殺意

かしまからこ

第1話

やあ。

君にも僕の声が聞こえるんだね。

うれしいなあ。

驚いてるね。

まあ、無理もないよ。

僕の姿は目に見えないからね。

直接君の脳に話しかけてるんだ。


って、ちょっと、パニックにならないでよ。

落ち着いて。

よしよし、そうだよ、良い感じ。


僕が誰かって?

誰っていうより、何、の方が正しいんだけど。


殺意。


君さ、殺したい奴いるでしょ。

じゃなきゃ僕の声聞こえないもん。

ほら、またパニックになりかけてるのが図星だって言ってるようなもんだって。


まあ、戸惑うよね。

はい、よし、落ち着こう。


あのね、僕の声が聞こえてる時点で、実は君はけっこうやばい状態にあるんだよ。

殺したくて殺したくてしょうがない奴が一人いるでしょ。

本当は今すぐ殺してやりたい、でもだめだっていう葛藤の真っ最中だよね。


ちがう?

殺すわけない?


何ばかなこと言ってるの。

僕の声が聞こえるってことは、君はもうそいつを殺すって決めたってことなんだよ。


いや、ほんとに。

何、まだ疑ってるんだ。


じゃあさ、今から絶対に捕まらずに人を殺す方法を教えてあげるよ。

って言ったら、聞きたいでしょ?

あはは、やっぱり食い付いてきた。

…え、念のため?

何それ。

しょうがないな。

君は信じられないだろうから、断言してあげる。


君は今から僕が教える方法で殺すよ、人を。


何回も言ってるじゃん、僕の声が聞こえてる時点でそれはもう決まってるって。


やっと信じてくれる気になったの?

おっそいなあ、もう。

まあ、いいや。

じゃあ、とっておきの方法を教えてあげる。


あ、ちょっと待って。

君の他にも僕の声を聞いてる人がいるみたい。



        ああ。


        君か。


さっきからずっと僕たちの会話聞いてたでしょ。


        へえ。


    君にも聞こえてるんだ。


      うれしいな。







   君が殺したい人は誰なの?




おわり

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殺意 かしまからこ @karako

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