この最高の両想いに祝福を!
灼凪
サトウ家冬の修羅場祭
毎日同じ日常のルーティーンじゃつまらない。そう思うなら、誕生日も一緒だ。
琥珀色の夕焼けを眺めながら、俺はいつもの喫茶店に行こうと家を出た。途中、庭に積もった雪でちょむすけだるまを作っていためぐみんに白い目で見られたが、明日は変に気を起こさせないために行くのだ。悪魔でもそのつもりだ。
俺も明日が楽しみだ、めぐみんも同じ気持ちでわくわくしている頃だろうと思った。
洗濯物がすぐ乾きそうな乾燥した冬の寒さを感じる。俺はしばらく寝ているとーーー。
誰かが俺の部屋にきて身体を揺さぶられてる感覚があった。
「ーズマ!カズマ起きてくださいっ!はーやーくー!」
意識が覚醒する中、めぐみんが俺の身体を激しく揺さぶっているのがわかる。
明朝宿を抜け出して朝から惰眠を貪ろうと思っていたのに、と不機嫌な顔をしながらも俺は上体を起こす。
「んあーーー。朝早くからなんだよめぐみん。あ、おはようのキスはいるか?」
「!?いいいいいい今はいりませんってば!!何寝ぼけてるんですか!!それより、き今日は、何の日だか知っていますか?」
ベッドの横に背中を向けてちょこんと座るめぐみんが言った。
「何の日って、お前の誕生日だろ。去年祝ったじゃないか」
12月4日を迎えた。だからこの日は朝からパーティーの準備をすると決めていたのだが。
「そういえばそうでしたね!今日は我が誕生日のパーティーの準備をするんでした!その前に、カズマ…」
一泊置いて、めぐみんはもじもじそわそわしてから言った。
「で、でーとに行きたいと思います////」
「あぁ、デートじゃなくて爆裂散歩だろ!?」
だから俺をまだ日も高い時に起こしたのか。まるで俺はめぐみんの事はなんでも分かってるんだぜ!という顔が気に入らないみたいな風貌でめぐみんはぷすっと膨れた。
アクアはまだ起きてこない。めぐみん曰く“今日の誕生日会が楽しみすぎて夜寝れなかったんじゃないかと思うのですよ。私より先に誕生日を楽しみにしてるとかアクアらしいですよね”と言って微笑んでいた。
ダクネスはと言うと、
「おはよう!カズマ!めぐみん!私はこれからめぐみんの誕生日パーティーの買い出しに行ってくる!」
俺たちより一足先に起きていたダクネスは簡単な朝ご飯を食べた後、はりきってこんなことを言って玄関から出ていった。
「おはようダクネス!俺達も後少ししたら出かけるよ!」
「アクアはまだ起きてこないのか?今日は朝から一緒に徹底的に買い出しに行こうと昨日言っていたのだが…。仕方ない。先に出るか!」
と最後に言い残し、顔だけを出していた玄関が閉まり出かけていった。
朝食を食べ終わったら、めぐみんがそわそわ目を輝かせながら杖を握りしめて玄関に立っていた。
「カズマ、私達もそろそろ行きましょうか」
いつものGトードが出そうな草原だが。壮大に広がる草原に、めぐみんはその先の小高い丘を見つけたようだ。
「それでは、いきますよ!エクスプロージョンーーーー!!」
そう、例えるとペットボトルロケットを発射するような勢いで、草原の先を超えた丘に爆裂魔法が当たる。結構な距離なのに、こっちまで肌をピリピリさせながら爆発音と爆震音が響いてくる。
「かは」
「ん〜〜〜、ギリギリの射程距離で撃った感じだな。でもそれとは反して、かなりのいい爆発と爆炎だったぞ!92点!!」
「ありがどうございまふ!」
「けど、でかい打ち上げ花火が地面で誤って爆発したみたいな、そんな感じもしたけど」
地面とキスしているめぐみんを、俺はいつものように魔力の受け渡しをしようと首筋に手を伸ばすと、
「カズマカズマ」
俺の名前を連呼してくる。しゃがみ込み耳をめぐみんの顔の方に傾けると。
「なんだいめぐみん?」
「私を仰向けにしてください。雪が冷たいのです////」
そう言うからめぐみんを仰向けにしてやると、機嫌良いのか悪いのか分からない顔のままだが照れた表情もうつ伏せの状態よりよく見えた。するとめぐみんは突然に、気怠い左手で俺の鎖骨を触ってきた!
