非常に〝上手い〟作品です。
ツンデレ風味のお嬢様ヒロイン、Sランク陰陽師の銀髪妹、陽だまりの日常を象徴する気のいい同級生たち。
少し達観したところのある主人公には乗り越えきれない過去があり、胸の奥にそこはかとない闇を秘めている。
往年のライトノベルの王道をこれでもかと抑えたストーリー構成と人物配置。違和感なく差し込まれるラッキースケベ。ラノベの教本のような隙のない展開には見事というほかありません。このまま書店に並んでいても違和感がないくらいです。
物語に一貫して通低音のように流れる〝絶対に超えられない壁に若者が立ち向かう〟という図式は、クライマックスまできちんと盛り上げてくれます。自分が変われば世界も少しずつ変えられるーーそんなロマンがあってもいい。
好きな人はとことん安心して最後まで読めるでしょう。