第21話 ガクVS魔王カイン

「良くここまでたどり着きました。強き者よ」


「お前は、悪魔公爵、悪魔王カイン!」


「おお、良く覚えておいてくださいました。感謝致します」


「フミカちゃん達をどうした!」


「どうもしておりません。洞窟の外におります。わたしは、あなたと戦いたいだけ」


「僕と?」


「はい、わたしの望みは強き者と戦うことのみ。卑怯者も、下衆も好きではありません」


「それって、どういう意味だ?」


「おっと、しゃべり過ぎたようです。後は、剣と剣で語り合いましょう」



 と言いながら、カインは剣を抜く。



 僕は、



「土の聖霊王ベヒモス召喚、体に宿れ!」



 全身に力がみなぎる。桁違いの防御力、そして、体力を得る。



「炎の聖霊王イフリート召喚、手に宿れ!」



 手全体から、炎があがる。しかし、熱くはない。そして、手に凄まじい攻撃力を得る。



「風の聖霊王ジン召喚、足に宿れ!」



 足元を暴風が走り抜ける。そして、僕の足は、凄まじいスピードを得る。




「待たせたな。行くぞカイン」


「いえいえ、では、やりましょう」




 カインが猛スピードで突っ込んでくる、そして、途中で4体に別れる。えっ何?



 僕は、4体のカインの攻撃を必死に防ぐ、しかし、速い動きを目で終えない。僕は目を瞑る。すると、カインは分身したわけではないことをさとる。僕は、本物のカインの振るう剣のみを捌き、僕が徐々に押し返す。



「ククク、やりますね。戦いの最中に目を瞑る。普通は出来ませんよ」


「ありがとう。だけど、もう通用しないよ」


「さて、それはどうでしょう」




 カインは、再び4体に別れる。そして、攻撃を開始する。もう分かっているのに、僕は目を瞑る。そして、気配のするカインの攻撃のみを捌く。しかし、僕はカインの剣を弾くが、剣が消える。そして、背後から刺さる。ベヒモスで、強化された体でも少し痛い。



 何だ? 何が起きてるんだ?



 僕は今度は目を開けてカインの動きを追う。すると、カインの剣が時々消えて、背後から現れる。そうか、カインは、悪魔。異空間攻撃も得意だったな。えっと、異空間攻撃を防ぐ方法はっと。



 僕は、特殊スキル「影」を使って、異空間をつぶしつつ戦う。結構つらい。さすがに、そういう能力では、負けているようだ 。





 相手の土俵で戦っているのはまずい。



 僕は、自分から攻撃に出る。



「炎王爆熱拳!」



 周囲に猛烈な熱気と爆風が吹き荒れる。カインは、すんでのところでかわすが、体勢をくずしている。僕は、連続で、攻撃をくり出す。



「風王烈風蹴!」


「土王重戦弾!」



 蹴りと、ボディーアタックなのだが、聖霊王の力の加算された蹴りと、ボディーアタックは、カインに命中して、吹っ飛んでいった。



「ククク、強いですね~。ですが、まだです」



 そう言うと、カインは消えた。今度は異空間バトルか? しかし、相手の得意な戦法では戦わせない。僕は異空間に手を突っ込むと、



「炎王爆熱拳!」



 異空間の中を炎で焼く。すると、カインは慌てて姿を表した。



「逃がさないですよ」


「ククク、やりますね」




 そして、再度僕とカインは激突した。





「ククク、わたしの負けですか。さすが強き者。ますます好きになりました」


「あなたも、強かったですよ」


「ありがとうございます。」




 悪魔王カインが、ぼろぼろになった洞窟の中で、倒れている。僕は、傷だらけだが、なんとか立っている。そして、カインは負けを認めた。どうやら僕の勝ちらしい。





「では、皆さんを戻しましょう」



 カインは手を上にあげると指を鳴らす。すると、空間が歪み、皆が現れた。ダイが、フミカちゃんが、ユイが、リンカちゃんが、ショウタが、ナオミちゃんが、そして、ヒサトが。



「あれっ、ガク先輩、どこにいたんですか? 心配したんですよ」


「ごめん、ごめん、でも、僕じゃなくて、そこで倒れている、カインの仕業だからね」


「えっ、カイン? ってガクもう戦ったのか?」


「ああ、強敵だったけど、なんとか倒したよ」


「凄いね。うん、何かわたし達役立たず?」


「そんなことない」


「そうだと良いんですけど」



 と、ダイがカインの方に一歩踏み出して聞いてきた。


「で、ガク、カインはどうするんだ?」


「ククク、敗者は消え去るのみ、早く殺しなさい」


「いや、別に殺さないよ。ただ、僕達に2度と手を出さなければね。僕は命助けられてるし、情報くれたのもカインだし」


「ククク、助けたわけではありませんよ。強き者と対等な状況で戦いたかっただけですから」


「それでもね。僕はカインを助ける」


「だけど、また、襲ってくるかもしれないぞ」


「その時は、その時、また倒せば良いだけ」


「ククク、なるほど。わかりました。うん、実に心地よい。強き者よ。わたしは、あなたにつきます。そして、大魔王シロウを倒す!」


「えー!」



 僕達の声がハモる。そりゃそうだ。悪魔公爵、魔王カインが裏切って、大魔王シロウと敵対する? とても信じられない、けど。あり得る。この男なら。



「ククク、大魔王シロウも魔王神官エンリルも、実に気にくわないんですよ。戦いを挑んできた勇気ある者達を罠に嵌め殺したり、ゲームと称して国を滅ぼしたり、実に姑息で、下衆」


「シロウ達、そんなことしてるんだ?」


「ええ、大魔王の拠点周囲の国はすでにいくつか、滅んでますね。男は殺され、女は慰みもの、実に下品。優雅さのかけらもありません」


「わかった。じゃあ、僕達と共に戦ってくれるんだね?」


「はい、強き者よ。わたしと、我が悪魔軍団をあなたと、あなたの仲間達の力としてお使いください。」





 こうして、悪魔公爵魔王カインと、悪魔軍団は僕達の仲間になった。



 はっきり言って、悪魔軍団は強かった。待ち構えていた、魔族軍や、竜軍団は彼らの助けなしに突破出来なかっただろう。




 僕達は、東に向けて旅を進めた。大魔王シロウを倒し、元に戻す、洗脳されているみんなを助けて、元に戻す。そして、みんなで、元の世界へ帰る。



「ガク先輩、みんなで帰りましょうね」


「ああ、絶対帰る」


「はい、ああ。元の世界へ帰ったらみんな元通りになってくれると良いのにな。田城君達も生きてて、誰一人かけることなく、筧君も、大魔王の記憶何かなくて」


「そうだね。そうなるように頑張るよ」


「ガク先輩だけで頑張らないでくださいね。わたしも、ううん、ダイ先輩も、ユイ先輩もみんなを頼ってくださいね。頼りないかもしれないですけど」


「わかったよ。フミカちゃん、何か困ることがあったら、ちゃんと頼るよ」


「はい」

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