第22話 エピローグ

「はい、いらっしゃーい。って岳、大丈夫だったのか?」



「すみません、ようやく退院したところです」





 僕達の事はニュースになって新聞にのった。




「大学道場で謎の爆発事故? 行方不明者数名。重軽傷者数名」







 異世界から戻ってきた僕達は、道場部分が綺麗に無くなった、剥き出しのコンクリートの上に倒れていたそうだ。





 こっちの世界での認識としては、凄まじい光と大きな音がして、建物が揺れたそうだ。だが、まわりの建物は揺れておらず、警備員さんが、恐る恐る確認するために、下に降りると、道場が綺麗に無くなっており、僕達が倒れていたそうだ。



 警察と救急車が呼ばれ、僕達は病院に運ばれ、警察が現場検証を行った。僕達は、外傷なし、極めて健康。と、病院で診断を受け、検査入院のために、数日入院の予定であったが、警察の警視庁刑事部捜査第一課特殊事件捜査係という人達に、捜査を受け、退院出来なくなった。



「大学のあの場所で、何があったのかな? 行方不明になった人は、どこに行ったのかな?」


 僕は、正直に話した、道場と共に、異世界転移したこと、勇者に選ばれた者もいて、一緒に修行して、魔王を倒す為に、迷宮に潜ったこと、仲間の一人が、実は大魔王で、その為数人が亡くなったこと、いろいろ苦労はしたが、最後は大魔王を倒し戻る方法を探して、帰ってきたこと。起きたら、病院だったこと。



 嘘発見器と言うのか? あれもいろいろな種類があるようだ。何度もかけられたが結論は


「嘘は言っていません」


 捜査官は悩んだようだ。僕の話すことは、現場の状況と矛盾しない、そして、嘘も言っていない。だが、こんな報告を上層部にあげるわけにはいかない。



 そこで、彼らの出した結論は、おそらくは、昔の化学兵器かガス兵器の不発弾が、破裂して、巻き込まれた数人が溶かされた、道場も、その兵器によって溶けた。そして運良く影響がなかった人が数人いたと。



 なんじゃそれ。という感じだが、世間一般もそれを信じた。長期入院したのは、特殊な化学物質の体内からの除去と。



 僕達は、警察の情報操作で、大ニュースになることなく、こっそりと退院した。



 その時の捜査官の疲れきった顔と


「まあ、君たちも頑張って」


 という言葉が忘れられない。









「そうか、大変だったな。で、今日は何人?」



「はい、6人なんですけど、大丈夫ですかね?」


「奥のテーブルきついけど。いいかな?」


「はい、大丈夫です」



 あれから3ヶ月たった。あれからというのは、僕達が転位してからと言う意味だ。異世界にいた時間はもっと長く、こっちに帰ってきたのは、直ぐで、入院して、取り調べ?受けていた期間がほとんどだ。





 僕達は、異世界に行って、そして、魔王を倒す為に戦って、それが、嘘で逆に大魔王を復活させ、そして、それをなんとか倒して。いや、魔王カインの手助けがなければ、負けていたのは僕達だっただろう。



「わたしは、強い者が好きです。そして、下衆で卑怯な者が嫌いです。ククク」



 そして、大魔王となったシロウを、倒した。元に戻す方法を探したのだが、結論は無理だった。本人が、元に戻りたければ、方法があったのかもしれないが。



 それから、洗脳されていたみんなを救って、元の世界に戻る方法を探した。精霊の導き手が作った、シェイム王国の王立の召喚魔術研究所の研究員さんにも手伝ってもらって、僕達の世界の場所の特定そして、そこと異世界を繋ぐ方法。そして、帰還方法。



 結論は、研究員の皆さん優秀。あっさりと、僕達の世界を見つけ、そして、世界が近づく日を特定し、道を繋ぎ、そして、大きな力で無理矢理穴を掘って帰る。そう、土の聖霊王ベヒモスが僕にはいた。だけど、僕達の世界では存在できないし、第一空間に無理矢理穴を掘るのには、物凄い力を消費する。途中で消滅してしまう可能性もあるそうだ。