「ひゃ!?!?」
「さ、先程、一言多かった罰ですよ…?き、今日は、その…ここに…手を当てて…、してくださぃ…」
言われた通り俺は無言のまま無意識の内にめぐみんの鎖骨に手を忍ばせた。アクセルの街近くでも寒いからか周りに人がいないし大丈夫だろう。
紅魔族なだけあって、めぐみんの鎖骨は温かいと思…っじゃなくて!魔力供給をしている間平常心を保ちつつも、「温い」と菩薩のような顔で言われ続けながら身を捩るめぐみんはエロくて大変だった!何がとは言わないが!おい俺の賢者タイムはどこ行った!
因みにGトードは今回の一発の爆裂魔法程度じゃ起きなかったからセーフだった。
爆裂散歩から帰ってきたら丁度お昼近くになっていた。
アクアは既に起きていて先に帰っていたダクネスは部屋の飾りつけをしている。
さっきはあんな事があった後だが、ちくしょう、絶対めぐみんにサプライズなことしてやるっ!
「ただいま帰りましたよー。おそようですアクア」
「おそようめぐみん!」
俺達はアクアに軽く挨拶をかわすと、忙しそうなダクネスをみて考えたのかめぐみんが台所に昼食を作りにいった。
「おいアクア。こんなものを買ってきたんだけど」
俺は暖炉の前でポインセチアで出来た何かの飾りものを作っているアクアの隣に座って話しかける。
「ビンゴゲーム?カズマさん今日はビンゴ大会をしようって言うのね!なかなか」
「しっ!声が大きいぞ!これはめぐみんには始める前まで内緒にしといてほしいんだ。でないとサプライズじゃなくなっちまう。後で高級なぶどう酒買ってきてもいいからさ」
アクアの大声のする口を手で抑えて言った。俺はすぐに手を離す。
「めぐみんにサプラーイズ!プレゼントってことね!分かったわ!それとありがとうカズマさん!」
こいつが物分かりの良いペットで良かったよ。いやペット?
昼食を食べた後、めぐみんとダクネスが誕生日ケーキとクッキーを作ると言うから、台所とみんなが食事をするテーブルで何かお店を広げ始めた。
俺はテーブルに置いてあるボールの中の何かの素をひょいと利き手の人差し指でつまみあげ、口に運んだ。
「おい、俺も料理作らなきゃいけないんだよ。だから程々にしとけよー」
「あ!つまみ食いしてる人にはあげませんから!」
めぐみんが怒ってケーキの方のボールの中を泡立て器でかき回していた。
時刻は大体夕方にさしかかった頃。
俺が忙しなく料理を作っていると、パーティーに誘った、第1番目の訪問者が現れた。家に訪れたのはゆんゆんだった。
「ごめんくださーい!めぐみんの誕生日に誘われてきましたー」
「なんでこんなに早くくるんですかゆんゆん。パーティーはまだカズマの料理ができていないので始まっちゃいないですよ!」
めぐみんが玄関のドアを開けてゆんゆんと何やら話している。
「パーティーは夕方からの、いつでも来てOK!って招待状に書いてあったから早くきただけだもん!!友達の誕生日会に早くきて何が悪いっていうのよ!?」
めぐみんは怪訝そうな顔をして、半分程書いた招待状の文面がアクアの字だったことを思い出す。そこに原因のアクアがきて、
