点だけで彼女を決める本当のゲスとは違う!」


「本当?」


「当然だ。君の思い込みを知って僕が傷ついたよ」


「なら、許す!」


 許すのか~い!


 猫みたいな彼女様だ。


 ハルの前に改めて二人並んで戻る。


 明日香がハルに向かって初めて口を開く。


「ごめんなさい! 私が一人我儘言っていました! 力を貸して下さい! 当然、あなたも困っているみたいだから私も最後まで力を貸します!」


「そんなに気にしないで良いのですわ。あなたも、この世界に来て色々あったのでしょう?」


「まぁ、そんなとこ。でも一つ約束があります。絶対に守ってね!」


 ハルが笑顔で「何?」と優しく訊ねてくれる。


「胸があるからって、私の豊に手を出したら……、刺す」


 明日香さん、怖い!


 特に目が笑っていない本気の表情が特に恐怖感に輪をかけている!


 最後の最後にそんな台詞吐かなくても良いでしょ!


 ハルが引きつった笑いを浮かべているよ!


 こうして、明日香が闇落ちしたり、新しい仲間ができたりと、ユーグの冒険者ギルド内は真夜中でも騒がしかった。

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