2人目
ーこれは、他人の作品をパクって作られています。ー
「どういう事ですか」
「いや、どうもこうも。なんの話をしてるんだ? 更科」
更科 千種(さらしな ちぐさ)。男、職業、刑事。
半日前に発生した事件の捜査班に入れられたばかりだ。
だが、半日経過して、遅めの昼から戻れば事件のことがきれいさっぱり、いや、忽然とが正しいか。
姿を眩ませた。
事件の概要は、人身事故。軽トラが登校中の男子学生に突っ込んだのだ。
それだけならよかった。だが、血の跡はあるのに、人を撥ねた痕跡もあるのに、運転手もハンドルを誤って切ってしまったとその場で110番をしたというのに。
撥ねられた男子学生の姿は、搬送された病院から消えた。
既に死亡している、と報道関係が昼頃のテレビで報じていた。矢先だった。
それだけじゃなかった。テレビをみた2時間後以降、その報道もされなくなった。
事件は起こっていなかった。そういう世界に塗り替えられていた。
おかしい。
すぐ、休みが溜まっていたので1週間分をとり、周りにも休むことに関して頭を下げて回ってから事件について個人的に調べることにした。頭を下げて回る最中に事件について聞けば皆揃って、知らない、要約すればそういう返答。嘘をついているようには思えない口振りだった。知らなくていい、もういいんだ、といった言葉は出てこなかった。
つまり要人からの圧力ではない、という事だ。とまずは身の回りの問題は頭の隅に置いた。
俺は次に撥ねられた男子学生、高校2年生、羽田 秀弥(はだ しゅうや)を調べることにした。当人が姿を消したなら家族は戸惑うはずだ。死んだ事もショックだろうが遺体まで消えてしまえば何かしら動きがある、と。考えた。
まずは事故現場に出向いた。花が手向けてあるだろう。きっと、誰かが。不吉なことが無いように魂が残りやすい現場に手を合わせるのも、俺自身の考える礼儀だと思って。
「・・・。」
「・・・」
当人らしき、薄れている何かが事故現場でぼうっとしていた。
通り過ぎる行き交う自転車や数少ない通行人は気が付かないまま彼をすり抜けていく。彼の姿は、学生服ではなかった。
コスプレよりも出来のいい冒険者の様な身なり。背にはシンプルな鞘に収められたやはり造りはシンプルだが安物とは言い難い重そうな柄が肩越しに見えた。
これでも姉がコスプレをしている。その手伝いをさせられていたら、質はなんとなくだがわかる。
本物を身につけている。しかも使い込まれている。そういう施しを行っているわけではない傷汚れが服には見受けられた。
「居るじゃないか」
事故現場に花は一切、置かれていなかった。軽トラが最終的に突っ込んだ電柱も綺麗なものだった。たった半日、1日で対応する程、この地域は都会ではない。
自分の口から出た言葉は、間抜けな声でぽとりと足元に落ちた。
結論からすれば、居た。すぐに被害者は見つかった。
しかしこれは、目の前の結論は「常識から外れている」。
近づけば彼は此方を見た。まずぼんやりと、しばらく見つめはっきりとした視線に変わった。彼は、彼の魂は生きている。直感した。
「・・・、現実がどうなってるかと思って。見に来たんです」
「世間は君を忘れたよ」
「事故の場所がまっさらなんだから、その程度の事はすぐに分かりましたよ」
何言ってるんです、というあからさまに初対面の俺に向けていいとは思えない侮蔑の表情をした。刺激的な回答を、彼は求めたのか。と察した。
「現実的じゃないな」
「捜査前に事故現場に花を手向けに来る警察も珍しいですよ」
その言葉で、相手に理性があるのが確認できた。そして俺が警察関係者とわかるあたり、これは現実だ。ファンタジーでしかないのに、嫌なくらいに現実的だ。
非現実的な事しか起きていないのに。
スマホを取り出し、壁にもたれた。何も無い空虚に話している、という絵面の筈だ。刑事が警察のお世話になるのはシャレにならない。
その行動を見た彼は鼻で笑った。考えましたね、と口にした。
「そちらの世界はどうだ、秀弥くん」
「ちょっと、舐めてましたね。」
本来在るべきだった世界での存在を捨て、異界の地に降りた彼の、少しばかり自業自得な話が始まった。
30分で彼は消え、俺は彼の自宅まで向かった。
目の前で、家は燃えていた。学生服を着た男性が玄関の前で笑っていた。
「僕も秀弥みたいに異世界に行くんだ」
双子の弟。秀弥くんの話の最初に出てきた言葉。
それは、一卵性双生児の弟の身を案じるものだった。
「秀弥がいなくなったら僕を知らないなんて。こんな世界、おかしいんだ」
(「無責任だとは思うけど」)
「なら、俺のとこに来るか。誠弥くん」
放火犯に向けて俺は声を掛けた。まずは、確保、身元引受けは、後からすればいい。
この物語は他人の作品をパクって作られています。 崎岸ささき @sakashita008
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