「こんばんはゆんゆん!まぁまぁめぐみん、こうしてみんなと早くから集まれるんだもの。普段の時間よりちょっと長く一緒に共有したい楽しみたいと思って書いたのよ。家の庭の門の看板にもうぇるかむかもーん!って」
「やったのはアクアですか!ちょっと大げさに恥ずかしい事しないでください!!いつもいつも二人はカズマのことを振り回して!振り回すのは私だけで十分です!門の看板を回収してきます!」
二人の因果応報?のせいで怒り心頭のめぐみんは、玄関の扉を開けて門の横にある看板を取りに行った。
「アクア、今日はめぐみんが主役なんだから、めぐみんをあんまり怒らせちゃダメだぞ?」
ダクネスにおいたしちゃダメ、と𠮟咤されたアクアは申し訳ないと思いながら、ゆんゆんをテーブルの好きな席に座るよう促した。
すっかり日も暮れて冬の夜の帳が下り、めぐみんの誕生日パーティーは始まる。招待状を送ったゆんゆんの他に、アイリス、ダストらが集まった。ダスティネスの実家が今夜は留守だということもありシルフィーナも連れてきている。
マイクを持つめぐみんが、
「ほ、本日は雪が降る中お集まりいただき、本当にありがとうございます!」
頬をほんのり赤くそめて、緊張して声が上ずっている。待て、午前中爆裂散歩に行った時に快晴だっただろ。
「めぐみーん!17歳の誕生日おめでとうー!」「おめでとー!」
「感謝を込めて、歌わせていただきます!!」
緊張感を歌で誤魔化そうとするめぐみんは、額に脂汗を浮かべて歌っていた。
その後はアイリス、ダスト、シルフィーナ、ゆんゆんからプレゼントを受け取っていた。
ダストからは「これを持つのは女の子として当然なんだぞ。大人の女性としてのエチケットなんだ」とめぐみんに言ってテーブルの下で何やらこそこそめぐみんに渡していた。
そしてゆんゆんからは、大分大太刀回りした後、小さな箱をめぐみんに渡していた。
「お、めぐみん、ゆんゆんからは何を貰ったか聞いていいか?」
「ミサンガというものらしいです。ゆんゆんとお揃いで…何でも体のどこかに付けておくお守りらしいのですが、付け方が分からないのでカズマ、後で教えてくださいね」
「お、おう」
純粋に聞いておいて空返事だけしたが、これを今から部屋に行ってめぐみんの体のどっかにつけるんだと思うと、顔がこわば…っじゃなくて!ゆんゆんもニホンにあるミサンガっていう知識とジンクスは知ってたんだな!と感心した。まぁ先人の日本人がこれを売ってたんだと思うけど。
するとよくめぐみんが俺のことを観察するように、ジロジロと見ていた。次第にアイリスも俺の方に視線が向けられる。
「なんですか?これ?」
そしてすぐにそれは見つかってしまう。ポッケの中に無造作に入れていたビンゴ大会のゲームの紙をひょいと軽々しく盗られてしまった。
「びんごげーむ?」
「め、めめぐみん!あー内緒にしてたってわけじゃなくてだな、もうちょっと秘密にしておきたかったんだが」
俺は汗をかきながら言った。所謂一種のめぐみんによるサブリミナル効果がこの空間に広がってしまって、見つかってしまった、悔しい。
