牧歌的な穏やかな生活がおとぎ話のように語られる冒頭はその地域の空気が香ってくるようでした。それが後半へ向けて急転していく様相に「何かが壊れる」ことをより明確にしてくれたと思います。
島で一番年若い少年が「伝える者」に就いたことで内側から外側へ意味が働き出す構造が良かった。
私はこの物語に映画『トゥルーマン・ショー』を思い浮かべました。世界には重大な真実があり、そこからの旅立ちがある。その映画とは違ってキィルの場合はまだ真実は受け入れ難いでしょう。少年ひとりが背負うにはあまりに重い。けれど君の尊敬する灯台守の彼女は頑張ったんだぜ。君もきっと大丈夫さ。自らの意志を示した「伝える者」の君ならね、お節介な私はそう言ってあげたい。