最終話 実話? 異世界異聞

 日常生活を取り戻したある日、僕は、久しぶりに「猫の家」に、一人で飲みにきた。僕は、カウンターに座った。隣には、かみやさん。今日は、満員でマスターも忙しそうだ。



「お待たせ、岳、飲み物何にする?」


「生ください。」


「はいよ」




 そう言えば、かみやさん隣に座るの久しぶりだ。


「かみやさん、久しぶりです」


「おう、岳君久しぶり。元気だった?」


「はい、元気です」





 そこから始まった。かみやさんの話、最近食べたラーメンの話。そして、仕事が忙しい話。最近は20連勤だそうだ。そう言えば、20連勤すると「鋼の連勤術士」に慣れると聞いたような、聞かないような。



 それに、対抗して僕も話を挟む。史華ちゃんの話をすると、かみやさんは、史華ちゃんの巨乳と顔を凄く誉める。しかし、手つきがやらしい。やめて欲しい。



「俺も若い頃はもててさ~。あれだよ、もう俺が退学くらって学校辞めさせられたら、一緒に退学した女の子がいたくらいだからさ」


「へー」


「でも、最近ももてるんだぜ。リンダに、カレンに、ホウラン。いろんな店の女の子が電話してきて、大変なんだよ」


ん? それってお店の営業電話じゃないのか? そして、みんなどこの国の人だ?


「良いですね。もてるってうらやましいです。僕なんて、はじめての彼女ですし」


「そうか、まあ、頑張れよ」


「ありがとうございます」


やたら上から目線だけど気にしないようにしよう。




 そこで、僕はふと、かみやさんに異世界の話をしてみる気になった。



 僕は簡潔に長くなり過ぎないように、異世界の話をしてみた。道場ごと転移したこと、向こうで、召喚魔術を覚えベヒモスに出会ったこと、そして、武闘家の能力、忍者の能力を獲得して無双した話。だけど、仲間が大魔王になって、他の仲間が殺された話、そして、最終的に、大魔王を倒して帰ってきた話。



 まあ、信じられない話だよね。しかし、珍しくかみやさんは、真剣に聞いてくれた。そして、僕が話終わると大きく頷いて言った。



「そうか、異世界か、俺も行ったな? 何年前だったかな? そうか、結婚当初だから二十年前か」


「えっ? かみやさん異世界行ったことあるんですか?」


「ああ。はじめてだったから、凄く楽しかったな。青い海に、白い砂浜」


「ん? どうやって行ったんですか?」


「そりゃ、飛行機に決まっているだろ」


「はい?」


「俺さ、向こうでフィリピン人に間違えられて、タガログ語で話しかけられてさ。わからないっていうの。まあ、だけど飲み屋で女の子達にもてまくってさ。あっ飲み屋って言ってもあれだよ。ほら、女の子達がいっぱいいて、相手してくれる飲み屋だよ」


「えっ、はい」


「楽しかったな異世界。また行きたいよ」



「かみやさん、そこの場所わかります?」


「ああ分かるよ。馬鹿にするなよ、地図くらい読めるんだから、フィリピンのセブ島だよ」


 駄目だ、こりゃ。

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異世界転移したら、召喚魔術師で、武闘家で、忍者でした。 刃口呑龍(はぐちどんりゅう) @guti3

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