「カズマとアクアと私、3人でビンゴ大会のゲームをしよう!とカズマが切り出す直前まで内緒にしていたんだ。もちろんめぐみんを楽しませるためにだな」
と、アクアがシルフィーナの相手をしているかわりにダクネスがフォローに入った。
めぐみんは手が震えていた。目頭も熱くなっているようだが、グローブで見えないが、ほんのりと手まで赤くなっているのは気のせいか。
「ありがとうございます!カズマ!」
俺に熱視線が浴びせられる。ダストとゆんゆんが何やらニヤニヤしながら俺とめぐみんを見ていた。ジト目のアイリスの視線が痛いです。
ほっこりとした雰囲気はすっかり消え、高揚感溢れるめぐみんがキラキラいきいきとして
「さぁ!ビンゴゲーム大会といこうじゃないか!!」
とマイクを抱えてもう片方の手でみんなにビンゴゲームの紙束を提示して言った。
「…で、ルールを教えてください、カズマ」
って目を丸くして俺に言ってきた。ゆんゆんとアイリスはもちろんの事、めぐみんもまだビンゴっていうゲームを知らなかったんだな。アクアだけは知っているようだが、他のみんなには馴染みがないゲームのルールを俺は事細かに説明する。
「1位になった人には、私が決めて良いんですよね?優勝者には…この私をギュッとハグする権利を与えましょうっ!」
え?それでめぐみん良いのか?めぐみんは飾り目になって少し恥かしがりつつ宣言した。てか俺が勝ったら完全なる出来レになるんだがいいのだろうか。
「番号はくじ引き屋のバイト先のおじさんに借りてきたこのガラガラガチャで引いてもらいまーす!フェアになるように1人1人順番ずつね!」
アクアがそう言ってめぐみんのテーブルの前にガラガラをドン!と置いた。
こうして、俺は戸惑いを見せながらビンゴ大会は始まった。
紙には1〜80までの数字しか書いてないからその中の数字を玉に書いてアクアは仕舞っていた。てかいつの間にそんなことしてたのかよ。用意周到すぎだろ。
紙に14種類書かれた数字を、めぐみん、俺、アイリス、ダクネス、アクア、ダスト、ゆんゆんの順に引いて当てていく。
シルフィーナはみんなの灼熱したビンゴゲームを見守り中だ。
1周目は適当に当てていったが、2周している時に俺はめぐみんに何かを企んだアイディアが浮かんだ。
「61です!」
めぐみんが番号を言うと、俺の出番が周ってきた。
「ここはひとつめぐみんのスリーサイズをば!」
俺はゲームの進行を早めるために、そして悪魔で昼間受けた辱めを晴らすために、ライオンの子を谷底から突き落とす親のようにめぐみんをからかって、3つの数字を適当に当てるように煽ってやった。
「なぁぁぁぁぁぁあああああー!なななな何を言ってるんですかこの大関スケコマシはぁー!?」
ドスの効いためぐみんの怒号がリビング中に響き渡って、酔っている俺が一番驚く。少しずつさっきから酒を飲んでいるし、俺はちょっと酔っ払っているのかもしれない。
めぐみんは体全体に火がついてしまい、顔も赤く染めて爆裂魔法の詠唱を始める。
めぐみんの3サイズ…確か、B68、W51…お尻は79くらいだったか?
