応援コメント

『上』 あいつが読んでいた本があったんだ。」への応援コメント

  •  カクヨムを初めて利用し初めてコメントを書かせていただきます。思ったことを正直に述べさせていただきます。
    ・全体の感想
     エピソードとしては大変好ましく思いました。本を読めない少女が、本好きな少年と同じ本をつい購入してしまうという導入部は、爽やかで少女の衝動をよく表しているなあと感じました。その後、本の読み方を少年に教えてもらう一コマ。とても初々しく、素敵なエピソードでした。二人の恋の行方を見守っていきたい気持ちにさせられました。二人とも、特に少女が一生懸命で、とても好感をもちました。
    ・細かな部分の感想(主に気になったことについて)
     一つ目は、特徴的なルビの振り方についてです。ふりがなに漢字のルビを当てるという独特の方法で試みとしては面白いと思いました。他の方のコメントにありましたが、少女が漢字が読めないからこのようなルビということがありましたが、この小説は「私」という一人称小説ですので、私の視点の言葉に漢字が分からないのに漢字のルビを振るのは不適切なように感じました。一人称小説では、漢字のルビを振る事ができるのは、私がその漢字を知っているからです。また、漢字のルビを振らなくても読者は、ひらがなで書かれた意味を理解できます。作者の親切が読者への不親切(もっと言えば読者への侮り)となっているなあと感じました。
     二つ目は、冒頭の文章についてです。「あいつが教室で読んでいた本だ。駅の本屋の棚の中にあった、分厚い本を手に取ってページを捲った。」と始まりますが、「あいつが教室で読んでいた本だ」の始まり方はとても良いなと思ったのですが、続く文章で「駅の本屋の棚の中にあった、」となり、「の」の連続に加え不必要な「、」が入り、かなり読むリズムが崩れました。冒頭は、映像が流れるように描写していただきたいなあと感じました。「駅の本屋の棚にあった分厚い本を~」でも十分に伝わりますし、なんなら「駅の本屋にあった分厚い本を~」でも可だと思います。もう少しつけ加えて言うと、「あいつが読んでいた本だ」の後、少女の行動として本の背表紙を見つめて欲しいのです。好きな男性の本を見つけた時、一瞬「あ」と思うでしょう。その一瞬の「あ」の間を、本の背表紙を見つめる少女の描写で描き、その後、本を手に取る、という動作につなげてほしいなあと思いました。また、これは私もどちらが良いか判断しきれていないのですが、なぜあいつが読んでいた本だと判別したのか(後にタイトルだと明かされるわけですが)、その理由はもっと早く冒頭の方に欲しいのかなと感じました。タイトルという情報は、わざわざ後に引っ張るほどの理由でもないですし、この本は少女にとって男性を象徴する具体物なのですから、本のタイトルが視界に入った瞬間、それと識別できるはずで、だとしたら、タイトルを見た瞬間、処女の気持ちが高鳴るなり、男性の姿を思い浮かべるなりすると思います。
     三つ目、「ワイングラスの持ち手のように薄い唇は」という表現は、高校生の少女の思いつく比喩としては、違和感がありました。
     四つ目、「内心で頭を抱えて手足をバタつかせて暴れまわったけど、それとは真逆に冷静な指先は財布の中からお金を手繰り寄せていた。」ここの表現の意味分かりませんでした。いえ、文の意味は分かるのですけど、「好きな人の読んでた本だから手に入れたいという衝動」と「1500円もするものを買うのは金銭的に厳しいという理性的な判断」の狭間で揺れ動き、それでも気が付いたら購入してしまっていた、という少女の感情と行動を表現するには、だいぶ違和感がありました。「指先が冷静」という表現からは特に少女の「好きな人と同じものが欲しいという衝動」がすっぽり抜け落ちてしまっているように感じました。ただ、私の想像した少女の「衝動と理性」という心情は、主に「『1500円です』 ああ……、ああ!? なに買ってるんだ私は!」という表現から考えたことなので、作者様の考えと違っていたら申し訳ございません。
     五つ目、「250円前後で切り売りされる非現実的な愛の歌。~」についてです。表現としてはとても面白く、印象的でした。ただ、いきなりボンとこの表現がくるので、途端に物語世界から引き剥がされ「作者」の顔が見えてしまいました。「私」の考えではなく「作者」の考えなんだろうなあと思ってしまいました。もちろん、「私」の考えとして書かれているわけですけれど、それが「私」の考えだという説得力がないのです。もっと私の行動や場面で説得力をもって見せて欲しかったです。つまり、この話はこの長さでは不適切ではないか、ということです。ただ、私は250円で切り売りされる非現実的で仮初の愛の概念を持ち歩いていてその現状に、世間への気持ち悪さや自身の納得のいかなさを抱えていて、私だけの本物の愛の概念を探し求めている私は、1500円の本を購入することで本物の愛の概念を見つけにいける、と私が思うというラストに繋がるという展開は凄いなと思いました。(※あくまで私の感想です。作者様の考えと違っていたら申し訳ございません。)
     六つ目、「そう。なんてーのか……、こう、開いた瞬間に黒いじゃん? そしたらなんか溺れそうになるっていうか。息が苦しくなるんだよね」「文字に溺れるってこと? 表現の仕方が小説家みたい。小説好きなの?」「いやだから読めないって言ってんじゃん」「そっか」。この会話のやり取りは、笑いました。とても良かったです。開いた瞬間に黒いという少女の表現も、本が苦手な人の見方を良く表しているなあと思いました。
     七つ目、全体としての感想になってしまいますが、この「私」が文章が読めないわりに難しい言葉の使い方、表現の仕方をしているのに違和感がありました。「私」独特の考え方はあってもいいかと思います(250円の~から始まる愛の概念についてなど。ただ、この部分の問題点は説得力だと思いますが)。しかし、難しい言葉を知っているのは、言葉に関心がある人ですので、この少女がそういう人物とは思えません。例えば、「あまりに白く無気力な顔から、無機物だと感じるほど人間味のないやつ」という表現で最初に思いました。この少女が表現するなら、「無機物」ではなく「ロボット」とか「機械」とか、そっちの方かなと感じました。ただ、純粋に文章だけ見ると「ロボット」よりも「無機物」とした方が優れていると思います。ただこの少女に相応しくない表現だなと感じるのです。

