青龍の力
「「「――
――ドン! と、また衝突を知らせる鈍い重低音が轟き、青龍は長い胴体をくの字に折り曲げて、腹を
悲痛に固く目を閉じて耐える青龍。しかし、
『……
カッ! と目を見開き、威勢を示すと、とぐろを巻いてその円の真下に青く光る法陣を展開させた。
青龍の
これは敵戦力の
『――〈
法陣から生み出されたのは、天を覆い尽くさんばかりの光の針。ひとつひとつが人差し指ほどの太さを持ち、先端は鋭く長く尖って、真っ直ぐに下を向いていた。
『堕ちるがいい』
ライフルの弾丸並みの速度で迫る
「――〈
一斉に結界を展開させる陰陽師たち。
鋭く尖った凶弾の豪雨は、次々と法力の壁に突き刺さり、針の
針の猛攻は十数秒にも渡って降り続き、戦線に参加できる陰陽師の数をあっという間に減らしてしまう。
「救護班! 負傷者の回収と治療を急いでください!」
星明は顔色も変えずに指示を飛ばす。治癒術に覚えのある術師は壁の外へと飛び出し、全身に針が突き刺さって悶え苦しむ怪我人を戦線から離脱させようとする。
『ほおぉ? 思ったよりも残ったな……』
その様子を上空から見下ろして、青龍は素直に感嘆した。
あの攻撃を受けてもなお、《平安会》の猛者たちは半分近くの数が粘りを見せており、重傷を負ってもなお、意識がある者は手足を引きずってでも青龍と対峙する姿勢を崩しはしなかった。
『ふッ、……そのしぶとさだけは褒めてやろう。しかし
彼らの蛮勇を称賛した後、青龍は座する法陣の光を青から黄金へと変化させた。
地上を照らす法陣の極光がさらに激しさを増していく。
追撃を食い止めんとした陰陽師が数名、
『――〈
それは最早、雷と言うより、周辺一帯を焼き尽くす超高出力の熱光線と表現した方が正しかった。
青龍が解き放った暴力的な破壊力は、衝撃の余波によって大地を揺らし、大気を震わせ、けたたましい爆音を轟かせて、それらは天に
今までにないほどの暴風と砂煙を受けて、静夜は堪らず目を覆い、舞桜は桜色の長い髪を手で抑える。
青龍と《平安会》の死闘を横目で見ながら、与えられた任務を全うしていた彼らも、さすがにこの尋常ならざる攻撃の気配には嫌な想像を拭い去れなかった。
「……」「……」「……」「……」「……」
京都支部の五人は互いに顔を見合わせて無言のまま頷き合う。
近くにいた妖を一蹴すると、全員は一斉に戦線を離れ、時計台の上へと駆け上った。見晴らしの良い場所から戦況を確認しようとして、逆に後悔する。そこで彼らが目にした光景は、とても現実として受け止めきれるようなものではなかった。
「……こ、これは……」
驚嘆のあまり、静夜が声を漏らす。
浮遊する青龍の真下にあったはずの京都大学の本部棟や、広大な敷地のグラウンド、東山東一条の交差点を中心とした街並みの一部が、天からの熱攻撃によって綺麗な円形のクレーターを作り、見事に消失していたのだ。
熱線の直撃を受けた陰陽師たちは更地に戻されたむき出しの地面に倒れ、夜空に君臨する青龍の影をただ茫然と見上げるのみ。ほとんどの者は防御のために力を使い果たして気絶しており、意識を保っている者も起き上がることは最早不可能のようだった。
青龍の進行を阻んでいた大規模な結界は、今の一撃のすさまじい衝撃を受けて崩落寸前となり、細かいひびが蜘蛛の巣のように走っている。術者が耐えられる許容量を超えてしまったのか、結界班の中からも数名の脱落者が出ていた。残った術者が急いで結界の修復を試みているが、法力の量がまるで足りていない。
『……さて、次はお前の番だ』
青龍が、クスノキの前に立つ
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