地の文で俺は当てていくが、ダストは何やらぶつぶつ口に出している。
「ねぇダクネス、さっき私に怒らせないでって言ったのに、クズマさん早速めぐみんのこと怒らせちゃってるわよ!人のこと言えないんじゃないの?(プークスクス」
「ね、ねぇカズマさん、どうしてめぐみんの3サイズまで知ってるの?」
ゆんゆんは懸念した声で聞いてくる。
アクアからはシルフィーナの両耳を手で抑え、他の女性陣からも白い目で見られていた。
俺は渋々、
「それはあれだよ!ずっと前にメイド服やアイドル衣装を採寸した時にメモした紙が出てきたからたまたま頭に入れておいただけだよ!」
と答えた。今日はもう爆裂魔法が撃てないと詠唱を中断した憤死しそうなめぐみんは俯いて手がぷるぷると震えていた。
「そうだったんですね…!あ!まさかウィズとか他の女性のサイズまで把握しているんじゃないでしょうね!?」
焦る俺は言葉に詰まる。
「な、ないよ。それはない!あ、ごめん。めぐみん…俺の勝ちだった」
腫れ物を触るかのように、慎重に口を開いて言った。
運のせいなのか、めぐみんのことを1番よく知っているせいなのか、俺が1番のりに上がった。
すると、小気味よく玄関のベルが鳴る。
ゆんゆんがパタパタと玄関の方へ出ていくと、
「やぁ!こんばんはみんな!めぐみんの誕生日会はまだやってるみたいだね」
現れたのはクリスだった。
「こここんばんは!クリスさん!」
ダクネスからこのことを聞いて、なる早にダンジョン採掘クエストを終わらせてきたらしい。クリスは「ちょっと遅くなっちゃったけど、まだ終わっていなくて良かった」とホッと胸をなでおろして、めぐみんに誕生日プレゼントを渡していた。巾着の中身は高純度マナタイトだった。
「ところでさっきまでは何をしていたのかな?」
「ビンゴゲーム大会をしていたんです!」
クリスの質問にゆんゆんが先程していた遊びを言った。
「クリスも参加したかったのかしら?でも残念ねー。カズマさんの1人勝ちだったのよ!」
アクアが酒の匂いを漂わせて言う。悪かったな、俺の1人勝ちで。
「でもその代わり!さっきビンゴで勝ったカズマさんと、飛び入りで参加するクリスにはこれで勝負してもらうわよ!」
するとアクアがどこから出してきたのか、黒ひげ危機一髪なるものがアクアの座るテーブルの上にドンと置かれた。
中央に魔王の娘らしき人物がバニーガールの姿の格好をして鎮座している。ウィズ魔道具店の特注品だろうか。
確かにこれなら平等だが。
「よし!クリス!かかってこいや!」
「それじゃあ、勝負といこうじゃないかカズマ君!」
先行後攻はじゃんけんで決めた。
ここまで白熱した黒ひげ危機一髪は見たことない。多分ない。
めぐみんの応援の声と共に、ギャラリーの声援も飛ぶ。
「しゃーーーー!!」
俺の次にクリスが2発目を刺したところで、魔王軍の娘のバニーガールコスプレは飛んだ。
「そんなあぁぁ…ま、カズマ君の幸運値が高いのは致し方ないよね…」
クリスは、床に手をついて項垂れていた。
やがて。
「改めて17歳の誕生日おめでとうめぐみん!さぁ今度こそシュワシュワで勝負よ!」
「望むところですよ!…カズマ!今日くらいはいいですよね?」
ゆんゆんがシュワシュワを両手で持った状態でめぐみんに詰め寄ると、後ろにいた俺にくるっと顔だけ振り返り「前回も飲んでますし…」と付け足して言ってきた。
「あんまり飲みすぎないようにな、めぐみん」
そんな俺とめぐみんのやり取りを見て、ダクネスが懸念して言ったが、当のめぐみんはどこ吹く風といった様子だ。
アイリスとシルフィーナはジュースで、それ以外の人達はお酒を呑んだり、俺が作った料理を食べたりとどんちゃん騒ぎになっていた。
酔っ払ったアクアは後の祭りのようだが、宴会芸の神様化としている。
そして、俺は今、めぐみんは向かい合って食事をしていたが、俺の隣に座って首に右手を回して肩を抱いた状態でいた。向かいの席にはダストとゆんゆんが座っているっていうのに。
「かじゅまぁーーーー、あ〜んしてくらはい〜〜〜!」
「待て待て待て!この後俺にぎゅってするんだろ?食べさせるって言う権利はなしな!」
抱きつかれた俺が食べようとしていたケーキを見てあーんを要求するめぐみんは顔を急に近づけてきて俺の頬を自分の頬っぺですりすりしている。すっかり出来上がっていた。
「むぅ。いいですよ。私にも考えがありますから」
わざとらしく頬をハムスターの頬袋のように膨らませためぐみんは、ほんのちょっと可愛いと思ってしまう。
次は何をするかと思いきや、あざとく俺の耳に口をあててきた!
