勇者の旅立ち:中筋 久恵 なかすじ ひさえ
女性
61歳
ソムリエ
適応力:135
女神からの声が頭に響く――
「あなたは王様です。
勇者に気前のいいところをいっぱい見せてあげて。
金貨50枚くらいあげちゃってもいいわよ~。
あ、さすがに周りが止めるような、『国をやる』とかはやめておいてね」
憑依先:国王
■■■テンセイ■GO■!■■■■■
(説明から入る夢って何……)
久恵がそう思いながら転生すると、全員が彼女を見ていた。
(え、あ……そうだ、王様って言われたんだ)
手には宝剣を持ち、振り上げて立ち上がっている。
久恵はなんだか恥ずかしいので、ひとまず座り、
「金貨50枚を取らす」
と言ってみた。
ぽかん、とする広間。
「ご、ごじゅう……」
勇者が唖然としてつぶやき、
「王様……いったいあなたは……?」
信じられないといったふうに見つめる。
その勇者を正面から見て、久恵は思った。
(何この人、すごく目つきが悪い)
そう、この勇者は見た目、凶悪な人相をしているのだ。
憑依転生という白昼夢を見ている久恵とは異なり、勇者は前世で命を失っている。
人相の悪さで損をしまくった前世から解放されたと彼は一瞬喜んだのだが、転生後に鏡を見ると、そこには変わらぬ凶悪犯(前科なし)がいた。
可哀想なことに、転生してもなお、前世での人相が引き継がれていたのだった。
それはともかく、
広間はまだ、ぽかん、としている。
(反応がない……どうしよう)
久恵は不安になったので、
「やっぱ金貨100枚にする」
(倍ならどうだ!)
兵士たちがざわつきだす。
「何が起こってる?」
「一瞬よろめかれたように見えたが、王に何が?」
勇者は殺意に満ち満ちた顔で久恵をにらんでいたが、これはただの困惑の表情である。
(ひっ、どうすればいいの? 何あげれば喜んでくれるの?)
「こ、この剣も与えよう」
宝剣を追加してみた。
■■■オツカレ■サマ■デシタ■■■
――憑依者が元の世界へと戻り、そして神界。
「ちょっ、これどうなるわけ?
王様に入れるなんて超ラッキーと思ったけど、戻ってから『言ってない』ってなったらそれでおしまいじゃない?
あ~、なんかミスったかも~」
リレー転生 ~憑依転生の大量投入で勇者の行動を全力サポートせよ!~ かえる @qaeru
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