    長々と書いてしまい、また失礼な物言いもあったかと思います。申し訳ございませんでした。私の意見など「そう思う人もいるのね」くらいに軽く受け止めてもらえると助かります。私も自分の意見の正しさに自信を持てません。ただ、面白いと思ったのは事実です。読んでいる時は胸が高まる感じがありました。今後もご活躍に期待しています。ありがとうございました!

    作者からの返信

    azarashiさん
    コメントありがとうございます!

    作品世界の隅の隅まで目を通してくださり、また美点も欠点もつまびらかに仰ってくださりありがとうございます!
    これほどの文章量ですから、相当時間が掛かったのではないかと思います。
    というか、本文より長いのではないかとすら思います。
    ひたすら圧倒されるばかりですが、一つ一つ自分の中に落とし込み、次作へとつなげていきたいと思います。
    仰られていることはすべてその通りだと思いますし、自分自身がもっとぐっと作品世界に入り込めるよう、また読んでくださった方が一抹の違和すら抱かせないような世界を創れるよう、精進してまいりたいと思います。

    心より感謝いたします。
    「失礼」「申し訳ない」と仰っていますが、滅相もございません。
    ただただ感激しております。

    ありがとうございました!

  • 読んでいて気持ちのいい、おもしろい文章だと思いました。ルビな振り方が斬新で驚きました。

    作者からの返信

    刈田狼藉さん
    コメントありがとうございます!

    主人公は難しい漢字がわからないのでひらがなになってしまうのですが、ひらがなだと伝わりにくいので感じでルビを振ってみました。意識したところに気付いて頂けて嬉しく思います。

  • 例える描写がすごい適格でわかりやすいですね。
    学生にはきついこの金銭感覚、懐かしく感じました

    作者からの返信

    きつねのなにかさん
    コメントありがとうございます!

    比喩を褒めてくださり嬉しく思います。
    そうなんですよねえ。本一冊買うのにめちゃくちゃ悩むんですよ。そのときのことを思い出しながら書きました。