「後かじゅまぁ、3サイズ間違ってますよぅ。本当はごにょ…ですよ」
1杯目はちびちびと呑んでいたが2杯目で顔を真っ赤にしてでろでろなめぐみんは、素直に間違っていたであろう胸のサイズを俺に教えてきた。耳元で囁かれてドキドキしたっていうか!俺はこの華奢なめぐみんの身体のサイズを教えてもらったけどいいのだろうか。俺だけが知ってていいのだろうか。
酔っ払っためぐみんはいつも以上に見境いなくグイグイきて俺にベタベタし始めるので、本当に困ったもんだ。
「私、眠い」
シルフィーナがぽつりと言うと、時計をみたら後3時間くらいでてっぺんを回る時間だった。
「あ!すいません、そろそろクレアたちに怒られてしまう時間なので、私はこの辺でおいとましますね!帰らないとテレポートで送還されてしまいそうなので…!お兄ちゃん、今日は楽しかったです。それと師匠!今日は師匠のお誕生日会を祝えて超楽しかったです!また、盗賊に勤しみましょうね」
「それじゃあアイリスちゃん!私がテレポートで王都まで送ってあげるわよ!」
いい感じに空気を読んだゆんゆんはアイリスをテレポートで送ってくれるらしい。それとアイリス、恐らく今のめぐみんには聞こえてない。
こうして段々と口々に解散していった。
ダクネスはここに一晩またシルフィーナを泊まらせるといった様子で、自分の部屋に連れていった。
祭りの後の静けさが訪れた。
俺は泥酔してよんどころないめぐみんをお嬢様だっこの形でめぐみんの部屋に連れていき、ベッドに腰を下ろさせた。途端にすぐ横になり寝息をたて始める。
部屋を出てリビングでパーティーの後始末をしながら、コップに水を注いでめぐみんに持ってきてやった。
スヤスヤと寝ているめぐみんを背中を持ち上げて起こさせる。
「めぐみん、水を持ってきたぞ!まあ飲め飲め」
めぐみんはすぐに水を飲むと、小1時間ででろでろでだらしなかった顔から普段の顔に復活した。うつろな目も色を取り戻したようだ。
「私はどれくらい酔っていたのでしょうか?カズマは、私を介抱してくれたのですね。ありがとうございます!」
「よんどころないくらい酔っ払ってたぞ。もう可愛げの一欠片もないめぐみんに俺はひとたまりもなかった」
「そ、そうですか。また見っともないところを見せてしまってごめんなさい。…は!ここは私の部屋ですか?カズマの部屋で私を介抱しても良かったのではないですかね。お、おお風呂入ってきます!!」
寝起きでまだ寝ぼけたことを言ってるのかと半分思いつつ、少し上ずった声色で何かを期待しているのが分かった。そわそわしてから部屋を後にお風呂に入りに行った。
めぐみんの後に俺も風呂に入って部屋でまったりしていた。
俺とめぐみんの前にダクネスとシルフィーナも早々に風呂に入って寝てしまった。
アクアは泥酔して自室で寝てしまっている。
「カズマ、あの今いますか?」
「いないよー。けど鍵は空いてるから合図はするからいつでも入ってきてくれ」
「どっちなんですか!?!?合図ってまだ決められてないじゃないですか!全く、はぐらかさないでくださいよ!今日は用事があってカズマの部屋にきたんですから」
こんな時に、めぐみんは部屋のドアを蹴破ってベッドで微睡んでいる俺のところに現れた。
「さっきゆんゆんから貰ったコレ、付けてください」
言うと後ろ手からさしだされたものは半透明な箱に入ったミサンガだった。