 危険でもあり、ベヒモスの消滅を意味する帰還方法。僕は正直悩んだ。しかし、



「主殿、我々も手伝うよ。ベヒモスだけに良い格好させないぞ」



 炎の聖霊王イフリートが、風の聖霊王ジンが、水の聖霊達が力を貸すことを主張した。そして、



「主殿、わしも行くぞ、主殿の世界へ」



 こうして、帰還プロジェクトが成功して、僕達は帰ってきた。そして、ベヒモスは、



「主殿遅くなった」



 僕の頭の中に声が響く。僕は入り口の方を見る。すると、史華ちゃんが入ってくる。


「岳さん、遅くなりました」



 僕は、史華ちゃんの巨乳を凝視する。そして、手を伸ばす。そして、摘まむ。



「主殿、何をするのだ」



 史華ちゃんの巨乳の上で跳ねている。物体を僕は摘まみ上げ、そして、扉を開けると、おもいっきり放り投げる。



「岳さん、ノノちゃん、死んじゃいますよ」


「大丈夫、大丈夫。ベヒモスはそんなに脆くないよ。それに、飲食店で、動物禁止」


「そうですけど」


「あの、エロ聖霊王」


「岳さん、嫉妬してます? 大丈夫ですよ。わたしの胸直に触ったのは、岳さんだけですから」


「えっ」


「あっえーと、良いかな? 注文何んにする?」


「史華ちゃん、何にする? 僕は生で」


「わたしは、前飲んだ日本酒あります?」


「あるよ」


「じゃあ、お願いします」




 開店間際の店内は二人きり、常連さん達も来ていない。マスターも加わり他愛もない話に花が咲く。



「トゲトゲって虫がいるんだけどね」


「へー」


「で、学者の人が調査をしていたら、どうも種類がおなじで、トゲがない、トゲトゲがいるぞってなったんだよ」


「えっ、トゲがないトゲトゲ?」


「ああ、そこで学者さんはそれに、トゲナシトゲトゲって名付けたんだけどね」


「トゲナシトゲトゲってトゲトゲの存在感、なくなっちゃいますよ」


「だよね、でもそこで話は終わらなかったんだよ」


「えっ」


「良く種類を調べて見ると、今までトゲトゲって思っていた中に、トゲナシトゲトゲの亜種がいるぞってなったんだよ」


「えっ、えっ? トゲナシトゲトゲの亜種?」


「うん。それは、トゲのあるトゲナシトゲトゲだと」


「えー!」


「そして、つけられた名前がトゲアリトゲナシトゲトゲ」


「えー! ホントですか?」


「アハハ! もう意味不明」


「良かった笑ってくれて」


「えっ、なぜですか? 面白い話ですよ」


「いや、常連さんに話したら理解できなくてさ~。まあ、とにかく岳が戻ってきてくれて良かったよ、うん」


「はあ?」






 そんな感じで、話していると、大が、凛花ちゃんが、翔太が、そして最後に由依がやってきた。



 本来4人がけのテーブルに6人が座る、ぎゅうぎゅうだ。だけど、嬉しい。それぞれにお酒が配られる。僕は、ビールジョッキを持ち上げ、



「まずは、田城に」


「あゆみちゃんに」


「史郎に」


「春田に」


「柿本先輩に」


「茶木先輩に」


「っておい、茶木先輩死んでないから」


「そうだっけ?」


「そうなの!」


「じゃあ、気を取り直して、献杯」


「そして、乾杯!」


「乾杯!」





 共に戦った友との帰還の乾杯。僕達は、忘れられない時を過ごした。そして、帰ってきた。久しぶりの飲み会に、ちょっとはめを外した。いや、かなり?



「しかし、良く帰ってこれたよな~」


「ですね。これも岳さんと、ノノちゃんのお陰です」


「いや、僕一人じゃ出来なかったよ、みんなで協力したからだよ。エロ聖霊もありがとう」


僕は、窓に張り付いているノノに、ちょっとだけ窓をあけ、ミックスナッツのナッツをあげる。ノノは、ナッツを齧りだす。



「主殿、うまいぞ、これ」




「そうか、ノノはついて来ちゃったんだよね。帰りたくないんですか?」


「主殿、帰りたくなどない」


「帰りたくないって」


「そうなんですね」


「史華ちゃんの巨乳気にいっているしね」


「ノノと岳の巨乳争奪戦だな」


「大さん、下品です」


「ハハハ、そう言えば翔太は、どうだった異世界?」


「特には、あっ一つだけ、麺がなくて辛かったです。俺、麺好きなんで。後、由依先輩と付き合うことになりました」


「あっ、そうなんだ…て、えー!」



皆知らなかったようだ、大も、史華ちゃんも、凛花ちゃんも驚いている。


「だって、6人グループでカップル2組いて、わたし達だけ違うって結構辛くて。流れで」


「いや、驚いた。まあ、おめでとう」


「ありがとうございます」


「その、ありがとう」


そのうち常連さん達も集まってきた。かみやさんが、たくさんがそして、口々に


「おー、岳君達、久しぶりだね。何か新聞見てびっくりしたよ。でも無事で良かったね」


とか、


「あれ、久しぶり。何だっけ、あーあれだ、爆発事故、大丈夫だったんすね。マスター凄く心配していたんですよ。でも、良かった。無事を祝して一杯奢りますよ」


「おー、たく、何、気前いいね」


「明日、給料日なんで」


とか、他のみんなにも無事であったことを、喜んでもらった。本当に暖かくて良い場所だ。ここは。




 僕達は、閉店まで飲んで近くの僕の家に転がりこんだ。狭い!

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