「俺にナニを付けさせようとするんだって思ったらこれか。分かったからこっち来い!」
そう言ってめぐみんにベッドに座るよう促す。趣旨がないと話的にやばめになるが、誘ってるわけじゃありません。
「めぐみんはどこに付けてほしいんだ?」
俺は言いながら体を起こすと、あぐらになる。
「…ゆんゆんは、右足につけると言っていました。なので私は、左の足首が無難でしょうか?」
「なるほど左足首な!じゃ靴下脱いで」
めぐみんは恥かしがりつつもしおらしい仕草で左足の靴下を脱いだ。めぐみんの生足がパジャマの袖からちょこんと覗かせる。靴下も捨てがたいが、俺はそこまで変態じゃない!って何考えてるんだ。
「うう…こういう時は手際がいいんですから」
「もうちょっと袖を捲らないと付けられん!」
袖をとると俺はめぐみんの左足首まで袖をスッと上げた。
「よーし!よろしいじゃないかめぐみん!」
ミサンガを付け終えためぐみんはそそっかしいながらも靴下を履いた。ただ足首にミサンガを付けるだけなのに俺の顔も赤く熱ってくるのは何故だろう。
そういえば、ミサンガって願いが叶うと切れるんだっけか?めぐみんはこのジンクスを知っているんだろうか。さっきの口ぶりからしてゆんゆんと話し終えて知った風な感じだが、もし知らなかったら俺が後で教えてやろう。ゆんゆんの願いはぼっちから抜け出せますようにとか、そんなことだろう。めぐみんの願いは…、もう既に叶っていて切れてもおかしくないことだろうと思う。人のことを詮索するのはあまり良くないけど。
めぐみんはベッドの縁に座って何かを言おうとした。
「カズマ、今日は…」
「待った!めぐみん、今日はまだプレゼントを用意してある!俺だけにはまだ貰ってないはずだったろ?」
俺自身、正直前置きが長いことは自覚している。でも勿体ぶらないとめぐみんがあまり驚かなくなってしまう。
「え?先程の、ビンゴ大会を開いてくれたのがカズマからのプレゼントだって…」
「俺からはコレだ!!」
俺はベッドから降りてめぐみんの前にくると、思い切って指輪の箱を目の前に片手でつきだして、勇気を出してみた。
「!!カッカカカカズマ!…これはもしかしてももしかしなくてももしかしてというものなんですか!?そういうことと受け取っていいのでしょうか?////」
めぐみんは耳まで顔を火照らせて、マルボーロのようなつぶらな赤い瞳をして驚いていた。そう、まるで俺とクリスの銀髪盗賊団に初めてあった時のような顔である。
「かっ勘違いするな!よく見てみろ、指輪はたった一つ、めぐみんだけのものだぞ!」
「もう!何々ですかっ!少し期待して損しましたよ!でも、これが私だけのもの…!ほぅ、魔力で輪のサイズが伸縮する指輪ですよね!?」
少し期待外れだったようだが、これはこれで嬉しいのかと悶々とした後、恍惚とした表情で箱を開けて指輪を舐めるように見ていた。
かなり緊張していた俺はホッと胸を撫で下ろすと、
「あぁそうだよ!真ん中にマナタイトの欠片も埋めこまれてるんだ。それ結構したんだぞ」
ポロッと語るに落ちるようなことを言ってしまった。
だってこの雰囲気と緊張感に耐えられなかったんだもん!
俺は耳まで顔をヒートアップしたことがバレないように顔を下に向けると、めぐみんは俯いていた。やべえ、癪に触ったか!?
めぐみんから逃れるようにふと、手すりのある奥の窓をみると、いつに間にか雪が降っていた。夜は結構冷え込むからか、てっぺんを超える前から降っていたようだ。
「雪、止まないな…」
話の継ぎ穂を作るように、俺がポツリと言った。
「カズマが私だけに内緒にしてたなんてこそばゆいですよ。むぅっ」
めぐみんがスクッと立ち上がり、口を栗のようにしてムズムズしてたかと思いきや、すぐに慈愛に満ちたなんとも言えない温かみの含んだ笑顔で、両手を広げ抱きしめてきた。向かいあう俺は流されるままにめぐみんに身を預けた。
「…なんで俺が肌寒いなって思ったことが分かったんだよ?」
「抱きしめてください、というオーラを感じたから抱きしめてるだけです。カズマ、今日はビンゴ大会本当に楽しかったです!私のために尽くしてくれて、プレゼントもありがとうございます!おかげで一生忘れられない宝物のような誕生日会になりそうです」
俺もお前の3サイズ知っちゃったせいで一生忘れられない日になりそうだけどな。ってなんかめっちゃ力強く抱きしめられてる気がする。
「いでででっ!」
「…む。本当は昨日カズマがいなくて寂しかったんですよ。帰ってきたと思ったらまた夜出かけて行きましたし。なので、昨日我慢した分と、先程のお礼の分です!あんなに盛り上がった誕生日は初めてだったので!あ、さっきあーんしてくれなかった罰も含めますね!後、パーティーの後始末もありがとうございます!」
つくづく、甘え上手になったなぁと思う。お前、酔っ払ってたこと朧げに覚えてんのかよ!ていうか何かさっきから込み上げてくるところに柔らかいモノも押し付けられてくると同時に、めしめしいってるんだけど。凄い馬力なんだけど。
「いだだだ!おまっ!急に全力で抱きしめてくるんじゃねぇ!も、もふられると砕けるっ!」
「カズマが言ってるモフるってどういう事ですか?」
「お前のはモフられるってどころじゃねぇ!!」
まぁ、深甚に浮かれるのも無理もない。小心者の俺にはめぐみんってば本当敵わないよな、と思う。
結局いつもの体勢だけど、添寝という特大なお返しまでいただいてしまった。今はめぐみんが俺の胸に顔を埋めて、抱き枕を抱くような形でめぐみんの背中に腕を回している。
「それにしても、髪結構伸びたよなー」
「ふふ、そうですか?ありがとうございます。それとさっき思いついたんですけど、1位の賞品は1年間私をもふもふする権利、というのはどうでしょう?」
「え?…まさか指輪のことも、気付いてたのかよ?」
「いいえ、正直指輪は気付きませんでした。気の抜けた時にしてやられたとびっくりしましたよ。と、特別に1年間…いらないですか?」
俺はめぐみんが顔を胸に埋めていて見えないことを良いことに、首をぶんぶん横に振った。雰囲気に浮かされているだけなんだ、と思い込みたい。
地球破壊爆弾級の言葉を言ってくれたから眠れなくなっちゃったじゃないか。休む暇が今夜もなさそうだ。俺からめぐみんは抱き締めて欲しいんだろうけど、そんなこと俺に出来るはずない!と思ってたら寝落ちてた。
何はともあれ、俺はめぐみんを楽しませることができたんだろうか。サプライズなめぐみんの期待に答えられたんだろうか。安心して俺の中で眠る彼女がそう暗示させた。左手の中指には指輪が光っていた。
魔王討伐を終えて、一躍英雄になった俺たちは束の間、魔王討伐前と変わらずてんやわんやの毎日を送っていた。
別に、気持ちの整理がついたら次は婚約指輪を渡そう。
そろそろ深謀遠慮も考えないとな、と思った。
しんしんと雪が降り積もる度、気持ちが重なる。
お前が教えてくれた、この素晴らしい傷跡のなぞり方を。
この最高の両想いに祝福を! 灼凪 @hitujiusagi
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
この素晴らしいぴょんぴょんの日に祝福を!/灼凪
★3 二次創作:この素晴らしい世… 完結済 1話
この欲深い論理の旋律に真実を!/灼凪
★0 二次創作:この素晴らしい世… 完結済 4話
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます